2011-07-17

コックス「ガロワ理論」 8.1節の演習問題

演習問題1
(a)
与えられた群はKleinの四元群D4で、
4個の文字のうち2つずつを入れ替える置換全てからなる。

HTMLの制約のため、(1234)(ijkl)へ移す置換を((1234)(ijkl))と書くことにする。
任意のσ=((1234)(ijkl))S4について、
σ(12)(34)σ-1=((ijkl)(1234))(34)(12)((1234)(ijkl))=(ij)(kl)D4,
σ(13)(24)σ-1=((ijkl)(1234))(24)(13)((1234)(ijkl))=(ik)(jl)D4,
σ(14)(23)σ-1=((ijkl)(1234))(23)(14)((1234)(ijkl))=(il)(jk)D4で、
(ij)(kl),(ik)(jl),(il)(jk)(12)(34),(13)(24),(14)(23)の単なる並べ替えだから、
σD4σ-1=D4となるのでD4S4

(b)
任意のσS4αA4について、sign(σασ-1)=1だからσασ-1A4なのでσA4σ-1A4
任意のαA4についてα=((1234)(ijkl)), sign(α)=1とすると、
β=((1234)(jikl)) A4, σ=(12)S4としてσβσ-1=αだから、
ασA4σ-1なのでA4σA4σ-1
故にA4=σA4σ-1だからA4S4の正規部分群で[S4:A4]=|S4|/|A4|=24/12=2

(a)と同様の議論によりD4A4, [A4:D4]=12/4=3
D4={e,τ,υ,τυ},τυ=υτとするとυ<τ>υ-1=<τ>だから<τ>C2 D4, [D4:C2]=4/2=2
以上により列{e}C2D4A4S4は定義8.1.1を満たすので、A4, S4は可解。

演習問題2
HTMLの制限のため、\tilde{G}をGで表す。
(a)
主張(a):
πの定義によりG0G/Hは明らか。
任意のgG/Hについてg=gHとなるgGが存在して、
π(g)=gとなるのでG/HG0。以上によりG0=G/H
したがってπは全射準同型。

主張(b):
πの定義により明らか。

主張(c):
任意のgGi-1hGiについてghg-1Giで、πは準同型だから、
π(g)=gGi-1, π(h)=hGiとして Giπ(ghg-1)=ghg-1よりgGig-1Gi

πは全射だから任意のhGiG/Hについてh=hHとなるhGiGが存在する。
任意のgGi-1についてa=ghg-1Giだからg-1=g1Gi-1としてh=g1ag1-1
これよりg1=π(g1)Gi-1としてh=π(h)=g1ag1-1となるa=π(a)Giが存在するから、
GigGig-1。以上によりGi=gGig-1だからGiGi-1

主張(d):
主張の写像をφとし、g1,g2-1Gi-1とすると、GiGi-1よりg2Gig2-1=Giだから
φ(g1Gig2-1Gi)=φ(g1g2-1(g2Gig2-1)Gi)=φ(g1g2-1Gi)=π(g1g2-1)Gi=π(g1)π(g2)-1Gi,
また主張(c)によりGiGi-1なのでπ(g2)Giπ(g2)-1=Giだから
φ(g1Gi)φ(g2-1Gi)=π(g1)Giπ(g2-1)Gi=π(g1)π(g2)-1(π(g2)Giπ(g2)-1)Gi=π(g1)π(g2)-1Giとなり、
したがってφ(g1Gig2-1Gi)=φ(g1Gi)φ(g2-1Gi)だからφは群準同型。
πは全射なので任意のgGi-1に対しgGi-1が存在してg=π(g)だから、
gGi=π(g)Gi=φ(gGi)となり、φは全射となる。

(b)
φは全射なので、定理A.1.3(群準同型の基本定理)によりM1/Ker(φ) M2
Ker(φ)M1の部分群だから、定理A.1.1(Lagrangeの定理)により、
|Ker(φ)||M1|=pを割り、|M2|=|M1|/|Ker(φ)|
pは素数なので|Ker(φ)|=1または|Ker(φ)|=pだから、|M2|=1または|M2|=p

(c)
定義8.1.1により|Gi-1/Gi|は素数で、
主張(d)によりφ: Gi-1/GiGi-1/Giは全射準同型だから、
(b)により|Gi-1/Gi|=1または|Gi-1/Gi|=|Gi-1/Gi|
すなわちGi-1=Giまたは|Gi-1/Gi|は素数。

