演習問題1
オーバーラインのタグはないので、代数的数の体をℚで表す。
(a)
Schönemann-Eisenstein判定法(定理4.2.3)により、pを素数として、
例4.3.4のf=xn+px+pは任意のn∈ℕについてℚ上既約。
ℂは定理3.2.4により代数的閉で、
f∈ℚ[x]⊂ℂ[x]からfはℂにℚ上代数的な根αをもつから、
例4.4.6のℚの定義によりαn∈ℚ。
fは単多項式なので命題4.1.5によりαnのℚ上の最小多項式である。
L=ℚ(αn)とすれば、ℚはℚとαnを含む体なので、
補題4.1.9によりLはℚ の部分体で、命題4.3.4により[L:ℚ]=deg(f)=nとなる。
(b)
[ℚ:ℚ]=m<∞と仮定する。
ℚの定義と補題4.1.3により、任意のα∈ℚに対し
あるℚ上の既約多項式g∈ℚ[x]が一意に存在して、
αのℚ上の最小多項式となり、常にdeg(g)≤mとなる。
一方、任意のn∈ℕに対し(a)のf∈ℚ[x]はℚ上既約だから、
fの根αn∈ℚについてdeg(f)=n>mとなる最小多項式fが
常に存在することになり、deg(f)≤mと矛盾。
したがって[ℚ:ℚ]=∞。
演習問題2
(a)
x2-2はℚ上既約なので、[ℚ(√2):ℚ]=2。
√5はx2-5∈ℚ(√2)[x]の根だから、補題4.1.3により、
ℚ(√2)上の√5の最小多項式の次数は高々2次である。
したがって[ℚ(√2,√5):ℚ(√2)]≤2。
同様に、[ℚ(√2,√5, ∜12):ℚ(√2,√5)]≤4, [ℚ(√2,√5, ∜12,i):ℚ(√2,√5, ∜12)]≤2,
[ℚ(√2,√5, ∜12,i,171/5):ℚ(√2,√5, ∜12,i)]≤5, [L:ℚ(√2,√5, ∜12,i,171/5)]≤11
となるので、4.3節演習問題7により、
[L:ℚ]≤2·2·4·2·5·11=1760。
(b)
拡大ℚ⊂Lは(a)により有限次拡大で、α∈Lなので、
補題4.4.2(b)によりαのℚ上の最小多項式の次数をdとしてd|1760。
したがって、d≤1760。
演習問題3
(a)
αのℚ上の最小多項式p∈ℚ[x]が整数係数なら、p∈ℤ[x]だからαは代数的整数。
逆にα∈ℂが代数的整数すなわちℤ[x]の単多項式fの根とする。
f∈ℚ[x]だから、補題4.1.3によりℚ上での最小多項式p∈ℚ[x]と、
q∈ℚ[x]が存在してf=pq, p(α)=0。すると定理A.3.2(Gaussの補題)により、
あるδ∈ℚとp,q∈ℤ[x]が存在してp=δp, q=δ-1q, f=pq, p(α)=0。
f,pは単多項式だから、δ=1なのでp=p∈ℤ[x]となる。
したがってαのℚ上の最小多項式は整数係数。
(b)
ω/2のℚ上の最小多項式はx2+x/2+1/4なので整数係数でないから、
(a)によりω/2は代数的整数でない。
演習問題4
任意のα∈Lに対し、F(α)⊂Lで、命題4.3.4によりm=[F(α):F]とすれば
(4.10)式のようにa0+a1α+...+amαm=0が成り立つような、
全てが0になることはないa0,...,amが存在するので、
αはm次多項式a0+a1x+...+amxm∈F[x]の根。
命題4.3.8(塔定理)によりn=[L:F]=[L:F(α)][F(α):F]=m[L:F(α)]だから、
m≤nである。
したがって、任意のα∈LはF[x]の0でない多項式の根。
演習問題5
α=π+e, β=π-eのどちらもℚ上代数的とすると、
命題4.4.4により(α+β)/2=π, (α-β)/2=eもℚ上代数的となるので、
Hermiteの定理、Lindemannの定理に反する。
したがって、αと βのうち少なくともひとつは超越的である。
