演習問題9
gcd(a,n)=1なので演習問題1により[a]∈(ℤ/nℤ)*
(n>1)、
また演習問題1により|(ℤ/nℤ)*|=φ(n)である。
<[a]>は(ℤ/nℤ)*の部分群だから、定理A.1.1(Lagrangeの定理)により
|<[a]>|=o([a])はφ(n)を割るので、あるm (1≤m≤φ(n)))ついてφ(n)=mo([a])だから、
[a]φ(n)=([a]o(a))m=1。すなわちaφ(n)=1 (mod n)。
群論の基本的事実としてはLagrangeの定理が効いて即出てくる。
演習問題10
1のn乗根の作る乗法群R={1, ζn,
ζn2,..., ζnn-1}において、
演習問題7(a)によりgcd(i,n)=1なるi (1≤i<n)について、
ζniはすべて1の原始n乗根だから、
Rの生成元の数はgcd(i,n)=1となるiの数、すなわちφ(n)である。
写像ψ: ℤ/nℤ→R ([m]→ζnm)を考えれば、ψは明らかに全射で
ψ([k+l])=ζnk+l=ζnkζnl=ψ([k])ψ([l])
よりψは準同型。
ψ([m])=1なら[m]=[0]だから、Ker(ψ)={[0]}なのでψは単射だからℤ/nℤ≃R。
したがってℤ/nℤの生成元の数はRと同じくφ(n)。
演習問題11
Φn∈ℤ[x]でℤは整域だから、(A.4)式・(9.4)式とdeg(Φd)=φ(d)を用いて
n=deg(xn-1)=∑d|n deg(Φd)=∑d|n φ(d)。
演習問題12
Maximaコマンド
cyclotomic(k,z):=trigrat(product(if gcd(j,k)=1
then z-exp(2*%pi*%i*j/k) else 1,j,1,k))$
for j:1 thru 30 do print("C",j,"=",cyclotomic(j,z));
で計算した、n=30までの円分多項式のパターンは以下の通り。
Φ1=x-1
Φ2=x+1
Φ3=x2+x+1
Φ4=x2+1
Φ5= x4+x3+x2+x+1
Φ6=x2-x+1
Φ7=x6+x5+x4+x3+x2+x+1
Φ8=x4+1
Φ9= x6+x3+1
Φ10= x4-x3+x2-x+1
Φ11=x10+x9+x8+x7+x6+x5+x4+x3+x2+x+1
Φ12= x4-x2+1
Φ13=x12+x11+x10+x9+x8+x7+x6+x5+x4+x3+x2+x+1
Φ14=x6-x5+x4-x3+x2-x+1
Φ15=x8-x7+x5-x4+x3-x+1
Φ16=x8+1
Φ17=x16+x15+x14+x13+x12+x11+x10+x9+x8+x7+x6+x5+x4+x3+x2+x+1
Φ18=x6-x3+1
Φ19=x18+x17+ x16+x15+x14+x13+x12+x11+x10+x9+x8+x7+x6+x5+x4+x3+x2+x+1
Φ20= x8-x6+x4-x2+1
Φ21=x12-x11+ x9-x8+x6-x4+x3-x+1
Φ22=x10-x9+x8-x7+x6-x5+x4-x3+x2-x+1
Φ23=x22+x21+ x20+x19+x18+x17+ x16+x15+x14+x13+x12
+x11+x10+x9+x8+x7+x6+x5+x4+x3+x2+x+1
Φ24= x8-x4+1
Φ25= x20+x15+x10+x5+1
Φ26=x12-x11+x10-x9+x8-x7+x6-x5+x4-x3+x2-x+1
Φ27= x18+x9+1
Φ28=x12-x10+x8-x6+x4-x2+1
Φ29=x28+x27+ x26+x25+x24+x23+x22+x21+ x20+x19+x18+x17+ x16+x15+x14
+x13+x12+x11+x10+x9+x8+x7+x6+x5+x4+x3+x2+x+1
Φ30= x8+x7-x5-x4-x3+x+1
(a)
(mの定義にある積は、補題9.1.1と同様に、
nを割る素数をわたることに注意)