演習問題3
(a)
演習問題2(a)によりπは全射準同型。
π(e)=HG/Hの単位元なのでKの単位元でもあるからeπ-1(K)
またhHならπ(h)=hH=HKだから、Hπ-1(K)

k1,k2π-1(K)とすると、π(k1)=k1HK, π(k2)=k2HKで、
KG/Hの部分群だから(k1H)(k2H)K
πは全射だから、(k1H)(k2H)=kHとなるkGが存在するので、kπ-1(K)
πは準同型だから(k1H)(k2H)=π(k1)π(k2)=π(k1k2)=k1k2Hとなるので、
k=k1k2としてよい。すなわちk1k2π-1(K)
したがってπ-1(K)Hを含むGの部分群。

(b)
gGとしてπ(g)=gH=eH=Hなら、
任意のh1Hに対しあるh2Hが存在してgh1=h2なので
g=h2h1-1Hだから、Ker(π)=π-1({eH})=H

(c)
(a)によりπ-1(G/H)G。任意のgGについてπ(g)=gHG/Hだから、
Gπ-1(G/H)となるのでπ-1(G/H)=G

演習問題4
0imに対し、Giπ-1の定義によりπ(Gi)=π(π-1(Gi))=Gi
またgπ-1(Gi)ならπ(g)GiGi-1だからπ-1(Gi)π-1(Gi-1)で、
演習問題3(a)によりGi=π-1(Gi)Hを含むGの部分群。

gπ-1(Gi), hπ-1(Gi-1),とすると、π(g)Gi, π(h)Gi-1πは準同型なので、
GiGi-1よりπ(hgh-1)=π(h)π(g)π(h)-1Giだから、
hgh-1π-1(Gi)となるので、π-1(Gi)π-1(Gi-1)となる。

p=[Gi-1:Gi]=|Gi-1/Gi|は素数なのでGi-1/GiCp
πは全射準同型で、演習問題3(b)によりKer(π)=Hだから、
定理A.1.3(群準同型の基本定理)によりGi/HGiとなり|Gi|/|H|=|Gi|
同様に|Gi-1|/|H|=|Gi-1|なので、p=|Gi-1/Gi|=|Gi-1|/|Gi|=|Gi-1|/|Gi|=|Gi-1/Gi|だから、
Gi-1/GiCpGi-1/Giとなる。

演習問題5
(a)
任意のgZ(G), hGについてgh=hgよりg=hgh-1だから、
0io(g)-1としてhgih-1=gi<g>
故にh<g>h-1=<g>なので<g>G

(b)
n=1ならGCpAbel群だから命題8.1.5により可解。
m<nなる全てのmについて位数pmの群は可解と仮定する。
|G|=pnならGの部分群の位数はpの冪なので、
gZ(G), geとして|<g>|=pl (0<ln)
l=nならGは巡回群で、したがってAbel群だから、命題8.1.5により可解。
l<nとすると、(a)により<g>Gだから、|G/<g>|=pn-l
帰納法の仮定により、<g>G/<g>は可解となるから、
定理8.1.4によりGは可解。

演習問題6
(a)
|G|=10=2·5とし、NG5-Sylow部分群の個数とすると、
Sylowの第3定理よりN|10かつN≡1 (mod 5)なのでN=1
したがって5-Sylow部分群はただ一つなのでこれをHとすると、
Sylowの第2定理よりHG|H|=5は素数だから、
HC5となりAbel群だから命題8.1.5によりHは可解。
|G/H|=2よりG/HC2だから同様にG/Hも可解。
よって定理8.1.4によりGは可解。

|G|=15=3·5のときについても同様。

(b)
|G|=30とする。Gが可解なら、30=2·3·5は素数でないので、
N{e}, NGなるGの正規部分群Nが存在して|G/N|=2,3または5

逆にGの正規部分群Nが存在してN{e}, NGなら、
|N||G/N||G|の約数2,3,5,6,10,15のいずれかである。
位数2,3,5の群は巡回群と同型で、故にAbel群だから命題8.1.5により可解。
位数6の群はC6S3に同型なので可解。
位数10,15の群は(a)により可解。したがってNG/Nは常に可解なので、
定理8.1.4によりGは可解。

(c)
|G|=30=2·3·5とし、N3G3-Sylow部分群の個数とすると、
Sylowの第3定理よりN3|30かつN3≡1 (mod 3)なのでN3=1または10

