2011-12-19

コックス「ガロワ理論」 12.1節の演習問題2

演習問題13
σ=(12...n)ならσ·α=ζ-1αだからσ·(αn)=(σ·α)n=(ζ-1)nαn=αnなので、
<(12...n)>H(αn)
逆にτH(αn)とすると、τ·(αn)=(τ·α)n=αnだから、
τ·αxn-αnK[x]の根の1つで、ζ1の原始n乗根なので、
あるj (0jn-1)に対しτ·α=ζjα=σ-j·αとなるから、
τ=σ-j<(12...n)>。したがってH(αn)<(12...n)>なので、H(αn)=<(12...n)>

演習問題14
(a)
αSnを任意とし、k (2kn) 1に置換されるものとすると、
αの共通部分のないサイクルへの分解はα=α1(k1a1...ap-2)である
ただしα1(k1a1 ... ap-2)とは独立なサイクルの積、p=o((k1a1 ... ap-2))
また2 a1,...,ap-2nで、a1,...,ap-21でもkでもない。
(A.2)を使ってα=α1(kap-2)...(ka1)(k1)=σ1(kap-2)...(ka1)(1k) (1)

τ=(12 ...k...n)k<(12...n)>を取ると、τkによって一意に決まる。
τによって1k へ置換されるので、
τの共通部分のないサイクルへの分解はτ=(kt1... tq-21)τ1である(2 t1,...,tq-2n)
ただしτ1(kt1... tq-21)とは独立なサイクルの積、q=o((k1a1 ... aq-2))
また、2 t1,...,tq-2nで、t1,...,tq-21でもkでもなく、
(A.2)を使ってτ=(k1)(ktq-2)...(kt1)c1=(1k)(ktq-2)...(kt1)c1 (2)

(1)(2)により、σ=ατ=α1(kap-2)...(ka1)(1k)(1k)(ktq-2)...(kt1)τ1
=α1(kap-2)...(ka1)(ktq-2)...(kt1)τ1で、1が関係しないので、
ατ1を固定する置換である。
τ<(12...n)>だからα<(12...n)>=ατ<(12...n)>=σ<(12...n)>
すなわち、任意のαに対し1を固定する置換σ=ατが一意に決まり、
α<(12...n)>=σ<(12...n)>となる。

(b)
(a)により、定理12.1.4の証明でσ·fに現れる、
剰余類の代表元σとして、1を固定する置換を常に取ることができるから、
Lagrangeの分解多項式において1は置換されないように出来る。

演習問題15
(a)
αjの式を代入するだけ。

(b)
与式はΦp(ζpm)に等しい。
ζp1の原始p乗根で、pは素数なので、m≢0 (mod p)ならgcd(p,m)=1だから、
9.1節演習問題7(a)により、ζpm1の原始p乗根。したがってΦp(ζpm)=0
m≡0 (mod p)ならζpm =1なので、Φp(ζpm)=Φp(1)=p

(c)
(b)により、(a)で証明した式の右辺の和のうち、和で消えないのはl=iの項。
αp=σ1より、σ1+1jp-1 ζp-j(i-1)αj=1jp xi=pxiとなり、所望の公式を得る。

演習問題16
(a)については、fK=F(σ1,...,σn)なら明らかにfSnの作用のもとで不変。
逆にfL=F(x1,...,xn)Snの作用のもとで不変とする。
Kの単数、すなわち定数函数aKSnの作用のもとで不変だから、
定理12.1.6によりfK(a)=K。よって(a)が証明された。

(b)については、τAnなら、sgn(τ)=1なので、命題2.4.1によりτ·Δ=√Δ
したがってf=A+BΔ (A,BK)ならτ·f = f
逆にfAnの作用のもとで不変とする。
命題2.4.1によりΔAnの作用のもとで不変だから、
定理12.1.6によりfK(Δ)
ΔKなのでΔx2-ΔK[x] の根だからK上代数的、
故に命題4.1.15により、K(√Δ)=K[√Δ]なのでfK[Δ]となり、
f=A+BΔ (A,BK)となる。よって(b)が証明された。

演習問題17
fgが同類函数なら、定理12.1.6によりgK(f)だからK(f)=K(g)
逆にK(f)=K(g)ならgK(f)だから、
σ·f=fとなるすべてのσSnに対しσ·g=gとなるので、
fgは同類函数。

演習問題18
(a)
σ1=0, σ2=2, σ3=4, σ4=2により、(12.10)y3-2y2-8yとなる。

(b)
(a)により(12.12)t1=2(-σ2)=2√(-2)だから、
(12.11)x2=1t1±t1(x+2σ3/t12)/2=±√(-2)(x-1)
これを解いて復号+の式からx=√2i/2±√(-2-4i√2)/2
復号-の式からx=-√2i/2±√(-2+4i√2)/2を得る。