演習問題6
F上代数的な、Fの元でないf∈F(x)が存在したと仮定すると、
定義4.1.1によりある定数でない多項式g∈F[x]が存在して、
g(f(x))=0が任意のx∈Fについて成り立つ。
f=p/q (p,q∈F[x], p,qは互いに素)、g=anxn+...+a1x+a0とすると、
0=an(p/q)n+...+a1(p/q)+a0よりanpn=-q(an--1pn-1 +...+a1pqn-2+a0qn-1)。
したがってqはpnを割る。系A.5.7によりF[x]はUFDだから、
qをF[x]の素元である既約多項式の積として一意に因数分解できる。
するとqの素因数の各々がpnを割るから、すべてのqの素因数はpを割る。
これはqがpを割ることを意味するので、p,qが互いに素であるためには、
qはF[x]の単数、すなわちq∈Fでなければならないので、f∈F[x]。
f∈F[x]に対しg(f(x))=anfn+...+a1f+a0=0が任意のxについて成り立つから、
an=...=a0=0なので、gは零多項式。これはgが定数でないことに反する。
以上により、F上代数的な、Fの元でないf∈F(x)は存在しない。
演習問題7
F⊂Lは代数拡大だから、補題4.1.3により任意のα∈Lについて、
定数でない最小多項式p∈F[x]が存在して、
命題4.1.5によりF上既約である。
ところがFは代数的閉だから、任意のf∈F[x]はF上完全分解するので、
F上既約な多項式は一次単多項式のみ。
故にp(x)=x-α∈F[x]となるからα∈F。したがってL⊂Fとなり、F=L。
演習問題8
(a)
p=x2+1∈ℝ[x]⊂L[x]とすれば、定理3.1.4により拡大L⊂Kで
pがK上完全分解するものが存在するから、
Kをそのようにとればpは根α∈Kをもつ。
(b)
αはℝ上代数的で、p=x2+1が最小多項式だから、
命題4.3.4により[ℝ(α):ℝ]=2で、ℝ(α)の基底は1,αである。
またℝ⊂ℝ(α)は有限次拡大なので補題4.4.2により代数的である。
ℝ(α)⊂L(α)は明らかに体拡大で、L(α)の任意の元は、
(一意ではないかもしれないが)l1+l2α (a,b∈L)と書ける。
ℝ⊂Lは代数的だから、l1,l2はℝ上代数的なので、ℝ(α)上代数的。
αはℝ(α)上代数的だから、命題4.4.4によりl1+l2αもℝ(α)上代数的である。
したがって、ℝ(α)⊂L(α)は代数的である。
写像φ: ℝ(α)→ℂ (a+bα→a+bi)は明らかに準同型で、
Ker(φ)=0だから、ℝ(α)≃ℂ。
(c)
ℂ≃ℝ(α)は代数的閉体で、(b)によりℝ(α)⊂L(α)は代数的だから、
演習問題7によりℝ(α)=L(α)となるので補題4.3.3により[L(α):ℝ(α)]=1。
故に[L(α):ℝ]=[L(α):ℝ(α)][ℝ(α):ℝ]=2なので、
拡大ℝ⊂L⊂L(α)において[L(α):L][L:ℝ]=[L(α):ℝ]=2 (1)。
したがって[L:ℝ]≤2となる。
L(α)≃ℂだから、L≃ℂなら(1)において[L(α):L]=[ℂ:L]=1より[L:ℝ]=2、
逆に[L:ℝ]=2なら(1)において2[ℂ:L]=2より[ℂ:L]=1だからL≃ℂ。
演習問題9
演習問題3(a)により、α∈ℚが代数的整数なら、
αのℚ上の最小多項式x-αは整数係数。したがってα∈ℤ。
逆にα∈ℤなら、αのℚ上の最小多項式x-αは整数係数だから、
演習問題3(a)により、αは代数的整数。
ありがとうございました。
返信削除勉強を進めます。
それでも、段々と難しくなってきます。
解答が本当にありがたいです。
ガロワ理論勉強中の読者より。