2011-07-22

コックス「ガロワ理論」 8.3節の演習問題


演習問題1
(a)
f=xm-1とするとLの標数は0なのでf'=mxm-1で、f= f'x/m-1だからgcd(f,f')=1
故に命題5.3.2によりfは分離的。

(b)
1fの根である。
x1,x2fの異なる根とすると、(x1x2)m-1= x1mx2m-1=1·1-1=0だからx1x2fの根。
x1-1=1/x1とすると(x1-1)m-1=1/x1m-1=0だから、x1-1fの根。
したがってxm-1の根全体は乗法に関し群を成す。

演習問題2
FLGalois拡大だから、定理7.1.1によりLは、
ある分離多項式fF[x]の分解体なので、fの根をα1,...,αnとしてL=F(α1,...,αn)
また、FF(ζ)xm-1の分解体だから、定理7.1.1によりGalois拡大。
(8.3)式によりL(ζ)=F(α1,...,αn,ζ)=LF(ζ)なので、
8.2節演習問7によりFL(ζ)Galois拡大。

演習問題3
f=xm-1, p次円分多項式をΦp=xp-1+...+x+1とすると、f=(x-1)Φp
fは演習問題1(a)により分離的で、相異なる根は1,ζ,...,ζp-1だから、
ζ,...,ζp-1Φpの根、すなわちi=1,..,p-1に対しΦp(ζi)=0
これより、(8.9)式の左辺=ζ-(p-1)i[(ζi)p-1+...+ζi+1]=ζ-(p-1)iΦp(ζi)=0

演習問題4
(a)
γi,ζiγi,..., ζimi-1γixmi-γimiの相異なる全ての根なので、
σGal(Fi/Fi-1)とするとσはこれらの根の置換を引き起こす、
Fi-1上恒等な自己同型である。ζi FFi-1としてよいので、σ(ζi)=ζiだから、
σγiでの値によって決まる。
すなわち、任意のσに対しあるl (0lmi-1)がただ一つ存在してσ(γi)=ζilγi

(b)
ζimi=1を用いて、σ(γi)=ζi[l]γiである。
σ,τGal(Fi/Fi-1)とし、τ(γi)=ζi[k]γiを任意にとると、
στ(γi)=ζi[k+l]γi=τσ(γi)だからGal(Fi/Fi-1)Abel群で、
σ→[l]が加法群としての/miへの、Gal(Fi/Fi-1)からの準同型を与えることがわかる。

この準同型の核の元σをとれば[l]=0よりσ(γi)=γiだから、
核は恒等な自己同型のみからなるので、σ→[l]11準同型写像。

(c)
Gal(Fi/Fi-1)σ(ζi)=ζiγiとなるσによって生成されるから、
Gal(Fi/Fi-1)は巡回群。o(σ)=miなので、
任意の[l]に対し(b)の準同型はσl→[l]となるから、
(b)11準同型写像は全射。よって同型写像だからGal(Fi/Fi-1)/miCmi

演習問題5
FLGalois拡大なので、FFi-1Lに定理7.3.1を適用して、
Gal(L/Fi-1)Gal(L/F)の部分群だから、定理A.1.1Lagrangeの定理)により
|Gal(L/Fi-1)||Gal(L/F)|を割る。

またFFi-1Lに命題7.1.3を適用してFi-1LGalois拡大。
Fi-1FiGalois拡大だから、定理7.2.5によりGal(L/Fi)Gal(L/Fi-1)なので、
定理7.2.7によりGal(L/Fi-1)/Gal(L/Fi)Gal(Fi/Fi-1)となり、
|Gal(Fi/Fi-1)||Gal(L/Fi-1)|を割る。したがって|Gal(Fi/Fi-1)||Gal(L/F)|を割る。

演習問題6
0in-1として(ζmi/n)n=ζmi=1だから、
1,ζm/n,..., ζm(n-1)/nxn-1n個の相異なる根である。
xn-1L上の分解体はL(ζm/n)だが、n|m, ζLだから、L(ζm/n)=L=L(ζ)
したがってζm/n1の原始n乗根。

