古来より多くの人がその美しさに感動してきた、
近所の中3に教えている数学も円に入ったので、
正五角形の作図まで時間があったらやりたいなあと思い、一応まとめ。
ただ受験勉強もあるから、やるのは受験のあとかなあ。
中学数学は、ユークリッドに基本沿っているとは言っても、
ユークリッドとは公理も違うし、
数論や代数式の変形は普通に使えるわけだから、
簡略化出来るところは簡略化した。
それでも結構長い・・・。
なお中学幾何について、
円周角の定理・三平方の定理・相似については、
中3の教科書にあるので既知とする。
接弦定理・方冪定理は以下で証明する。
方冪定理も接弦定理も今の中3の
(少なくとも東京書籍の)教科書にないのね・・・。
まあ方冪定理は使い所があまりない、
というか方冪定理とわざわざ銘打たんでも、
相似使えばいいだけの局面が多いから、余り重要とは思わない。
でも接弦定理は、去年までの中2の教科書には、
発展的内容としてではあるが一応書いてあったのに、
新課程ではなぜか、高1の数Aでの選択履修になったらしい。
まあ高校にもなって接弦定理をやってる暇があったら、
他にやるべきことが山とあると思うので、
好き好んで履修されるとも余り思えないなあ。
線分の黄金比内分点の存在(ユークリッドでは命題2-11)
補題1:
与えられた線分ABを内分する点Eで、AE2=AB·EBとなる点が存在して、
コンパスと定規で作図可能。
証明
AB=aとする。
AからABに立てた垂線上に、
AC=a/2 (1)
なる点Cをとり△ABCをつくる。三平方の定理により
である。
BC>a>a/2=ACなので、直線CAにおいて、
CからCD=BCとなる点Dを、
線分CD上にAがあるようにとることが出来る。
AD=xとすれば(1)(2)により
x=CD-AC=BC-AC=√5a/2-
a/2=(√5-1)a/2 (3)。
(√5-1)/2<1だからx<a=ABなので、
AB上にAD=AEとなる点Eをとることができる。
このとき(3)より2x+a=√5a
両辺を2乗して4x2+4ax+a2=5a2
整理してx2=a(a-x) (4)
a=AB, x=AD=AEによりa-x=EBだから、
(4)はAE2=AB·EBとなる。
(証明終)
円の接線と半径の直交性(ユークリッドでは命題3-16と、その系)
補題2:
円O外の点Aと円O上の点Tを通る直線ATについて、
OT⊥ATのとき、かつこの時に限り、ATは円Oに接する。
証明
OT⊥ATとする。
直線AT上にTと異なる点Sをとると、
OT⊥ATから△OTSはOSを斜辺とした直角三角形なので、
三平方の定理によりOS2=OT2+ST2。
ST>0だからOS2>OT2。OS>0,OT>0よりOS>OTとなる。
OTは円Oの半径だから、Sは円Oの外部にあるので円O上になく、
したがってSはATと円Oの共有点でない。
SはAT上の任意の点だから、直線ATと円OはTのみを共有する。
よってATは円Oに接する。
OT⊥ATでないとし、Oから直線ATへの垂線の足をMとする。
△OMTはOTを斜辺とする直角三角形だから、
上と同様にOT>OMなのでMは円Oの内部にある。
△OMTと△OMSにおいてOMは共通、
∠OMT=∠OMS=∠Rだから、
(1)と併せて二辺夾角相等となるので△OMT≡△OMS。
対応する辺は等しいからOT=OS。
故にOSは円Oの半径だから、Sは円O上にある。
Sは直線AT上の点でもあるので、
直線ATと円Oは少なくとも2点T,Sを共有するから、
直線ATは円Oの接線ではない。
(証明終)
なおユークリッド3巻では背理法を使った、上とは違った証明。
接弦定理(ユークリッドでは命題3-32)
定理1:
円O外の点Aから円Oへの接線を一つとり、接点をTとする。
Tを通り円Oと交わる直線と、円OのT以外の交点をSとする。
(本当は弧STがどちら側の弧なのか、
設定をくどくど言わなければならないが、
右図の通りってことでバッサリ略)
証明
TからATへの垂線を引き、円OとのT以外の交点をBとする。
補題2により弦BTはOを通るから円Oの直径。
故にSを含まない側の弧BTは半円弧だから、
円周角の定理から∠BST=∠R。
△BSTは直角三角形だから、∠SBT=∠R-∠STB (1)。
BT⊥ATだから∠STA=∠R-∠STB (2)。
(1)(2)により∠SBT=∠STA (3)。
∠SBTは弧STの上に立つ円周角なので、
円周角の定理により弧STの上に立つすべての円周角に等しいから、
