ユークリッド 原論 |
相似な直線図形とは角がそれぞれ等しく
かつ等しい角を挟む辺が比例するものである。
つまり直線図形のみについて、辺の比例が天下り的に与えられる比例派。
上の定義を元にした、三角形の相似3条件の証明の主な材料は、
特に平行線と三角形の等積変形の関係が、
三角形の相似条件の証明に重要な役割を果たす。
まず「相似なら三角相等・三辺比相等・二辺比夾角相等」は、
定義6-1により明らか。
「高さを固定した三角形の面積は底辺に比例する」を証明(略)。
「右図でDE∥BCならAD/DB=AE/EC。
逆にAD/DB=AE/ECならDE∥BC」
証明)
命題6-1により△AEBにおいて△ADE/△BDE=AD/DB (1)、
△ADCにおいて△ADE/△CDE=AE/EC (2)である。
DE∥BCなら命題1-37により△BDE=△CDEだから、
△ADE/△BDE=△ADE/△CDE。(1)(2)によりAD/DB=AE/EC。
逆にAD/DB=AE/ECなら(1)(2)により△ADE/△BDE=△ADE/△CDEなので、
△BDE=△CDEだから、命題1-39によりDE∥BC。(証明終)
証明)三角相等な2つの三角形を適当に移動して、
ただし∠A, ∠B, ∠ACBが∠D, ∠DCE, ∠Eに
それぞれ対応する等しい角である。
さらに直線BAと直線EDの交点をFとする。
∠DCE=∠Bより同位角が等しいので命題1-29によりBF∥CDだから、
命題6-2によりBC/CE=FD/DE
(1)。
∠CED=∠BCAより同位角が等しいので命題1-29によりAC∥FEだから、
命題6-2によりBC/CE=AB/AF
(2)。
(1)(2)よりFD/DE=AB/AF
(3)
四角形ACDFは平行四辺形だから命題1-34により
FD=AC、AF=DC。これらを(3)に代入してAC/DE=AB/DC。
よってAB/AC=DC/DE。
同様に適当に三角形を移動することで、他の辺の比例関係も示される。(証明終)
この命題6-4を元にして、
条件を満たす三角形1、三角形2について、
三角形1と三角相等で一つの辺が三角形2と共通な三角形3を考え、
三角形2と三角形3の合同を証明することで、
三角形1と三角形2が三角相等であることを証明する(略)。
平行線の性質を過不足なく使った、すっきりとした論理だと思う。
三角形の等積変形を基礎にしている点で、中2初等幾何からの流れにも乗せられる。
まあ面積を基盤にしている点で、測度をそもそもどう導入するのかとか、
ややこしいことを言い出したらとたんに弱くなるが、
むしろ中学数学では三角形の面積は、
当然の事項として生徒は受け入れていると思っていいから、これで十分強力。
ただ、そもそも最初の相似の定義6-1が、「同じ形」概念と乖離しているので、
ユークリッドの言う「相似」が、生徒の中でこなれないだろう。
引き続き問題演習を沢山やって、なんとなくでいいから納得させないといけない。
あと立体直線図形の相似(定義11-9)については、
平面図形の相似を元にした複雑な定義になっていて、
ユークリッド11巻後半~12巻の立体図形の相似の運用は、恐ろしく複雑。
12巻の取り尽くし法の運用に定義11-9は便利だったのかもしれないが、
今時、いきなり取り尽くし法でもないしなあ。
それでなくても3次元ユークリッド空間の体積測度については、
突っ込むとややこしい(ヒルベルト第3問題やらバナッハ・タルスキーの定理やら)し、
ユークリッドそのままの立体理論は中学レベルでは到底手が出せない。
てか11巻以降って、ホントに19世紀までの中等教育の幾何学教授で使えてたんか?
ただでさえ10巻の無理数理論で子供たちは息も絶え絶えだったろうに。
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