演習問題1
(a)
M⊂LはGalois拡大だから有限次拡大なので、補題4.4.2により代数拡大。
定理4.4.3によりLのM上のベクトル空間としての基底をα1, ..., αpとして
L=M(α1, ..., αp)。
一方、M⊂Kは実冪根拡大なので、素数次の冪根をβ1, ...,
βnとして、
これらをMに順次添加した拡大体だからK=M(β1, ..., βn)。
M⊂L=M(α1, ..., αp)にβ1, ...,
βnを順次添加してその都度(8.26)式を使えば、
p=[L:M]=[L(β1, ..., βn):M(β1, ..., βn)]=[M(α1, ..., αp, β1,
..., βn):M(β1,
..., βn)]
=[KL:K]となり(8.27)式を得る。
ただし8.2節演習問題3からKL=M(α1, ..., αp, β1,
..., βn)を用いた。
(b)
KLは定義によりKとLを含むℝの最小の部分体だから、
L⊂Kなら明らかにKL=K。逆はL⊂KL=K。
したがってL⊂KとKL=Kは同値。
演習問題2
F⊂K⊂ℝおよびF⊂M⊂ℝでF⊂Kが冪根拡大だから、
補題8.2.7(b)によりM⊂MKは冪根拡大。
明らかにMK⊂ℝだから、M⊂MKは実冪根拡大。
(定理8.6.5の証明ではF⊂Mは有限次拡大だが、
この演習問題ではF⊂Mは有限次拡大でなくてもよい。
補題8.2.7およびその証明で用いられる8.2節演習問題3(a)と演習問題5も、
有限次拡大を仮定していない。)
演習問題3
f=x4-4x2+x+1として、fの判別式をΔとする。
Maximaで
f:x^4-4*x^2+x+1;
gcd(f,diff(f,x));
で計算してgcd(f,f')=1なので命題5.3.2によりfは分離的でΔ≠0。
1.3節演習問題13により、Δ>0なら実根は0個または4個、
Δ<0なら実根は2個である。
(5.13)を用いてΔ=Res(f,f',x)をMaximaで
resultant(f,diff(f,x),x);
で計算するとΔ=1957>0なので、実根は0個または4個。
f(0)=1, f(1)=-1だから、中間値の定理によりfは少なくとも1個の実根を持つので、
実根は4個である。
fがℚ上可約と仮定すると、deg(f)=4=1+3=2+2だから、
fはℚに根を持つか、またはℚ上既約な異なる2つの2次式の積である。
fがℚに根α=p/q (p∈ℤ, q∈ℕ, gcd(p,q)=1)を持つとすると、
命題A.3.1によりp|1かつq|1だからα=±1でなければならないが、
f(-1)=-3,
f(1)=-1だから、fはℚに根を持たない。
故にfはℚ上既約な2次式の積である。
f∈ℤ[x]でもあるから、f=gh
(g,h∈ℚ[x], deg(g)=deg(h)=2)なら、
定理A.3.2(Gaussの補題)によりf=g'h'なる
g',h'∈ℤ[x]
(deg(g')=deg(h')=2)が存在する。
fは単多項式で定数項が1だから、
g'=x2+ax±1, h'=x2+bx±1 (a,b∈ℤ, 複号同順)とおけるが、
g'h'=x4+(a+b)x3+(±2+ab)x2±(a+b)x+1で、3次の項からa+b=0だから、
1次の項も0でなければならず、fの1次の項の係数が1であることと矛盾する。
したがってfはℚ上既約な2次式の積で表すことはできない。
以上によりfはℚ上可約ではありえないので既約。
演習問題4
(i) M(γ)⊂L(γ)はGalois拡大であること
M⊂LはGalois拡大なので、定理7.1.1によりある分離多項式f∈M[x]の分解体で、
fの根をα1,.., αr
(r=deg(f))としてL=M(α1,.., αr)。
またγ∉Lだから、γはα1,.., αrのM係数有理式として表し得ない。
fは一般にM上の既約分離多項式の積として、f=g1...gsと表される。
g1の根を、必要ならαiの添字を付け替えてα1,..., αdeg(g1)とすると、
g1はα1,..., αdeg(g1)のM上の最小多項式である。
M(γ)においてg1=h1...ht,(ただしdeg(hi)>0 (i=1,..,t) , deg(g1)=deg(h1)+...+ deg(ht))
と可約になったとする。
h1の根を、必要ならαiの添字を付け替えてα1,..., αdeg(h1)とすると、
M上既約だったg1がM(γ)上で可約になったのだから、
多項式h1の最高次以外の各項の係数の中に、γを含むものが存在する。