演習問題7
(a)
(問題文のi=1,...,pri=1,...,rの誤植)
m=p1...prとする。ζF1の原始m乗根とすると、
ζm/piFは演習問題6により1の原始pi乗根。
逆にi=1,...,rについて1の原始pi乗根をζiFとし、ζ=iζiFとすると、
ζm=1, ζk1 (1km-1)だから、ζ1の原始m乗根。

(b)
(a)のノーテーションのもとで、ζFだから(a)によりζiF
FLGalois拡大だから定理7.1.5により|Gal(L/F)|=[L:F]なので、
pi|Gal(L/F)|を割る。したがってF(8.12)を満たすので、
定理8.3.3の「特別な場合」の証明により、FLは冪根的。

(c)
補題8.3.1によりFL(ζ)Galois拡大で、さらに可解拡大だから、
定理8.3.3Galoisの定理)によりGal(L/F)は可解群。
補題8.3.1によりF(ζ) L(ζ)Galois拡大でGal(L(ζ)/F(ζ))は可解群となるから、
定理8.3.3Galoisの定理)によりF(ζ) L(ζ)は可解拡大。
F(ζ)1の原始m乗根を含むから、(b)によりF(ζ)L(ζ)は冪根的となる。
ζm=1FだからFF(ζ)は冪根的なので、補題8.2.7によりFL(ζ)は冪根的。


演習問題8
(a)
Re(α13)Maximaコマンド
omega:(-1+sqrt(3)*%i)/2;
alpha1:x1+omega^2*x2+omega*x3;
elem:2;
ratsimp(elem([3],realpart(alpha^3),[x1,x2,x3]));
を用いてRe(α13)=σ13-9σ1σ2/2+27σ3/2=-27/2q
またIm(α13)=(3√3/2)(x12x3-x22x3-x1x32+x2x32-x12x2+x1x22)
=(3√3/2)(x2-x1)(x3-x2)(x3-x1)=3√3√Δ/2なので、α13=27/2[-q+√(-Δ/27)]

写像α13→(23)·α13は、x2x3を、x3x2を代入する求値写像なので、
定理2.1.2により環準同型。
Re(α13)は対称式なのでこの写像に対し不変で、
Im(α13)は交代式に比例するから命題2.4.1によりIm(β13)=-Im(α13)
したがってβ13=27/2[-q-√(-Δ/27)]だからβ1=3{1/2[-q-√(-Δ/27)]}を得る。

(b)
α1=x1+ω2x2+ωx3, β1=x1+ωx2+ω2x3, σ1=x1+x2+x3を、
x1,x2,x3について解いて(8.15)を得る。

2011-07-19

コックス「ガロワ理論」 8.2節の演習問題

演習問題1
(a)
7.3節演習問題8(a)で示した。L=(ζ7+ζ7-1)である。

(b)
7.3節演習問題8(a)により、L=(ζ7+ζ7-1)である。
ζ7+ζ7-1(ζ7)だからL(ζ7)。したがってL(ζ7)
ζ77=1より拡大(ζ7)は定義8.2.1を満たすので、(ζ7)は冪根的。

演習問題2
Lが冪根的なら定義8.2.1によりあるγLmが存在して、
L=(γ), γmである。m<3なら補題4.1.3により、
γ上の最小多項式の次数が2次以下となるが、
これは7.3節演習問題8(a)により[L:]=3であることと矛盾するからm≥3

演習問題3
(a)
K1L, K2Lだから、K1,K2を含むLの部分体は少なくともLが存在する。
K1,K2を含むLの部分体全体を{Li}とし、K=i Liとすれば、
全てのiに対しKLiかつK1K, K2K

k1,k2Kとする。全てのiに対しk1,k2Liで、各Liは体だから、
k1,k2の和、積、加法・乗法の逆元も全てのLiの元となるので、
それらはKの元になる。また明らかに0,1Kなので、Kは体。
したがって、KK1,K2を含むLの最小の部分体だからK=K1K2