(3)により∠STAもそうである。
(証明終)
円の接線に関する方冪定理(ユークリッドでは命題3-36)
定理2:
円Oの外部の点Aから、円Oに一つの接線を引き、接点をTとする。
またAから円Oと二点で交わる任意の直線を引き、
円との交点のうちAから遠い側をB, 近い側をCとする。
このときAT2=AB·AC。
証明
△ATCと△ABTにおいて、∠Aは共通、
また定理1(接弦定理)により∠ATC=∠ABTだから、
△ATCと△ABTは二角相等なので相似。
故に対応する辺の比は全て等しいので、AT/AB=AC/AT。
これよりAT2=AB·AC。
(証明終)
中学数学と違い、ユークリッド3巻の時点では、
相似(6巻)がまだ導入されていないので、
ユークリッドではもっと長い証明になっている。
円の接線に関する方冪定理の逆(ユークリッドでは命題3-37)
定理3:
円Oの外部の点Aから、円Oと二点で交わる任意の直線を引き、
円との交点のうちAから遠い側をB, 近い側をCとする。
また、Aから円O上の点Tにもう一つの直線を引く。
もしAT2=AB·ACなら、ATは円Oに接する。
Aから円Oに接線を引き、接点をSとする。
方冪定理によりAS2=AB·AC。
仮定によりAT2=AB·ACだから、AT2= AS2となり、
AS>0、AT>0なのでAT=AS (1)。
△AOTと△AOSにおいて、
円Oの半径なのでOT=OS、またAOは共通だから、
(1)と併せて三辺相等となるので△AOT≡△AOS。
したがって対応する角は等しいから、
∠ATO=∠ASO (2)。
ASは円Oの接線なので、∠ASO=∠Rだから∠ATO=∠R。
したがって補題2によりATは円Oに接する。
(証明終)
と、ここまで材料を揃えて、ユークリッド命題4-10,4-11の証明。
2直角の五等分(ユークリッド命題4-10)
補題3:
頂角が2∠R/5=36°の二等辺三角形は定規とコンパスで作図可能。
証明
任意の与えられた線分ABについて、
ABを半径にAを中心とした円Aを描く。
補題1によりAC2=AB·BC
(1)となる点Cをとることが出来る。
Bから、BD=ACとなる点Dを、円A上にとる。
△ABDにおいて円Aの半径だからAB=ADなので、
△ABDは二等辺三角形。故に∠ABD=∠ADB (2)。
この△ABDが求める二等辺三角形であることを示す。
すなわち∠BAD=2∠R/5を証明すればよい。
△ACDの外接円Eをとる。
(1)からBD2=AB·BCだから、定理3(方冪定理の逆)により、
BDは円Eに接する。
したがって定理1(接弦定理)により
∠CAD=∠CDB (3)。
△ABDと△DBCにおいて、∠Bは共通だから、
(3)と併せ二角相等なので△ABDと△DBCは相似。
△ABDは二等辺三角形だから、△DBCも二等辺三角形となり、
BD=CD
(4)。
(4)と、BD=ACからAC=DCなので、
△CADは二等辺三角形だから∠CAD=∠CDA。
これと(3)を辺々足し、
2∠CAD=∠CDA+∠CDB=∠ADB (5)。
さらに(5)と(2)から∠ABD=2∠CAD (6)。
同じ角なので∠CAD=∠BADだから、
二等辺三角形ABDにおいて(5)(6)より
2∠R=∠BAD+∠ADB+∠ABD=5∠BAD
したがって∠BAD=2∠R/5。
(証明終)
BDが円Eに接するところが本質的に効いているポイントで、
一瞬「ほぇ?」となる美しいところ。
基本ユークリッドの証明に沿ったが、中学数学と違い、
ユークリッド4巻の時点では相似(6巻)がまだ導入されていないので、
ユークリッドではもうちょっと長い。
正五角形の作図(ユークリッドでは命題4-11)
定理4:
円に内接する正五角形は定規とコンパスで作図可能。
証明
補題3により2∠R/5=36°が作図できるので、
4∠R/5=72°も作図できるから、
中心角72°の扇形を円内に5つ書けばよい。
(証明終)
ユークリッド4巻の時点では数論(7巻から)がまだ導入されていないから
中学数学と違って円の内接正多角形と中心角の関係が使えないので、
ユークリッドでは補題3の二等辺三角形の外接円から持っていく、
上よりくどい証明になっている。
なお正五角形の作図については、sin(2∠R/5)= √[(5-√5)/8]を用いて、
上の補題1の作図を応用したもっと速い方法がある。例えばウィキペ。
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