2012-04-14

コックス「ガロワ理論」 15.4節の演習問題2


演習問題12
f[i]上可約と仮定するとf=g1h1
ただしg1,h1[i][u], 0<deg(g1)<deg(f), 0<deg(h1)<deg(f)
[i][i]の分数体だから、
定理A.5.8によりあるδ[i]が存在してf=gh
ただしg=δg1[i][u],h=δh1[i][u], 0<deg(g)<deg(f), 0<deg(h)<deg(f)

β[i]の素元なので命題15.4.2により[i]/β[i]は有限体、
すなわち[i]/β[i]=FN(β)である。
写像[i][u]→FN(β)[u]を、[i][u]の元である多項式の各項の係数を、
[i]のイデアルβ[i]による剰余類へ還元した多項式として定義すれば、
この写像は環準同型。

この写像によるf,g,hの像をf',g',h'FN(β)[u]とすれば、
f'=g'h'で、βa0, β|a1,..., β|adよりf'=[a0]ud=g'h'
ただし[a0]FN(β)a0を含むβ[i]による剰余類の代表元である。
FN(β)は体なので系A.5.7によりUFDだから、
g'=[a]ur, h'=[b]us, [a0]=[a][b],r+s=dとなる。
r=0ならg'=[a]かつdeg(g)>0だから、
gの最高次の項の係数はβ[i]の元である。
するとf=ghからa0β[i]となるからa0βと矛盾。
したがってr>0。同様にs>0
g'=[a]urだから、gの定数項はβ[i]の元である。
同様にhの定数項はβ[i]の元である。
fの定数項はこれらg,hの定数項の積となるから、β2|adとなるが、
これはβ2adと矛盾するから、r>0もありえない。

したがって、f[i]上可約ではありえないので既約。

演習問題13
1/(1+x)=0k< (-1)kxkより、
1/(1+a1(β)u+...+ad(β)ud)=0k< (-u)k(a1(β)u+...+ad(β)ud-1)kである。
この和の各項はukに比例するから、uの各次数の項は有限個しかない。
よって(15.53)bk(β)は有限個のa1(β),...,ad(β)[i]の積と和からなるので、
bk(β) [i]

演習問題14
(a)
n=1のときG1(u)=1[u]とすればφ(1)(z)=φ'(z)=G1(φ(z)) φ'(z)
n=2のときG2(u)=-2u3[u]とすればφ(2)(z)=φ''(z)=-2φ3(z)=G2(φ(z))で成り立つ。
nで成り立つと仮定する。
n+1が偶数の時φ(n+1)(z)=dφ(n)(z)/dz=(dGn(φ(z))/dz)φ'(z)+Gn(φ(z))φ''(z)
=Gn'(φ(z))φ'2(z)+Gn(φ(z))φ''(z)=Gn'(φ(z))(1-φ4(z))-2Gn(φ(z))φ3(z)
だから、Gn+1(u)=Gn'(u)(1-u4)-2Gn(u)u3[u]とすれば、
φ(n+1)(z)=Gn+1(φ(z))となり成り立つ。
n+1が奇数の時、同様にφ(n+1)(z)=Gn'(φ(z))φ'(z)だから、
Gn+1(u)=Gn'(u)[u]とすれば、φ(n+1)(z)=Gn+1(φ(z))φ'(z)となり成り立つ。

(b)
φ(z)z=0での冪級数展開の、n次の展開係数dn=φ(n)(0)/n!
φ(0)=0,φ'(0)=1(a)により、φ(n)(0)=Gn(φ(0))=Gn(0)なので、
dnである。

(c)
φ(z)が解析的な全てのzについてφ(iz)=(z)だから、
この両辺のz=0での冪級数展開の、n次の係数比較と(b)から、
inφ(n)(0)/n!=iφ(n)(0)/n!、すなわちi(in-1-1)φ(n)(0)=0
故にn1 (mod 4)またはφ(n)(0)=0でなければならないので、
n1 (mod 4)ならdn=0
よってcj=d4j+1としてφ(z)=0j< cjz4j+1

