演習問題1
命題15.3.4の加法法則を用いて、
φ((1+i)z)=φ(z+iz)=(φ(z)φ'(iz)+φ(iz)φ'(z))/(1+φ2(z)φ2(iz))。
(15.24)よりφ(iz)=iφ(z),
φ'(iz)=φ'(z)だから
φ((1+i)z)=(1+i)φ(z)φ'(z)/(1-φ4(z))。
同様に、φ((1-i)z)=φ(z-iz)=(φ(z)φ'(-iz)+φ(-iz)φ'(z))/(1+φ2(z)φ2(-iz))
=(φ(z)φ'(iz)-φ(iz)φ'(z))/(1+φ2(z)φ2(iz))=(1-i)φ(z)φ'(z)/(1-φ4(z))。
したがって(15.36)を得る。
演習問題2
(a)
問題の写像をψ1: ℤ[i]→(ℤ⊕ℤ)として、
ψ1(μ1+ν1i+μ2+ν2i)=ψ1((μ1+μ2)+(ν1+ν2)i)
=((μ1+μ2)(d,-b)+(ν1+ν2)(-c,a)
=(μ1(d,-b)+ν1(-c,a))+(μ2(d,-b)+ν2(-c,a))
=ψ1(μ1+ν1i)+ψ1(μ2+ν2i)
だから、加法に関する群準同型。
(b)
ad-bc=1だから、ψ1(α)=ψ1(m(a+bi))
=ma(d,-b)+mb(-c,a)=(m(ad-bc), m(-ab+ab))=(m,0)。
またψ1(iα)=ψ1(m(-b+ai))
=-mb(d,-b)+ma(-c,a)=(-m(ac+bd),m(a2+b2))。
β=β1+β2i∈ℤ[i] (β1,β2∈ℤ)として、
αℤ[i]の任意の元βα=β1α+β2αi=m(aβ1-bβ2)+m(aβ2+bβ1)iについて、
ψ1(βα)=m(aβ1-bβ2)(d,-b)+m(aβ2+bβ1)(-c,a)
=(m[β1-(ac+bd)β2], m(a2+b2)β2)
=(m[β1-(ac+bd)β2],0)+(0,m(a2+b2)β2)
m[β1-(ac+bd)β2]∈mℤ, m(a2+b2)β2∈m(a2+b2)ℤだから、
ψ1(αℤ[i])⊂mℤ⊕m(a2+b2)ℤ。
逆に任意のms∈mℤ, m(a2+b2)t∈m(a2+b2)ℤ
(s,t∈ℤ)について、
β=s+(ac+bd)t+itとすれば
ψ1(αβ)=(ms, m(a2+b2)t)だから、ψ1は全射となりmℤ⊕m(a2+b2)ℤ⊂ψ1(αℤ[i])。
よってmℤ⊕m(a2+b2)ℤ=ψ1(αℤ[i])だから、
(a)の群準同型写像によりαℤ[i]はmℤ⊕m(a2+b2)ℤ⊂ℤ⊕ℤに写る。
(c)
μ+νi∈Ker(ψ1)なら、ψ1(μ+νi)=μ(d,-b)+ν(-c,a)=(μd-νc,-μb+νa)=(0,0)だから、
μd=νc, μb=νaで、これよりμbd=νbc=νadなのでν(ad-bc)=0。
ad-bc=1だからν=0なので、μd=μb=0。μ≠0ならd=b=0より、
ad-bc=0となって、ad-bc=1と矛盾するから、μ=0。
したがってKer(ψ1)={0}だからψ1は1対1。故に(b)により同型。
ℤ[i], ℤは加法群としてAbel群なので、
αℤ[i]=ψ1-1(mℤ⊕m(a2+b2)ℤ)⊴ℤ[i], mℤ⊕m(a2+b2)ℤ⊴ℤ⊕ℤだから、
第1同型定理によりℤ[i]/αℤ[i]≃(ℤ⊕ℤ)/(mℤ⊕m(a2+b2)ℤ) なので、
|ℤ[i]/αℤ[i]|≃|(ℤ⊕ℤ)/(mℤ⊕m(a2+b2)ℤ)|=m2(a2+b2)=N(α)。
演習問題3
ℤ[i]はPIDで、αℤ[i]はℤ[i]の単項イデアルである。
αをℤ[i]の素元とする。
Iをαℤ[i]⊂I⊂ℤ[i]となるイデアルとすると、ℤ[i]はPIDだから、
あるβ∈ℤ[i]が存在してI=βℤ[i]。
α∈βℤ[i]だから、あるγ∈ℤ[i]が存在してα=βγ∈αℤ[i]だが、
