2011-08-10

コックス「ガロワ理論」 8.4節の演習問題


演習問題1
Abel群の部分群は全て正規部分群である。
GCp/pなら明らかにGは部分群を持たないのでGは単純群。
逆にAbelGが単純群とする。Gは非自明だから、
eでない元gを少なくとも一つ含む。
gの生成する巡回群<g>は位数o(g)Gの正規部分群だが、
Gは単純だから<g>=Gでなければならない。したがってGCo(g)/o(g)
m|o(g)とすると<gm>Gの正規部分群となるから、<gm>=Gまたは<gm>={e}
すなわちm=1またはm=o(g)しかありえないのでo(g)は素数。
よってある素数pに対しo(g)=p GCp/p

演習問題2
Snはの任意の元は互換の積として表され、AnSnは偶数個の互換の積からなる。
2個の互換の積(ij)(kl)を考える。ij, klである。

(i) i,j,k,l4つがすべて異なる場合。
(A.2)式から(ijk)=(jki)=(ji)(jk), (jkl)=(klj)=(kj)(kl)により
(ijk)(jkl)=(ji)(jk)(kj)(kl)=(ij)(kl)

(ii) i,j,k,l3つが異なり、1組等しい組がある場合
ij, klだから、以下の場合で尽くされる。
i,j,kは異なり、i=lのときは(ij)(kl)=(ij)(ki)=(ij)(ik)=(ikj)
i,j,lは異なり、i=kのときはklを書き替えればよい。すなわち(ij)(kl)=(ilj)
i,j,kは異なりj=lのときや、i,j,lは異なりj=kのときは、
ijを書き換えれば上の場合に帰着される。

(iii) i,j,k,lのうち2つずつが等しい場合
ij, klだから、i=k,j=lまたはi=l,j=k
いずれにせよ(ij)(kl)=(ij)(ij)=(1)

n≤2なら(iii)の場合しか起こらないので、2個の互換の積は常に恒等置換。
n≥3なら2個の互換の積は、3-サイクルの積または恒等置換として表現できる。
Anは偶数個の互換の積からなるから、An3-サイクルによって生成される。
i,j,k,lij, klである以外は任意だから、Anは全ての3-サイクルを含む。

演習問題3
(c) ((8.21))を先に証明し、(8.21)式を用いて(a)(b)を示すほうが簡単。

(c)
HTMLの制約のため、(1234)(ijkl)へ移す置換のCauchy記法を、
((1234)(ijkl))等と書くことにする。

θ=((1 2...n)(θ(1) θ(2)...θ(n))とし、
必要なら置換される文字の書き順序を適当に入れ替えて、
θ(i1 i2...il) θ-1
=((1 2...n)(θ(1) θ(2)...θ(n))) ((1 2...i1...i2...il...n)(1 2...i2...i3...i1...n)) ((θ(1) θ(2)...θ(n)) (1 2...n))
=((θ(1) θ(2)...θ(i1)...θ(i2)...θ(il)...θ(n)) (θ(1) θ(2)...θ(i2)...θ(i3)...θ(i1)...θ(n)))
=(θ(i1) θ(i2)...θ(il))

さらに任意の置換σ共通部分のないサイクルの積に分解して
σ=(i1 i2...il)(j1 j2...jm)...(k1 k2...kr)とすれば、
θσθ-1=θ(i1 i2...il) (j1 j2...jm)...(k1 k2...kr)θ-1
=θ(i1 i2...il)θ-1θ(j1 j2...jm) θ-1θ... θ-1θ(k1 k2...kr)θ-1
=(θ(i1) θ(i2)...θ(il))(θ(j1) θ(j2)...θ(jm))... (θ(k1) θ(k2)...θ(kr))
だから、
σ=((1 2...n)(σ(1) σ(2)...σ(n)))Cauchy記法で書けば
θσθ-1=((1 2...n)(θ(σ(1)) θ(σ(2))...θ(σ(n))))である。

(a)
(8.21)式より
σ-1(j1 j2 j3)-1σ(j1 j2 j3)=(σ-1(j1) σ-1(j2) σ-1(j3))-1(j1 j2 j3)
=(σ-1(j3) σ-1(j2) σ-1(j1))(j1 j2 j3)
j{j1,j2,j3}に入っていないので、(j1 j2 j3)によってjは置換されず、
σ(j){j1,j2,j3}に入っていないので、(σ-1(j3) σ-1(j2) σ-1(j1)) によってjは置換されない。
以上により、σ-1(j1 j2 j3)-1σ(j1 j2 j3)jを固定する。