(c)
(b)によりt1=2i√2
y3-2y2-8yの根は0,-2,4だから、y2=-2, y3=4とおいてt2=4i, t3=2√2
これより(12.17)においてt1t2t3=8σ3=32となる組は、
x1=(-t1+t2+t3)/4=√2/2+(2-√2)i/2,
x2=(t1-t2+t3)/4=√2/2+(-2+√2)i/2,
x3=(t1+t2-t3)/4=-√2/2+(2+√2)i/2,
x4=(-t1-t2-t3)/4=-√2/2+(-2-√2)i/2

(b)において-2-4i√2=2(1-i√2)2, -2+4i√2=2(1+i√2)2だから、
(b)の復号+の式はx2, x3に、復号-の式はx1, x4にそれぞれ一致する。

演習問題19
(a)
h,hGについてhH=hHなので、任意のhh1hHに対し、
あるh2=h-1hh1が一意に存在して、hh1=hh2である。
このとき、ghh1ghHに対し、ghh2=ghh1ghHとなるからghHghH
逆の包含関係も全く同様に示されるから、ghH=ghH
故にg·hHは矛盾なく定義される。

(b)
eHの固定部分群をGeHとすると、任意のh1Hに対し、
h1·eH=h1H=H=eHだからHGeH
逆にh2GeHとすると、H=eH=h2·eH=h2Hによりh2HだからGeHH
故にGeH=H

(c)
問題文のgσの写像をφ: GSmとし、φ(g)=σ, φ(h)=τとする。
明らかにφ(eG)=(1)だから、Gの単位元はSmの単位元に移る。
(gh)·giH= h·(g·giH)=h·gσ(i)H=gτ(σ(i))H=gτσ(i)Hにより、
φ(gh)=στだから、φは群準同型。

(d)
nN=Ker(φ)を任意に取る。NGだからgingi-1Nなので、
(gingi-1)·giH=g(φ(gingi-1)(i)H=g(1)(i)H=giH。一方(gingi-1)·giH=ginHだからginH=giH
すなわちあるh1,h2Hが存在してginh1=gih2なので、n=h2h1-1HだからNH

(e)
定理A.1.3(群準同型の基本定理)によりG/N≃Im(φ)Smだから、
定理A.1.1Lagrangeの定理)により、[G:N]=|G|/|N|=|Im(φ)|
Im(φ)Smの部分群だから、|Im(φ)||Sm|=m!を割るので、
[G:N]m!を割る。

(f)
(d)により、Hは部分群N=Ker(φ)を含み、
(e)によりGにおけるNGの指数[G:N]m!=[G:H]!を割る。

(g)
n≥5とし、HSn1<[Sn:H]≤|Sn|=n!なるSnの部分群とする。
NSnだから、定理8.4.6によりN={e}, N=AnまたはN=Snのいずれかである。
またNHだから、|N|≤|H|なので[Sn:N]≥[Sn:H]

(f)により、N={e}のとき[Sn:N]=n!|[Sn:H]!だから[Sn:H]≥nである。
N=Anのとき[Sn:N]=2|[Sn:H]!, [Sn:An]=2≥[Sn:H]だから[Sn:H]=2AnHだからH=An
N=SnのときNHだからH=Snなので、[Sn:H]=1となり1<[Sn:H]に反する。
したがって、定理12.1.10(a)が成り立つ。

n≥5とし、HAn1<[An:H]≤|An|=n!/2なるAnの部分群とする。
定理8.4.3によりAnは単純群だから、
NAnによりN={e}または N=Anのいずれかである。
上と同様にして、N={e}のとき[An:N]=(n!/2)|[An:H]!だから[An:H]≥nである。
N=AnのときNHだからH=Anなので、[An:H]=1となり1<[An:H]に反する。
したがって、定理12.1.10(b)が成り立つ。

演習問題20
H[G:H]=pなるGの部分群とする。
演習問題19(f)により、NG, NHなるNが存在して、[G:N]|p!
ところがNHだから、|N|≤|H|なので[G:N]pだから[G:N]=p
したがって|N|=|H|だからNHよりH=NG。故にHGの正規部分群。

演習問題21
(a)
Sn-1SnSnの部分群で、|Sn-1|=(n-1)!だから[Sn:Sn-1]=n

(b)
D4A4において[A4:D4]=3<4だから、定理12.1.10(b)は成立していない。