(b)
K=F(α1,...,αn,β1,...,βm)とすると、Kは体でK1K, K2Kだから、
(a)によりK1K2K
kKとすると、kα1,...,αn,β1,...,βmF係数有理式で表される。
K1,K2を含む任意の体Mにおいて、α1,...,αn,β1,...,βmMだからkMである。
したがってK1,K2を含む全ての体の共通部分にkは含まれるから、
(a)によりkK1K2となりKK1K2
以上によりK=K1K2

演習問題4
(a)
FKGalois拡大だから命題7.1.7(a)を満たす。
LK'が、FK'Galois拡大となる拡大だったとすると、
FK'は有限次正規拡大でαLK'だから、hF[x]L[x]K'上完全分解する。
したがってあるK''K'が存在してK''hの分解体となり、
5.1.7によりL上恒等写像であるような体の同型K''Kが存在する。
K''K'だからこの同型はK'の中への、体の準同型となり、
命題7.1.7(b)が満たされる。したがって、KLF上のGalois閉包である。

(b)
hは命題4.1.5によりF上の既約多項式で、Khの分解体だから、
命題6.3.7によりGal(K/F)は可移。
σGal(K/F)とすれば、σhの根α1を根αiへ可移に移すから、
FLK におけるL=F(α1)の共軛体はσL=σF(α1)=F(αi)

演習問題5
(a)
iについての数学的帰納法で示す。
i=0のときF0=FK2=F0'だからFiFi'
Fi=F0(γ1,...,γi)Fi'=F0'(γ1,...,γi)と仮定すると、
Fi+1=F0(γ1,...,γi)(γi+1)F0'(γ1,...,γi)(γi+1)=F0'(γ1,...,γi+1)= Fi+1'
したがって全てのi=0,...,nに対しFiFi'

(b)
(8.4)式によりFn'=K2(γ1,...,γn)なのでK2Fn'
FK2だからF(γ1,...,γn)=K1Fn'
故に定義8.2.5と演習問題3(a)によりK1K2Fn'

kFn'=K2(γ1,...,γn)なら、kγ1,...,γnK1K2係数有理式で表されるから、
kFn'を含む任意の体の元である。したがって演習問題3(a)によりFn'K1K2
したがってFn'=K1K2

演習問題6
FLは冪根的だから、体の列F=F0F0(γ1)F0(γ1,γ2)...F0(γ1,...,γn)=Lが存在して、
あるmi>0に対しγimiF0(γ1,...,γi-1)
σF上恒等なMの自己同型だから、
σF0=F0σF0(γ1)=F0(σ(γ1))... σF0(γ1,...,γn)=F0(σ(γ1),..., σ(γn))は体の列となり、
γimiF0(γ1,...,γi-1)よりσ(γn)miF0(σ(γ1),..., σ(γi))となるので、
この列は定義8.2.1を満たすから、FσLは冪根的。

演習問題7
FK1Galois拡大だから有限次拡大。
定理7.1.1によりK1に根を持つF上の分離多項式f1は、
α1,...,αnK1f1の根とするとf1=(x-α1)... (x-αn)K1上完全分解し、
K1f1の分解体となるので、K1=F(α1,...,αn)
同様に、K2に根を持つF上の分離多項式f2は、
β1,..., βmK2f2の根としてf1=(x-β1)... (x-βm)K2上完全分解し、K2=F(β1,..., βm)

α1,...,αn,β1,..., βmのうち異なるものをγ1,..., γrとする。
(8.3)式によりK1K2=F(γ1,..., γr)であるから、FK1K2は有限次拡大。
K1K2に根を持つF上の分離多項式f=(x-γ1)... (x-γn)は、
K1K2上完全分解するから、定理7.1.1によりFK1K2Galois拡大である。