(b)
σ=(i1 i2 i3 i4...)(...)...とすると、(8.21)式より
σ-1(i2 i3 i4)-1σ(i2 i3 i4)=(σ-1(i4) σ-1(i3) σ-1(i2))(i2 i3 i4)
=(i3 i2 i1)(i2 i3 i4)=(i2 i1 i3)(i2 i3 i4)
ここで(A.2)式を用いて
σ-1(i2 i3 i4)-1σ(i2 i3 i4)=(i2 i3)(i2 i1)(i2 i4)(i2 i3)= (i2 i3)(i2 i4 i1)(i2 i3)-1
=((i2 i3)(i2) i4 i1)=(i3 i4 i1)=(i1 i3 i4)
となり(8.18)式を得る。

またσ=(i1 i2 i3...)(i4 i5...)...として(8.21)式と(A.2)式を用いて、
σ-1(i2 i3 i5)-1σ(i2 i3 i5)=(σ-1(i5) σ-1(i3) σ-1(i2))(i2 i3 i5)=(i4 i2 i1)(i2 i3 i5)
=(i2 i1 i4)(i2 i3 i5)=(i2 i4)(i2 i1)(i2 i5)(i2 i3)=(i2 i3 i5 i1 i4)=(i1 i4 i2 i3 i5)
となり(8.19)式を得る。

さらにσ=(i1 i2)(i3 i4)(...)(...)...として(8.21)式と(A.2)式を用いて、
σ-1(i2 i3 i4)-1σ(i2 i3 i4)=(σ-1(i4) σ-1(i3) σ-1(i2))(i2 i3 i4)=(i3 i4 i1)(i2 i3 i4)
=(i3 i4 i1)(i4 i2 i3)=(i3 i1)(i3 i4)(i4 i3)(i4 i2)=(i1 i3)(i2 i4)
となり(8.20)式を得る。

演習問題4
明らかにH1H2H2の部分群である。
さらにgG, h1H1を任意に取ると、H1Gにより g -1h1gH1だから、
とくにh2H2, hH1H2とすればh2-1hh2H1
一方H2Gの部分群なのでh2-1hh2H2だから、h2-1hh2H1H2
したがってH1H2 H2

演習問題5
Hの元を互いに共通部分のないサイクルに分解したとき
3サイクルが含まれる元が存在したとすると、
定理8.4.3の証明の場合2と同様にして、
Hは全ての3サイクルを含むことが証明され、
したがってH=AnとなりH An={e}と矛盾するから、
Heでない元は全て、互いに独立な2サイクルの積である。

Hが偶数個の互換の積からなる元を含めばH An={e}と矛盾するから、
Heと、奇数個の互換の積からなる、符号-1で位数2の元のみからなる。
さらにH2つの異なる元σ,τ (o(σ)=o(τ)=2, sgn(σ)=sgn(τ)=-1)を持てば、
στH, sgn(στ)=1となるのでστe, στH Anとなるから、H An={e}と矛盾。
故にHの自明でない元は高々一つでなければならないから、H={e,σ}

演習問題6
(a)
KG/Hとする。自然準同型π: GG/H (ggH)を考える。
 (8.1)式で定義されるπ-1を用いて8.1節演習問題3により
π-1(K)Hを含むGの部分群である。
kπ-1(K)とすると任意のgG について、
KG/Hよりπ(gkg-1)=π(g)π(k)π(g)-1Kだから、
gkg-1π-1(K)となるのでπ-1(K) Gとなる。
ところがHπ-1(K)と、HGGの位数最大の正規部分群であることから、
H=π-1(K)でなければならない。
8.1節演習問題3によりKer(π)=Hだから、K=π(H)={eH}G/Hの単位元となり、
すなわちKは自明となる。故にG/Hは単純群。

(b)
(a)G=G0, H=G1とする。|G0|>|G1|である。
G1自身と異なるG1の位数最大の正規部分群をG2とすれば、
(a)と同様にしてG1/G2は単純群となり、|G1|>|G2|である。
以下同様に、正規部分群が自明となるまで繰り返す。
|G0|は有限だから、この過程は有限回で必ず終了し、
Gの組成列{e}=GnGn-1... G1G0=Gが得られるので、
Gは組成列を少なくとも一つ持つ。

演習問題7
補題8.4.4と定理8.1.9Feit-Thompsonの定理)の対偶から、
全ての非Abel有限単純群は偶数位数を持つ。

逆に全ての非Abel有限単純群の位数が偶数なら、奇数位数の単純群はAbel群。
演習問題1によりこのような群は奇素数位数の巡回群に同型で、
命題8.1.5により可解。

Gを奇数位数の群とし、演習問題6の方法に基づき組成列を作ると、
定理A.1.1Lagrangeの定理)によりGの組成因子は全て奇数位数の単純群となる。
故にGの組成因子は全て可解だから、8.1節演習問題8によりGは可解となり、
定理8.1.9Feit-Thompsonの定理)が従う。