nの素因数分解をn=p1i1...plilとするとm= p1...plなのでm|n。
1の原始n乗根の一つをζni (1≤i<n, gcd(n,i)=1)とする。
(ζnn/m)iは[(ζnn/m)i]m=(ζni)n=1より1のm乗根で、
gcd(n,i)=1よりgcd(m,i)=1だから、(ζnn/m)iは1の原始m乗根のひとつ。
また同様に、[(ζnm)i]n/m=(ζni)n=1より(ζnm)iは1のn/m乗根で、
gcd(n,i)=1よりgcd(n/m,i)=1だから、
(ζnm)iは1の原始n/m乗根のひとつ。
例えばζnmを原始n/m乗根としてとれる。
iの範囲を1≤i<m, gcd(m,i)=1に制限すれば、
{(ζnn/m)i}は異なるφ(m)個の1の原始m乗根を尽くしている。
したがって(9.3)式よりΦm(x)=∏1≤i<m, gcd(m,i)=1 [x-(ζnn/m)i]だから、
Φm(xn/m)=∏1≤i<m, gcd(m,i)=1 [xn/m-(ζni)n/m]=∏1≤i<m, gcd(m,i)=1 ∏0≤j<n/m [x-ζni ζn/mj]。
ただしζn/mは1の原始n/m乗根の一つである。
前の段落よりζn/m=ζnmとしてよいので、
Φm(xn/m)= ∏0≤j<n/m ∏1≤i<m, gcd(m,i)=1 [x-ζnjm+i]。
m= p1...plとgcd(m,i)=1より、
すべてのk=1,…,lについてλ=jm+i≢0 (mod pk)だから、
gcd(λ,n)=1である。
また0≤j<n/m, 1≤i<mに対しλ<nですべて異なり、
ひとつのjに対しこのようなλはφ(m)個あるので、
λは全部でφ(m)n/m個。
一方、P=∏p|n (1-1/p)とおくと補題9.1.1により、
φ(m)=mP, φ(n)=nPだからφ(n)=φ(m)n/m。
以上まとめると、φ(n)個のすべて異なるλについて
gcd(λ,n)=1なのだから、
λはnより小さいnと素な自然数をすべて尽くしている。
したがって、
∏0≤j<n/m ∏1≤i<m, gcd(m,i)=1 [x-ζnjm+i]=∏1≤λ<n, gcd(n,λ)=1 [x-ζnλ]=Φn(x)
だからΦn(x)=Φm(xn/m)。
(b)
n=1では成り立たない。Φ2(x)=x+1≠Φ1(-x)=-x-1=-Φ2(x)。
n>1の奇数という条件が必要。
まず、nがl個の異なる奇素数の積であるとし、
lについての数学的帰納法でΦ2n(x)=Φn(-x)を示す。。
l=1については、nが奇素数pなら、
x2p-1=(xp-1)(xp+1)においてxp-1=(x-1)∑0≤k≤p-1 xk=Φ1(x)Φp(x)。
またΦ2(x)Φp(-x)=(x+1)∑0≤k≤p-1 (-x)k
=∑0≤k≤p-1 (-1)kxk+1+∑0≤k≤p-1 (-1)kxk=∑1≤k≤p (-1)k-1xk+∑0≤k≤p-1
(-1)kxk
=-∑1≤k≤p (-1)kxk+∑0≤k≤p-1
(-1)kxk= xp+1-∑1≤k≤p-1 (-1)kxk+∑1≤k≤p-1 (-1)kxk=xp+1
より、x2p-1=Φ1(x)Φ2(x)Φp(x)Φp(-x)。
一方命題9.1.5によりx2p-1=Φ1(x)Φ2(x)Φp(x)Φ2p(x)だから、Φ2p(x)=Φp(-x)。
l-1個の奇素数の積であるすべてのnについて、
Φ2n(x)=Φn(-x)が成り立ったと仮定する。
p1,..., plを異なる奇素数としてn=p1...plとすれば、
命題9.1.5によりxn-1=∏d|n Φd(x)=Φ1(x)Pl-1(x)Φn(x),
ただしPl-1(x)=∏d|n, 1<d<n
Φd(x)。
nは1でない奇数なので、
xn+1=-[(-x)n-1]=-Φ1(-x)Pl-1(-x)Φn(-x)=Φ2(x)Pl-1(-x)Φn(-x)。
ここで、Pl-1(x)=∏d|n, 1<d<n
Φd(x)は、
高々l-1個の奇素数の積d>1を次数に持つ円分多項式の積だから、
