演習問題12
fがℚ[i]上可約と仮定するとf=g1h1、
ただしg1,h1∈ℚ[i][u], 0<deg(g1)<deg(f), 0<deg(h1)<deg(f)。
ℚ[i]はℤ[i]の分数体だから、
定理A.5.8によりあるδ∈ℚ[i]が存在してf=gh、
ただしg=δg1∈ℤ[i][u],h=δh1∈ℤ[i][u], 0<deg(g)<deg(f), 0<deg(h)<deg(f)。
βはℤ[i]の素元なので命題15.4.2によりℤ[i]/βℤ[i]は有限体、
すなわちℤ[i]/βℤ[i]=FN(β)である。
写像ℤ[i][u]→FN(β)[u]を、ℤ[i][u]の元である多項式の各項の係数を、
ℤ[i]のイデアルβℤ[i]による剰余類へ還元した多項式として定義すれば、
この写像は環準同型。
この写像によるf,g,hの像をf',g',h'∈FN(β)[u]とすれば、
f'=g'h'で、β∤a0, β|a1,..., β|adよりf'=[a0]ud=g'h'、
ただし[a0]∈FN(β)はa0を含むβℤ[i]による剰余類の代表元である。
FN(β)は体なので系A.5.7によりUFDだから、
g'=[a]ur, h'=[b]us, [a0]=[a][b],r+s=dとなる。
r=0ならg'=[a]かつdeg(g)>0だから、
gの最高次の項の係数はβℤ[i]の元である。
するとf=ghからa0∈βℤ[i]となるからa0∤βと矛盾。
したがってr>0。同様にs>0。
g'=[a]urだから、gの定数項はβℤ[i]の元である。
同様にhの定数項はβℤ[i]の元である。
fの定数項はこれらg,hの定数項の積となるから、β2|adとなるが、
これはβ2∤adと矛盾するから、r>0もありえない。
したがって、fはℚ[i]上可約ではありえないので既約。
演習問題13
1/(1+x)=∑0≤k<∞ (-1)kxkより、
1/(1+a1(β)u+...+ad(β)ud)=∑0≤k<∞ (-u)k(a1(β)u+...+ad(β)ud-1)kである。
この和の各項はukに比例するから、uの各次数の項は有限個しかない。
よって(15.53)のbk(β)は有限個のa1(β),...,ad(β)∈ℤ[i]の積と和からなるので、
bk(β) ∈ℤ[i]。
演習問題14
(a)
n=1のときG1(u)=1∈ℤ[u]とすればφ(1)(z)=φ'(z)=G1(φ(z)) φ'(z)。
n=2のときG2(u)=-2u3∈ℤ[u]とすればφ(2)(z)=φ''(z)=-2φ3(z)=G2(φ(z))で成り立つ。
nで成り立つと仮定する。
n+1が偶数の時φ(n+1)(z)=dφ(n)(z)/dz=(dGn(φ(z))/dz)φ'(z)+Gn(φ(z))φ''(z)
=Gn'(φ(z))φ'2(z)+Gn(φ(z))φ''(z)=Gn'(φ(z))(1-φ4(z))-2Gn(φ(z))φ3(z)
だから、Gn+1(u)=Gn'(u)(1-u4)-2Gn(u)u3∈ℤ[u]とすれば、
φ(n+1)(z)=Gn+1(φ(z))となり成り立つ。
n+1が奇数の時、同様にφ(n+1)(z)=Gn'(φ(z))φ'(z)だから、
Gn+1(u)=Gn'(u)∈ℤ[u]とすれば、φ(n+1)(z)=Gn+1(φ(z))φ'(z)となり成り立つ。
(b)
φ(z)のz=0での冪級数展開の、n次の展開係数dn=φ(n)(0)/n!。
φ(0)=0,φ'(0)=1と(a)により、φ(n)(0)=Gn(φ(0))=Gn(0)∈ℤなので、
dn∈ℚである。
(c)
φ(z)が解析的な全てのzについてφ(iz)=iφ(z)だから、
この両辺のz=0での冪級数展開の、n次の係数比較と(b)から、
inφ(n)(0)/n!=iφ(n)(0)/n!、すなわちi(in-1-1)φ(n)(0)=0。
故にn≡1 (mod 4)またはφ(n)(0)=0でなければならないので、
n≢1 (mod 4)ならdn=0。
よってcj=d4j+1∈ℚとしてφ(z)=∑0≤j<∞ cjz4j+1。
(d)
(b)によりdn=Gn(0)/n!だからG1(u)=1よりc0=d1=G1(0)/1!=1。
(b)(c)によりcj=d4j+1=Gn(0)/n!で、
(a)によりnが奇数の時Gn+1(u)=Gn'(u)(1-u4)-2Gn(u)u3、
nが偶数の時Gn+1(u)=Gn'(u)なので、φ'(0)
=1より、
すべてのn≥1についてGn+1(0)=Gn'(0)だから、dn+1=Gn'(0)/(n+1)!。
G2(u)=-2u3よりd2=0。