演習問題8
/4C4<σ> (o(σ)=4), /2×/2D4={e,τ,υ,τυ}(o(τ)=o(υ)=2, τυ=υτ)である。

|C4|=4だから自明でない最大の正規部分群は位数2をもち、
<σ2>C2がこの性質を満たすから、演習問題6により
C4の組成列は{e}C2C4。これより組成因子はC4/C2C2 C2/{e}C2

|D4|=4だから自明でない最大の正規部分群は位数2をもち、
<τ>C2あるいは<υ>C2がこの性質を満たすから、演習問題6により
C4の組成列は{e}C2D4。組成因子はD4/C2C2 C2/{e}C2

以上により、/4 /2×/2は同じ組成因子を持つ。

2011-08-06

シルヴァーマン 「はじめての数論」第3版 第1章練習問題

※MathJaxの数式表示に少し時間がかかります。

1.1
三角数の一般項を$T_n=n(n+1)/2$、平方数の一般項を$S_m=m^2$とする。$T_n=S_m$となる自然数は、不定方程式$n(n+1)/2=m^2$の自然数解$n=n_i, m=m_i$ ($i=1,2,3,..$)。$T_1=S_1=1$より$n_1=1$, $m_1=1$、$T_8=S_6=36$より$n_2=8$, $m_2=6$である。探索すると$T_{49}=S_{35}=1225$より$n_3=49$, $m_3=35$、$T_{288}=S_{204}=41616$より$n_4=288$, $m_4=204$。無数にありそうな気はする。

本を一周読んだ後の記述を使うと、$n(n+1)/2=m^2$より$x=2n+1$, $y=2m$とおけば、Pell方程式(第30章)$x^2-2y^2=1$が得られる。この最小解は$x=x_1=3$, $y=y_1=2$で、定理30.1により、全ての解は$x_k+y_k√2=(x_1+y_1√2)^k$, $k=1,2,3,...$で与えられる。$x_1$は奇数、$y_1$は偶数。また$x_{k-1}$が奇数、$y_{k-1}$が偶数なら、$x_k+ y_k√2=(x_1+y_1√2)(x_{k-1}+ y_{k-1}√2)$より$x_k= x_1x_{k-1}+2y_1y_{k-1}$は奇数、$y_k= y_1x_{k-1}+x_1y_{k-1}$は偶数となるから、全ての$x_k$が奇数、全ての$y_k$が偶数となるので、$n_k=(x_k-1)/2$, $m_k=y_k/2$によって$T_n=S_m$となる自然数の無数の組が得られる。

1.2
$i$番目の奇数までの奇数の和を$S_n=\sum_{i=1}^n (2i-1)$として、$S_1=1, S_2=4, S_3=9, S_4=16, S_5=25,...$となり平方数の列になりそう。実際 $S_n=\sum_{i=1}^n (2i-1)=2\sum_{i=1}^n i-n=2n(n+1)/2-n=n^2$で確かに平方数である。

1.3
$p$が奇素数なら、$p, p+2, p+4$のいずれかは3の倍数だから、その3の倍数が素数3自身の場合、すなわち3,5,7の場合しかない。$p=2$なら$p+2=4$, $p+4=6$は素数でない。したがって、三つ子素数は3,5,7の1組しかない。

1.4
(a)
$N^2-1=(N+1)(N-1)$だから、$N-1=1$すなわち$N=2$の場合しかない。このとき$N^2-1=3$で素数だから、この1つの場合のみ。

(b)
2, 7, 23, 47,....無数にありそうな気はする。

(c)
$N^2-3$については13, 61, 97,...無数にありそうな気はする。$N^2-4$については$N^2-4=(N+2)(N-2)$より$N-2=1$すなわち$N=3$の場合しかない。このとき$N^2-4=5$で素数だから、この1つの場合のみ。

(d)
$a$が平方数でないこと、と予想される。

1.5
$S=1+2+3+...+n$とする。

(i)$n$が偶数の時
$n=2m$として、$S=1+2+3+...+m+(m+1)+...+n$の第$i$項と第$(n-i+1)$項の和($i=1,2,...,m$)は、$i+n-i+1=n+1$なので、各$i=1,2,...,m$について和を取れば、$S=(n+1)m=n(n+1)/2$。

(ii)$n$が奇数の時

$n=2m+1, m=(n-1)/2$として、$S=1+2+3+...+m+(m+1)+(m+2)+...+n$の第$i$項と第$(n-i+1)$項の和($i=1,2,...,m$)は、$i+n-i+1=n+1$で、第$m+1$項は$m+1=(n-1)/2+1=(n+1)/2$。したがって、各$i=1,2,...,m$についての和をとり、第$m+1$項を加えると、$S=(n+1)m+(n+1)/2 =n(n+1)/2$。