帰納法の仮定によりPl-1(-x)=∏d|n, 1<d<n
Φd(-x)=∏d|n, 1<d<n
Φ2d(x)。
故にx2n-1=(xn-1)(xn+1)
=Φ1(x)Φ2(x)(∏d|n, 1<d<n
Φd(-x)Φ2d(x))Φn(x)Φn(-x) (1)。
一方命題9.1.5によりx2n-1=∏d|2n Φd(x)だが、nは奇数なので、
2nの約数は、nの約数とそれらの2倍からなるから、
x2n-1=Φ1(x)Φ2(x)(∏d|n, 1<d<n
Φd(-x)Φ2d(x))Φn(x)Φ2n(x) (2)。
(1)(2)によりΦ2n(x)=Φn(-x)。
以上により、奇数nの素因数分解が平方因子を持たないならΦ2n(x)=Φn(-x)。
平方因子を持つときは、m=∏p|n pとすれば2mは平方因子を持たないので、
(a)によりΦ2n(x)=Φ2m(x2n/2m)=Φ2m(xn/m)=Φm(-xn/m)。
ここでn/mは奇数だから(a)によりΦm(-xn/m)=Φm((-x)n/m)=Φn(-x)。
よってすべての奇数nについてΦ2n(x)=Φn(-x)。
(c)
まず、nがl個の異なるpでない素数の積であるとし、
lについての数学的帰納法でΦpn(x)=Φn(xp)/Φn(x)を示す。
ただしn=1のときl=0とする。
l=0については、Φ1(xp)=xp-1=Φ1(x)Φp(x)だから
Φp(x)=Φ1(xp)/Φ1(x)で成り立つ。
l-1個の異なるpでない素数の積であるすべてのnについて、
Φpn(x)=Φn(xp)/Φn(x)が成り立ったと仮定する。
p1,..., plを異なるpでない素数としてn=p1...plとすれば、
命題9.1.5によりxpn-1=∏d|pn Φd(x)で、p∤nよりpnの約数は、
nの約数とそれらのp倍からなるから、
xpn-1=(∏d|n, 1≤d<n
Φd(x)Φpd(x))Φn(x)Φpn(x)。
ここで1≤d<nなるnの約数dは、
高々l-1個のpでない異なる素数の積だから
帰納法の仮定によりΦd(x)Φpd(x)=Φd(xp)なので、
xpn-1=(∏d|n, 1≤d<nΦd(xp))Φn(x)Φpn(x) (1)。
一方xpn-1=(xp)n-1=∏d|n Φd(xp)=(∏d|n, 1≤d<nΦd(xp))Φn(xp) (2)。
(1)(2)によりΦn(x)Φpn(x)=Φn(xp)だからΦpn(x)=Φn(xp)/Φn(x)。
以上により、nの素因数分解が平方因子を持たないならΦpn(x)=Φn(xp)/Φn(x)。
平方因子を持つときは、qをnを割る素数として
m=∏q|n qとすればp∤nよりpmは平方因子を持たないので、
(a)と上で証明したことから、
Φpn(x)=Φpm(xpn/pm)=Φpm(xn/m)=Φm(xpn/m)/Φm(xn/m)=Φn(xp)/Φn(x)。
よってすべてのnについてp∤nならΦpn(x)=Φn(xp)/Φn(x)。
演習問題13
15=3·5でΦ5= x4+x3+x2+x+1なので演習問題12(c)により、
Φ15(x)=Φ5(x3)/Φ5(x)。
演習問題12のMaximaコマンドでのcyclotomic(k, x);を用いて、
Maximaコマンド
factor(cyclotomic(5,x^3))/cyclotomic(5,x);
で計算するとΦ5(x3)/Φ5(x)=x8-x7+x5-x4+x3-x+1=Φ15(x)で一致する。。
同様に105=15·7からΦ105(x)=Φ15(x7)/Φ15(x)。
Maximaコマンド
factor(cyclotomic(15,x^7))/cyclotomic(15,x);
で計算すると、例9.1.7と同じ表式を得る。
演習問題14
d|nならn/d|nで、dがnの約数全体を渡るときn/dもnの約数全体を渡るから、
∑d|n μ(n/d)=∑d|n μ(d)。故に∑d|n μ(d)=0を示せば十分。
まず、n>1がl個の異なるpでない素数の積であるとし、
lについての数学的帰納法で∑d|n μ(d)=0を示す。