G3(u)=G2'(u)=-6u2なので、G3(0)=0よりd3=0。
G4(u)=G3'(u)(1-u4)-2G3(u)u3
=-12u(1-u4)+12u5=-12u+24u5なので、G4(0)=0よりd4=0。
G5(u)=G4'(u)=-12+120u4なので、
G5(0)=
-12よりc1=d5=-12/5!=-1/10。
G6(u)=G5'(u)(1-u4)-2G5(u)u3=480u3(1-u4)-2(-12+120u4)u3=504u3-720u7。
G6(0)=0よりd6=0。
G7(u)=G6'(u)=1512u2-5040u6。G7(0)=0よりd7=0。
G8(u)=G7'(u)(1-u4)-2G7(u)u3=(3024u-30240u5)(1-u4)-2(1512u2-5040u6)u3
=3024u+36288u5+40320u9。
G8(0)=0よりd8=0。
G9(u)=G9'(u)=3024+181440u4+362880u8。
G9(0)=3024よりc2=d9=3024/9!=1/120。
演習問題15
φが解析的なℂの領域において、
(z+c1z5+c2z9+...)5= z5(1+c1z4+c2z8+...)5
のzの有限冪には有限個の項の和しか現れないから展開は意味を持つ。
各冪について具体的な項の和をとって、
(z+c1z5+c2z9+...)5=z5(1+5c1z4+...)=z5+5c1z9+...。
同様に
(z+c1z5+c2z9+...)9=z9(1+c1z4+c2z8+...)9=z9(1+9c1z4+...)=z9+9c1z13+...。
これより
b0(β)(z+c1z5+c2z9+...)+b1(β)(z+c1z5+c2z9+...)5+b2(β)(z+c1z5+c2z9+...)9+...
=b0(β)(z+c1z5+c2z9+...)+b1(β)(z5+5c1z9+...)+b2(β)(z9+9c1z13+...)
= b0(β)z+(b0(β)c1+b1(β))z5+(b0(β)c2+5b1(β)c1+b2(β))z9+...
となり、(15.58)を得る。
演習問題16
kについての数学的帰納法により証明する。
k=0のときはS0(β)=1とすれば成り立つ。
k≤mなるすべてのkで、
bk(β)=βSk(β),
Sk(u)∈ℚ[u],
deg(Sk(u))=4kが成り立つと仮定して、
k=m+1の時を考える。
(15.57)により、zの冪の係数にbm+1(β)が現れる最低次の冪はz4m+5で、
かつz4m+5の係数の表式にbm+1(β)のみの項として入る。
またz4m+5の係数の表式においてb0(β),...,bm(β)は、
c0,...,cm∈ℚとのℤ係数の線形結合として、
∑0≤i≤m,0≤j≤m
aijcibj(β)
(aij∈ℤ)の形で入る。
したがって、(15.57)のz4m+5の係数の比較は、
cm+1β4m+5=∑0≤i≤m,0≤j≤m aijcibj(β)+bm+1(β)となるから、
bm+1(β)=cm+1β4m+5+∑0≤i≤m,0≤j≤m aijcibj(β)。
帰納法の仮定により0≤j≤mに対しbj(β)=βSj(β)だから、
bm+1(β)=cm+1β4m+5+∑0≤i≤m,0≤j≤m aijciβSj(β)=β(cm+1β4(m+1)+∑0≤i≤m,0≤j≤m aijciSj(β))。
そこでSm+1(u)= cm+1u4(m+1)+∑0≤i≤m,0≤j≤m aijciSj(u)とおけば、
帰納法の仮定により0≤j≤mに対しSj(u)∈ℚ[u]、
また c0,..., cm+1∈ℚ, aij∈ℤなので Sm+1(u)∈ℚ[u]。
0≤j≤mに対しdeg(Sj(u))が最大なのは、deg(Sm(u))=4mだから、
deg(Sm+1(u))
=4(m+1)である。
よってk=m+1でも成り立つ。
演習問題17
nは奇数なので、j∈ℤとしてn=4j+1または4j+3。
4=2(1+i)(1-i)だから、n=4j+1のときn=2(1+i+)(1-i)j+1≡1 (mod 2(1+i))、
n=4j+3=4(j+1)-1のときn=2(1+i)(1-i)(j+1)-1≡-1 (mod 2(1+i))である。
n=4j+1のときは(n-1)/2=2jは偶数で、
n=4j+3のときは(n-1)/2=2j+1は奇数だから、2つの場合をまとめると
n≡(-1)(n-1)/2 (mod 2(1+i))となる。
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