αは素元だからαℤ[i]は素イデアルなので、β∈αℤ[i]またはγ∈αℤ[i]。
β∈αℤ[i]ならβℤ[i]⊂αℤ[i]だからβℤ[i]=αℤ[i]。
γ∈αℤ[i]ならすべてのβ∈ℤ[i]についてβγ∈αℤ[i]が成り立つからβℤ[i]=ℤ[i]。
よってαℤ[i]はℤ[i]の極大イデアルだから、
命題3.1.1によりℤ[i]/αℤ[i]は体。(a)により有限体である。
演習問題4
α=α1+α2i
(α1,α2∈ℤ), β=β1+β2i
(β1, β2∈ℤ)とする。
αβ=(α1β1-α2β2)+(α1β2+α2β1)iについて、
α, βがともに奇なら、α1+α2, β1+β2は奇数で、
このときα1とα2のどちらかは奇数で他方は偶数、
また β1-β2は奇数だから、
α1β1-α2β2+α1β2+α2β1=α1(β1+β2)+α2(β1-β2)は奇数なのでαβは奇。
逆にαβが奇なら、α1(β1+β2)+α2(β1-β2)は奇数。
すなわちα1(β1+β2)とα2(β1-β2) のどちらかは奇数で他方は偶数だが、
β1+β2とβ1-β2の偶奇は一致するから、
β1+β2が偶数ならα1(β1+β2)+α2(β1-β2)は奇数になりえないので、
β1+β2は奇数。故にβは奇。
するとα1とα2のどちらかが奇数で他方は偶数になるからαは奇。
よって(15.38)の1行目の同値が示された。
α,βが共に偶または共に奇なら明らかにα1+α2+β1+β2は偶数だから、
α+β=(α1+β1)+(α2+β2)iは偶。
逆にα+β=(α1+β1)+(α2+β2)iが偶なら、
(α1+α2)+(β1+β2)は偶数なので、α1+α2, β1+β2は共に偶数または共に奇数。
したがってα,βが共に偶または共に奇。
よって(15.38)の2行目の同値が示された。
1+iがαを割るなら、あるα'∈ℤ[i]が存在してα=(1+i)α'。
1+iは偶だから(15.38)の1行目の同値によりαは偶。
逆にα=α1+α2iが偶なら、α1, α2は共に偶数または共に奇数。
α1, α2が共に偶数なら、2|αだから、2=(1+i)(1-i)より1+iはαを割る。
α1, α2が共に奇数なら、α-(1+i)=(α1-1)+(α2-1)iにおいて、
α1-1, α2-1は共に偶数だから、上で示したことにより、
1+iはα-(1+i)を割るので、あるα'∈ℤ[i]が存在してα-(1+i)=(1+i)α'。
よってα=(1+i)(α'+1)だから1+iはαを割る。
よって(15.38)の3行目の同値が示された。
演習問題5
命題15.3.4の加法法則を用いて、
φ((2+i)z)=φ(2z+iz)=(φ(2z)φ'(iz)+φ(iz)φ'(2z))/(1+φ2(2z)φ2(iz))。
2倍公式(15.14)によりφ(2z)=2φ(z)φ'(z)/(1+φ4(z))。
これをzで微分して命題15.2.1と15.2節演習問題3(d)から、
2φ'(2z)=2(1-6φ4(z)+φ3(z))/(1+φ4(z))2により、
φ'(2z)=(1-6φ4(z)+φ8(z))/(1+φ4(z))2。
さらに(15.24)から、φ(iz)=iφ(z),φ'(iz)=φ'(z)。
これらを上のφ((2+i)z)の式に代入して整理すると、
例15.4.3の最初の式が得られる。
この式の分子・分母を因数分解して整理すると
(-2+i)φ8(z)-6iφ4(z)+2+i=i[φ4(z)-(1-2i)][(1+2i)φ4(z)-1],
5φ8(z)-2φ4(z)+1=-[(-1+2i)φ4(z)+1][(1+2i)φ4(z)-1]だから、(15.39)を得る。
演習問題6
(15.42)の第3式は(15.13)にx=βz, y=zを代入するだけである。