nがl=1となる任意の素数pなら、∑d|p μ(d)=μ(1)+μ(p)=1+(-1)1=0で成り立つ。
l-1個の異なる素数の積であるすべてのnについて、
∑d|n μ(d)=0が成り立ったと仮定する。pをある素数、
p1,..., pl-1をpでない異なる素数としてm=p1...pl-1, n=mpとすれば、
nの約数は、mの約数とそれらのp倍からなるから、
∑d|n μ(d)=∑d|m μ(d)+∑d|m μ(pd)。
ここでmの約数dは、高々l-1個のpでない異なる素数の積だから
帰納法の仮定により∑d|m μ(d)=0。またμ(pd)=-μ(d)だから∑d|m μ(pd)=-∑d|m μ(d)=0。
故に異なる素数の積であるすべてのnについても∑d|n μ(d)=0。
nの素因数分解が平方因子を持つときは、qをnを割る素数として
k=∏q|n qとすれば∑d|n μ(d)=∑d|k μ(d)=0。
以上により全てのn>1について∑d|n μ(d)=∑d|n μ(n/d)=0。
演習問題15
F=∏d|n (xd-1)μ(n/d)とする。
まず、n>1がl個の異なるpでない素数の積であるとし、
lについての数学的帰納法でΦn=Fを示す。
nがl=1となる任意の素数pなら、xp-1=Φ1ΦpよりΦp=Φ1-1(xp-1)。
一方F=(x-1)-1(xp-1)=Φ1-1(xp-1)=Φpなので成り立つ。
l-1個の異なる素数の積であるすべてのnについて、
Φn=Fとなったと仮定する。
pをある素数、p1,..., pl-1をpでない異なる素数として、
m=p1...pl-1, n=mpとすれば、nの約数はmの約数とそれらのp倍からなるから、
F=∏d|m (xd-1)μ(pm/d)(xpd-1)μ(pm/pd)=∏d|m (xd-1)μ(pm/d)[(xp)d-1]μ(m/d)
ここで、d≥1についてμ(pd)=-μ(d)だから、
F=∏d|m (xd-1)-μ(m/d)[(xp)d-1]μ(m/d)
帰納法の仮定により∏d|m (xd-1)μ(m/d)=Φmなので、
F=Φm(xp)/Φm(x)。
gcd(m,p)=1だから演習問題12(c)によりF=Φpm=Φn。
故に異なる素数の積であるすべてのnについてF=Φn。
nの素因数分解が平方因子を持つときは、qをnを割る素数として
k=∏q|n qとすれば、nの約数dがμ(d)≠0となるのは、
d|kのときかつその時に限る。
dがnの約数全てを渡るとき、n/dもnの約数全てを渡るから、
Fの積の中でdの代わりにn/dと置いて
F=∏d|n (xn/d-1)μ(d)=∏d|k [(xn/k)k/d-1]μ(d)
kは異なる素数の積だから、上で示したことにより
∏d|k (xk/d-1)μ(d)=∏d|k (xd-1)μ(k/d)=Φkなので、
F=Φk(xn/k)=Φn。ただし演習問題12(a)を用いた。
演習問題16
(a)
ζnmm=ζn, ζnmn=ζmだから、ℚ(ζn,ζm)⊂ℚ(ζnm)。
またgcd(n,m)=1よりnx+my=1の整数解となるx,yが存在するので、
このx,yを用いてζnm=ζnmnx+my=ζmxζnyと表されるからℚ(ζnm)⊂ℚ(ζn,ζm)。
したがってℚ(ζnm)=ℚ(ζn,ζm)。
(b)
gcd(n,m)=1より補題9.1.1(a)を用いることで、
系9.1.10から[ℚ(ζnm):ℚ]=φ(nm)=φ(n)φ(m),
[ℚ(ζm):ℚ]=φ(m)。
定理4.3.8(塔定理)と(a)を用いて[ℚ(ζnm):ℚ(ζm)]=[ℚ(ζn,ζm):ℚ(ζm)]=φ(n)だから、
ℚ(ζm)上のζnの最小多項式をfとすると命題4.3.4によりdeg(f)=φ(n)。
ところでζnはΦn∈ℚ[x]⊂ℚ(ζm)[x]の根だから、補題4.1.3によりf|Φn。
deg(Φn)=φ(n)=deg(f)で、Φnとfは共に単多項式だから、Φn=fである。
したがってΦnはℚ(ζm)上のζnの最小多項式だからℚ(ζm)上既約。