2015-05-23

コブリッツ「楕円曲線と保型形式」 第1章§1.2の演習問題

※MathJaxの数式表示に少し時間がかかります。

1. 巻末ヒントの通り$y\to y/n^2$, $x\to x/n$

2.
(a) $v=t(u+1)$ ($u\ne-1$)を$u^2+v^2=1$に代入して整理すれば、$[(1+t^2)u-(1-t^2)](u+1) =0$だから$u=(1-t^2)/(1+t^2), v=2t/(1+t^2)$

(b) $n=XY/2=Z^2uv/2$より$n/Z^2=uv/2=t(1-t^2)/(1+t^2)^2$

(c) 点$(-t, (1+t^2)/Z$について、(b)により$(-t)^3-(-t) =t(1-t^2) =n[(1+t^2)/Z]^2$だから、この点は$ny^2=x^3-x$上にある。したがって演習問題1により$(-nt, n^2(1+t^2)/Z)$は$y^2=x^3-n^2x$上にある。

$X/Z=(1-t^2)/(1+t^2)$を$t^2$について解いて\[t^2=\frac{\displaystyle Z-X}{\displaystyle Z+X}\]なので\[1+t^2=\frac{\displaystyle 2Z}{\displaystyle Z+X}\]これより\[y=\frac{\displaystyle 2n^2}{\displaystyle Z+X}\]また\[\frac{\displaystyle x}{\displaystyle y}=-\frac{\displaystyle Zt}{\displaystyle n(1+t^2)} =-\frac{\displaystyle Y}{\displaystyle 2n}\]だから、\[x=-\frac{\displaystyle nY}{\displaystyle Z+X}\]

(d) 命題1.2との辻褄がわからない・・・。

(e) (c)の結果を用いて、巻末ヒントの通りの表を得る。

3.
(a)
$X$と$Y$の間の角を$\theta$、$A=\cos\theta, B=\sin\theta$とする。$n=BXY/2$、また余弦定理により$Z^2=X^2+Y^2-2AXY$である。命題1.1の証明と同様にして、\[\left(\frac{\displaystyle X\pm Y}{\displaystyle 2}\right)^2=\left(\frac{\displaystyle Z}{\displaystyle 2}\right)^2+\frac{\displaystyle n(A\pm1)}{\displaystyle B}\tag{1}\]なので、(1)の複号$+$の式と$-$の式を辺々かけて、$u=Z/2, v=(X^2-Y^2)/2$とし、$A^2+B^2=1$より$-B^2=(A+1)(A-1)$も用いれば\[v^2=u^4+\frac{\displaystyle 2nA}{\displaystyle B}u^2-n^2\tag{2}\]§1.2冒頭と同様に$x=u^2, y=uv$として、求める3次方程式\[y^2=x^3+\frac{\displaystyle 2nA}{\displaystyle B}x^2-n^2x\tag{3}\]を得る。

(b)
(a)の(3)式において、演習問題1の逆変換$y\to n^2y$, $x\to nx$を行えば、\[ny^2=x^3+\frac{\displaystyle 2A}{\displaystyle B}x^2-x\tag{4}\]である。$\lambda=B/(A+1)$なので、\[-\lambda+\frac{\displaystyle 1}{\displaystyle \lambda}=\frac{\displaystyle 2A}{\displaystyle B}\tag{5}\]だから、(4)は\[ny^2=x(x-\lambda)\left(x+\frac{\displaystyle 1}{\displaystyle \lambda}\right)\tag{6}\]となる。

2015-05-14

コブリッツ「楕円曲線と保型形式」 第1章§1.1の演習問題

※MathJaxの数式表示に少し時間がかかります。

1. Silverman (2006)の第2章に証明がある。

2.

3.
(a) 1が合同数と仮定すると、\[X^2+Y^2=Z^2\tag{1}\]\[XY=2\tag{2}\]を同時に満たす$X,Y,Z\in\mathbb{Q}$が存在する。(1)$\pm$2$\times$(2)から\[(X\pm Y)^2=Z^2\pm4\tag{3}\]これらの両辺の積をとって\[(X^2-Y^2)^2=Z^4-2^4\tag{4}\]$X,Y,Z$の分母の最小公倍数を$l$とし、(4)の両辺に$l^4$をかければ\[[(lX)^2-(lY)^2]^2=(lZ)^4-(2l)^4\tag{5}\]で、$lX,lY,lZ\in\mathbb{N}$だから、方程式$x^4-y^4=u^2$は整数解$x=lZ, y=2l, u=(lX)^2-(lY)^2$を持つ。

(1)の両辺に$l^2$をかければ\[(lX)^2+(lY)^2=(lZ)^2\tag{6}\]なので$lX,lY,lZ$はPythagoras数。

$X=n_{x}/d_{x}$, $Y=n_{y}/d_{y}$ , $Z=n_{z}/d_{z}$($\text{gcd}(n_{x},d_{x})= \text{gcd}(n_{y},d_{y})= \text{gcd}(n_{z},d_{z})=1$)とする。1.1節冒頭の平方因子の議論と同様に、$n_{x},n_{y},n_{z}$に共通因子があれば、$XY\in\mathbb{N}$は平方因子を持つ。が、これは$XY=2$と矛盾する。故に$n_{x},n_{y},n_{z}$に共通因子はない。