第4式は(15.13)にx=βz, y=izを代入して、(15.24)を用いれば得られる。
演習問題7
z=ϖ/2に対しては(1+i)ϖ/2はφ(z)の極なので、別の扱いが必要。
これは演習問題8(b)で行われるので、ここではz≠ϖ/2とする。
mについての数学的帰納法で証明する。
m=0とm=1については、φ(nz)とφ((n+i)z)の公式がすでに得られている。
いまk=m-1とk=mについてPn+ik(u),
Qn+ik(u)∈ℤ[i][u] かつQn+ik(0)=1であって、
n+ikが奇の時(15.40)、n+ikが偶の時(15.41)を満たすものが存在すると仮定する。
k=m+1に対し、(15.42)の第4式でβ=n+imとおいて(15.24)を用い、
φ([n+i(m+1)]z)=-φ([n+i(m-1)]z)+2iφ((n+im)z)φ'(z)/(1-φ2((n+im)z)φ2(z))。
帰納法の仮定により、β=n+imが奇なら
φ([n+i(m-1)]z)=φ(z)(Pn+i(m-1)(φ4(z))/Qn+i(m-1)(φ4(z)))φ'(z),
φ((n+im)z)=φ(z)(Pn+im(φ4(z))/Qn+im(φ4(z)))だから、
φ([n+i(m+1)]z)の式に代入して整理すれば、
φ([n+i(m+1)]z)=φ(z)(Pn+i(m+1)(φ4(z))/Qn+i(m+1)(φ4(z)))φ'(z),
Pn+i(m+1)(u)=Pn+i(m-1)(u)(Qn+im2(u)-uPn+im2(u))+2iPn+im(u)Qn+im(u)Pn+i(m-1)(u)∈ℤ[i][u],
Qn+i(m+1)(u)=Qn+i(m-1)(u)(Qn+im2(u)-uPn+im2(u))∈ℤ[i][u]が得られる。
Qn+im(0)=Qn+i(m-1)(0)=1だから、Qn+i(m+1)(0)=1となる。
またβ=n+imが偶なら同様にして、
φ([n+i(m+1)]z)=φ(z)(Pn+i(m+1)(φ4(z))/Qn+i(m+1)(φ4(z))),
Pn+i(m+1)(u)=Pn+i(m-1)(u)(Qn+im2(u)-u(1-u)Pn+im2(u))
+2i(1-u)Pn+im(u)Qn+im(u)Pn+i(m-1)(u)∈ℤ[i][u],
Qn+i(m+1)(u)=Qn+i(m-1)(u)(Qn+im2(u)-u(1-u)Pn+im2(u))∈ℤ[i][u]が得られ、
Qn+i(m+1)(0)=1となる。したがって、k=m+1に対しても、
φ((n+ik)z)に対する所望の公式が得られQn+ik(0)=1となる。
よって、すべてのφ((n+im)z)に対し証明された。
演習問題8
(a)
演習問題2(c)により|ℤ/2(1+i)ℤ|=N(2(1+i))=8で、
具体的な元はℤ/2(1+i)ℤ={[0],[1+i],[1],[1-i],[2+i],[2],[2-i],[3]}
2+i=-i+2(1+i)≡-i (mod 2(1+i)),
2-i=i-
i·2(1+i)≡i
(mod 2(1+i)),
3=-1+4=-1+(1-i)·2(1+i)≡-1 (mod 2(1+i))なので、
ℤ/2(1+i)ℤ={[0],[1+i],[1],[1-i],[-i],[2],[i],[-1]}。
2(1+i)はℤ[i]の素元では無いので、ℤ/2(1+i)ℤの全ての元に、
乗法の逆元が存在するかどうかは自明ではない。
実際、ℤ/2(1+i)ℤの元の中で乗法の逆元を持つのは、
{±[1],
±[i]}のみで、これらは乗法について閉じているから、
(ℤ/2(1+i)ℤ)*={±[1], ±[i]}={[iε]} (ε=0,1,2,3}。