(d)
(b)によりdn=Gn(0)/n!だからG1(u)=1よりc0=d1=G1(0)/1!=1

(b)(c)によりcj=d4j+1=Gn(0)/n!で、
(a)によりnが奇数の時Gn+1(u)=Gn'(u)(1-u4)-2Gn(u)u3
nが偶数の時Gn+1(u)=Gn'(u)なので、φ'(0) =1より、
すべてのn≥1についてGn+1(0)=Gn'(0)だから、dn+1=Gn'(0)/(n+1)!
G2(u)=-2u3よりd2=0
G3(u)=G2'(u)=-6u2なので、G3(0)=0よりd3=0
G4(u)=G3'(u)(1-u4)-2G3(u)u3
=-12u(1-u4)+12u5=-12u+24u5なので、G4(0)=0よりd4=0
G5(u)=G4'(u)=-12+120u4なので、
G5(0)= -12よりc1=d5=-12/5!=-1/10

G6(u)=G5'(u)(1-u4)-2G5(u)u3=480u3(1-u4)-2(-12+120u4)u3=504u3-720u7
G6(0)=0よりd6=0
G7(u)=G6'(u)=1512u2-5040u6G7(0)=0よりd7=0
G8(u)=G7'(u)(1-u4)-2G7(u)u3=(3024u-30240u5)(1-u4)-2(1512u2-5040u6)u3
=3024u+36288u5+40320u9
G8(0)=0よりd8=0
G9(u)=G9'(u)=3024+181440u4+362880u8
G9(0)=3024よりc2=d9=3024/9!=1/120

演習問題15
φが解析的なの領域において、
(z+c1z5+c2z9+...)5= z5(1+c1z4+c2z8+...)5
zの有限冪には有限個の項の和しか現れないから展開は意味を持つ。
各冪について具体的な項の和をとって、
(z+c1z5+c2z9+...)5=z5(1+5c1z4+...)=z5+5c1z9+...
同様に
(z+c1z5+c2z9+...)9=z9(1+c1z4+c2z8+...)9=z9(1+9c1z4+...)=z9+9c1z13+...
これより
b0(β)(z+c1z5+c2z9+...)+b1(β)(z+c1z5+c2z9+...)5+b2(β)(z+c1z5+c2z9+...)9+...
=b0(β)(z+c1z5+c2z9+...)+b1(β)(z5+5c1z9+...)+b2(β)(z9+9c1z13+...)
= b0(β)z+(b0(β)c1+b1(β))z5+(b0(β)c2+5b1(β)c1+b2(β))z9+...
となり、(15.58)を得る。

演習問題16

kについての数学的帰納法により証明する。
k=0のときはS0(β)=1とすれば成り立つ。
kmなるすべてのkで、
bk(β)=βSk(β), Sk(u)[u], deg(Sk(u))=4kが成り立つと仮定して、
k=m+1の時を考える。
(15.57)により、zの冪の係数にbm+1(β)が現れる最低次の冪はz4m+5で、
かつz4m+5の係数の表式にbm+1(β)のみの項として入る。
またz4m+5の係数の表式においてb0(β),...,bm(β)は、
c0,...,cmとの係数の線形結合として、
0im,0jm aijcibj(β) (aij)の形で入る。
したがって、(15.57)z4m+5の係数の比較は、
cm+1β4m+5=0im,0jm aijcibj(β)+bm+1(β)となるから、
bm+1(β)=cm+1β4m+5+0im,0jm aijcibj(β)
帰納法の仮定により0jmに対しbj(β)=βSj(β)だから、
bm+1(β)=cm+1β4m+5+0im,0jm aijciβSj(β)=β(cm+1β4(m+1)+0im,0jm aijciSj(β))
そこでSm+1(u)= cm+1u4(m+1)+0im,0jm aijciSj(u)とおけば、
帰納法の仮定により0jmに対しSj(u)[u]
また c0,..., cm+1, aijなので Sm+1(u)[u]
0jmに対しdeg(Sj(u))が最大なのは、deg(Sm(u))=4mだから、
deg(Sm+1(u)) =4(m+1)である。
よってk=m+1でも成り立つ。


演習問題17
nは奇数なので、jとしてn=4j+1または4j+3
4=2(1+i)(1-i)だから、n=4j+1のときn=2(1+i+)(1-i)j+1≡1 (mod 2(1+i))
n=4j+3=4(j+1)-1のときn=2(1+i)(1-i)(j+1)-1≡-1 (mod 2(1+i))である。
n=4j+1のときは(n-1)/2=2jは偶数で、
n=4j+3のときは(n-1)/2=2j+1は奇数だから、2つの場合をまとめると
n≡(-1)(n-1)/2 (mod 2(1+i))となる。

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