$Y=2/X=2d_{x}/n_{x}$において、$n_{x}$が素因子2を含むなら、$d_{x}$は素因子2を含まない。$n_{x}=2n'_{x}$として$n_{y}=d_{x}, d_{y}=n'_{x}$なので、$\text{gcd}(d_{x},d_{y})=\text{gcd}(d_{x},n'_{x})=1$。$n_{x}$が素因子2を含まないなら、$n_{y}=2d_{x}, d_{y}=n_{x}$なので、$\text{gcd}(d_{x},d_{y})= \text{gcd}(d_{x},n_{x})= 1$となり、いずれにせよ$\text{gcd}(d_{x},d_{y})= 1$である。\[Z^2=X^2+Y^2=\frac{\displaystyle{n_{x}^{2}d_{y}^{2}+n_{y}^{2}d_{x}^{2}}}{\displaystyle{d_{x}^2d_{y}^2}}\]で、$d_{z}^{2}$は分母$d_{x}^{2}d_{y}^{2}$を分子$n_{x}^{2}d_{y}^{2}+n_{y}^{2}d_{x}^{2}$と約分して現れるから、$d_{z}|(d_{x}d_{y})$となる。以上のことから$l=d_{x}d_{y}$。

$d_{x}d_{y}/d_{z}=m\in\mathbb{N}$とすると、(6)は\[n_{x}^2+n_{y}^2=(mn_{z})^2\tag{7}\]である。$n_{x},mn_{z}$が共通の素因子$g\ge2$をもてば、
\[n_{y}^{2}=(mn_{z})^{2}-n_{x}^2\tag{8}\]が素因子$g$をもつ。したがって$g|n_{y}$となるから$\text{gcd}(n_{x},n_{y})\ge g$となり、$n_{x},n_{y}$に共通因子がないことと矛盾する。故に$\text{gcd}(n_{x},mn_{z})=1$、同様に$\text{gcd}(n_{y},mn_{z})=1$だから、$n_{x},n_{y},mn_{z}$は原始Pythagoras数。よって$n_{x},n_{y}$の偶奇は互いに逆だから$u= (lX)^2-(lY)^2= n_{x}^2-n_{y}^2$は奇数。

(b) (問題文の「フェルマーの最終定理はその系である」は「フェルマーの最終定理の系である」の誤訳(google booksで一部見られる原書で確認))。
$x^4=u^2+y^2$とみても、巻末ヒントにあるHardy & Wright (1960) 13.3節のような降下法の議論にもっていけない・・・。

4.
固定された$n\in\mathbb{N}$に対し、同一の$x$を与える2つの正の有理数の3つ組$(X,Y,Z), (X',Y',Z')$があったとすると、命題1.1の証明で既に示されたことから$4x= Z^2= Z'^2$より$Z= Z'$。また\[(X\pm Y)^2=4x\pm4n\]\[(X'\pm Y')^2=4x\pm4n\]なので複号$+$の式を辺々引いて整理すれば\[(X+Y)^2=(X'+Y')^2\]これより\[(X-X')+(Y-Y')=0\tag{1}\]同様に複号$-$の式から\[(X-X')-(Y-Y')=0\tag{2}\](1)(2)から$X=X', Y=Y'$を得る。

5.
(a) $n=5$に対し、$X=3/2, Y=20/3, Z=41/6$なので、命題1.1から$x=41^2/12^2=1681/144$。

(b) $n=6$に対し、$X=3, Y=4, Z=5$なので、命題1.1から$x =5^2/2^2 =25/4$。

(c) 計算機で探索して、分母・分子が100以下の有理数の中では$x =29^2/2^2 =841/4, x =37^2/2^2 =1369/4$が見つかる。

6.
(a) $p(x,y,z) =2x^2+y^2+32z^2$, $q(x,y,z) =2x^2+y^2+8z^2$とする。$n =2x^2+y^2+32z^2 =2x^2+y^2+8(2z)^2$なので、整数の3つ組$(x,y,z) =(a,b,c)$について、$n =p(a,b,c)$と$n =q(a,b,2c)$は同値。

Tunnelの定理(B)が成り立つとすると、$n =p(x,y,z)$となる$(x,y,z)$が$N$個あるとすれば、
$n =q(x,y,z)$となる$(x,y,z)$は$2N$個ある。$n =q(x,y,z)$となる$(x,y,z)$のうち、$z$が偶数であるものは、$N$個なので、$z$が奇数のものも$2N-N =N$個。よって$n =q(x,y,z)$となる$(x,y,z)$のうち$z$が奇数であるものと、$z$が偶数であるものの数は等しい。

(b)

7.
(a) 巻末ヒントにより、$n \equiv5 \text{ or } 7 \pmod{8}$なら、$n=2x^2+y^2+8z^2$を満たす整数の3つ組$(x,y,z)$は存在しないので、$z$が偶数の3つ組と奇数の3つ組は共に0個だから、演習問題6(a)によりTunnelの定理(B)の条件が満たされる。

(b) 41

(c) 演習問題2を使って計算機で原始Pythagoras数を探索すると、1500番目くらいに合同数41を与える組$(123/20, 40/3, 881/60)$が見つかる。