2(1+i)は偶だから、(15.38)からβが奇であるために、
β≡β' (mod 2(1+i))となるβ'∈ℤ/2(1+i)ℤは奇なので、
β'∈{±[1], ±[i]}=(ℤ/2(1+i)ℤ)*だから、β≡iε
(mod 2(1+i)) (ε=0,1,2,3)。
(b)
z=ϖ/2に対しては(1+i)ϖ/2はφ(z)の極なので、
定理15.4.4の証明の第1段において、別の扱いを必要とする。
βは奇なので、(a)によりβ≡iε
(mod 2(1+i))だから、
あるα∈ℤ[i]が存在してβ=iε+2(1+i)α。
定理15.3.2により、μ,ν∈ℤとしてφ(2(1+i)α·ϖ/2)=φ((μ+νi)ϖ)=0,
φ‘(2(1+i)α∙ϖ/2)=±1なので、命題15.3.1の加法公式により
φ(βϖ/2)=φ([iε+2(1+i)α]ϖ/2)=±φ(ϖiε/2)=±iεφ(ϖ/2)=iε’
(ε’∈{0,1,2,3})
ただし(15.9)と(15.24)によりφ(iεz)=iεφ(z)を用いた。
演習問題9
ℤ[i]はUFDで、その分数体はℚ[i]なので、定理A.5.8により
ℚ[i][u]においてgcd(Pβ(u),Qβ(u))=1。
故にあるR(u),S(u)∈ℚ[i][u]が存在して、R(u)Pβ(u)+S(u)Qβ(u)=1。
この式はℚ[i]の任意の拡大体で成り立つから、
Pβ(u4), Qβ(u4)がℚ[i]のある拡大体において共通根αを持つと仮定すると、
0=R(α4)Pβ(α4)+S(α4)Qβ(α4)=1となり矛盾。
したがって、Pβ(u4), Qβ(u4)はℚ[i]のいかなる拡大体においても共通根を持たない。
Qβ(0)≠0だから、0はQβの根でないので、uPβ(u4), Qβ(u4)も、
ℚ[i]のいかなる拡大体においても共通根を持たない。
演習問題10
(15.40)は(15.50)で使うので、他のことから示すのだと思うが・・・。
演習問題11
A'(u)=udA(1/u), B'(u)=udeg(B)B(1/u)についてgcd(A',B')=g(u)
とすると、
A'(u)=A1(u)g(u), B'(u)=B1(u)g(u), gcd(A1,B1)=1と書ける。
A'(1/u)=
u-dA(u)=A1(1/u)g(1/u)で、d=deg(A1)+deg(g)なので、
A(u)=udA1(1/u)g(1/u)=(udeg(A1)A1(1/u))(udeg(g)g(1/u)),
同様にB(u)=(udeg(B1)B1(1/u))(udeg(g)g(1/u)),
となり、udeg(A1)A1(1/u), udeg(B1)B1(1/u), udeg(g)g(1/u)∈F[u]だから、
gcd(A,B)=udeg(g)g(1/u)。
ところがAとBは素だから、deg(g)=0でなければならない。
Aは0でない多項式だからλ∈F*としてg=λで、
deg(A1)=d, deg(B1)=deg(B)。
するとA(u)/B(u)=B(1/u)/A(1/u)=ud-deg(B)B1(u)/A1(u)だから、
d>deg(B)ならA(u)A1(u)=ud-deg(B)B(u)B1(u)で、
左辺の次数は2d、右辺の次数はd+deg(B)<2dで矛盾。
d<deg(B)でも同様に矛盾が導かれるので、d=deg(B)。
するとA(u)/B(u)=B1(u)/A1(u)だからA(u)A1(u)=B1(u)B(u)で、
gcd(A,B)=1かつgcd(A1,B1)=1だから、A(u)=B1(u)かつB(u)=A1(u)。
よって udA(1/u)=A'(u)=λA1(u)=λB(u)。
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