系2.1.5によりγを含む係数はα1,..., αdeg(h1)のM係数対称式で表されるが、
このことはγがα1,..., αrのM係数有理式として表せないことと矛盾する。
したがって、g1はM(γ)上既約だからα1,..., αdeg(g1)のM(γ)上の最小多項式で、
g1のM(γ)上の分解体はM(α1,.., αdeg(g1), γ)。
g2,...,gsについても同様だから、fのM(γ)上の分解体はM(α1,.., αr, γ)=L(γ)。
したがって定理7.1.1によりM(γ)⊂L(γ)はGalois拡大である。
(ii) M⊂Lは可解拡大でないこと
Mの任意の冪根拡大をM⊂Kとする。
素数次の冪根をγ1, ..., γnとして冪根拡大の列を
M=M0⊂M(γ1)=M1⊂...⊂M(γ1, ..., γi)=Mi⊂...⊂M(γ1, ..., γn)=Mn=Kで表す
M=M0⊂M(γ1)=M1⊂...⊂M(γ1, ..., γi)=Mi⊂...⊂M(γ1, ..., γn)=Mn=Kで表す
(これは補題8.6.2により常に可能)。
ここでM1,...,Mnはすべて1の冪根をすべて含む。
iについての数学的帰納法で[L(γ1, ..., γn):Mn]=pを証明する。
i=1については、[L(γ1):M(γ1)]=[L(γ1):M1]=pが命題8.6.10の証明で示されている。
またM(γ1)⊂L(γ1)がGalois拡大であることを上で示した。
iのとき[L(γ1, ..., γi): Mi]=pかつM(γ1,
..., γi)⊂L(γ1,
..., γi)が
Galois拡大になったとすると、i+1のときもi=1の時と全く同様に、
[L(γ1,
..., γi+1):Mi+1]=pかつ、Mi+1⊂L(γ1,
..., γi+1)がGalois拡大であることが証明される。
したがって、i=nでも[L(γ1,
..., γn):Mn]=[L(γ1, ..., γn):K]=pが成り立つ。
演習問題1(a)と同様に、KL=L(γ1, ..., γn)だから、[KL:K]=p。
したがって演習問題1(b)によりL⊄Kだから、
Mの任意の冪根拡大KにLは含まれないのでM⊂Lは可解拡大でない。
演習問題5
(a)
5.3節演習問題15(b)(c)で示した。
(b)
(6.2節演習問題5と異なり、fが既約であることを仮定していないので、
命題6.2.1により|Gal(L/M)|=[L:M]だが、
命題4.3.4が使えず[L:M]=deg(f)=pがいえない)
φ: Gal(L/M)→ℤ/pℤ (σ→[i])とし、φ(σ)=[i], φ(τ)=[j]とすれば、
στ(α)=α+[i+j]よりφ(στ)=[i+j]=[i]+[j]=φ(σ)+φ(τ)だから、φは準同型。
演習問題6
(a)
β=A/Bをβn-β+t=0に代入して整理するとAn=Bn-1(A-Bt)。
Bが単数でなければ、系A.5.7によりk[t]はUFDだから、
A=a1...am, B=b1...bm (deg(bi)>0)と、k[t]の既約多項式の積に一意に分解されるので、
a1n...amn=b1n-1...bmn-1(A-Bt)よりb1|a1n...amn。
命題A.1.18によりk[t]はPIDだから、b1は
a1,...,amのどれか一つを割るが、
これはgcd(A,B)=1と矛盾する。
したがってBはk[t]の単数なのでB∈k。
(b)
An-A+t=0よりA(An-1-1)=-tだから、deg(A)+(n-1)deg(A)=1。
これよりdeg(A)=1/nだが、n>1だから整数deg(A)は存在しない。
したがって全てのA∈k[t]についてAn-A+t≠0。
演習問題7
m=|Gal(L/F)|とする。F⊂LはGalois拡大だから、
定理7.1.5によりm=[L:F]なのでp∤m。
故に例5.3.6により、相異なるm個の1のm乗根が存在する。
xm-1の分解体において、8.3節演習問題1(b)と同様にして、
xm-1の根全体は乗法に関し、位数mの有限群となる。
定理A.5.3によりこの群は巡回群だから、その生成元をζとすれば、
xm-1の根は1, ζ,..., ζm-1となり、xm-1のF上の分解体はF(ζ)。
したがってp∤mなら1の原始m乗根ζが存在する。
あとは定理8.3.3の(b)→(a)の証明と全く同様である。
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