N5G5-Sylow部分群の個数とすると、
Sylowの第3定理よりN5|30かつN5≡1 (mod 5)なのでN5=1または6

(d)
G3-Sylow部分群を10個、5-Sylow部分群を6個同時に含むと仮定する。

G3-Sylow部分群をX1,...,X10とすると、
これらはすべて位数3だからC3に同型なので、
Xi=<xi>={e,xi,xi 2} (xiXi, o(xi)=3)となり、各Xiは位数3の元を2個含む。
XiXj (ij)だから、xixj, xixj2, xi2xj (ij)となり、
したがってGは位数3の元を2·10=20個含む。

同様に、5-Sylow部分群が6個あったとすると、
Gは位数5の元を4·6=24個含む。

|G|=30<24+20=44だから、鳩の巣原理により、
Gには位数が3かつ5の元が存在することになり矛盾。
したがって、G10個の3-Sylow部分群と6個の5-Sylow部分群を
同時に含むことは起こりえない。

以上により(c)N3=1またはN5=1だから、
G3-Sylow部分群と5-Sylow部分群のいずれかはGの正規部分群Nとなり、
(b)によりNは可解。|G/N|=10または6なので、(b)によりG/Nは可解。
したがって定理8.1.4によりGは可解。

演習問題7
|G|<60なら、|G|=30=2·3·5|G|=42=2·3·7の場合を除いて、
|G|=pnqm (n≥0, m≥0)の形となるから、
定理8.1.8Burnsideの定理)により|G|<60, |G|≠30,42の群は可解。
演習問題6により|G|=30の群は可解、
8.1.11により|G|=42の群は可解なので、
|G|<60の群Gは全て可解。

演習問題8
(a)
i=n-kとして、kについての数学的帰納法で証明する。
k=0のときGn-1/Gn=Gn-1/{e}=Gn-1Abel群だから、命題8.1.5により可解。
いまGn-kが可解と仮定する。

Gn-kGn-k+1なので、自然準同型π:Gn-k+1Gn-k+1/Gn-k (gn-k+1gn-k+1Gn-k)を、
定理8.1.4の証明と同様に考えると、演習問題2(a)と同様にしてπは全射で、
π(Gn-k+1)=Gn-k+1/Gn-k, Ker(π)=Gn-kであることが示される。

Gn-k+1/Gn-kAbel群なので命題8.1.5により可解だから、
Abelである正規部分群の列
Hm={eGn-k }Hm-1...Hl...H0=Gn-k+1/Gn-k (1lm)が存在して、
|Hl-1|/|Hl|=pl(l>0)は素数となる。

 (8.1)式と同様にπ-1を考える。すなわちπ-1(Hl)={hGn-k+1|π(h)Hl }
演習問題3と同様にして、π-1(Hm)=Gn-kπ-1(Hm-1)...π-1(H0)=Gn-k+1で、
π-1(Hl)Gn-kを含むGn-k+1の部分群であることが示される。
任意のgπ-1(Hl-1), hπ-1(Hl)に対し、Gn-k+1/Gn-kAbel群なので
π(ghg-1)=π(g)π(h)π(g-1)=π(g)π(g-1)π(h)=π(h)だからghg-1π-1(Hl)となるので、
π-1(Hl) π-1(Hl-1)である。したがって、π-1によって正規部分群の列
π-1(Hm)=Gn-kπ-1(Hm-1) ...π-1(H0)=Gn-k+1が得られる。

π-1の定義から明らかにIm(π|π-1(Hl-1))=Hl-1 だからπ|π-1(Hl-1)は全射で、
Ker(π|π-1(Hl-1))=Gn-kだから、定理A.1.3(群準同型の基本定理)により
π-1(Hl-1)/Gn-kHl-1。これより|π-1(Hl-1)|=|Hl-1||Gn-k |
同様に|π-1(Hl)|=|Hl||Gn-k |となるので、|π-1(Hl-1)|/|π-1(Hl)|=|Hl-1|/|Hl|=plは素数となる。

帰納法の仮定によりπ-1(Hm)=Gn-kは可解だから、
{e}...π-1(Hm)となる定義8.1.1を満たす正規部分群の列が存在する。
したがって正規部分群の列{e}...π-1(Hm)=Gn-kπ-1(Hm-1) ...π-1(H0)=Gn-k+1は、
定義8.1.1を満たすから、Gn-k+1は可解。

以上によりG0=Gは可解。

(b)
i=n-kとして、kについての数学的帰納法で証明する。
k=0のときGn-1/Gn=Gn-1/{e}=Gn-1は仮定により可解。
いまGn-kが可解と仮定する。
Gn-k Gn-k+1かつGn-k+1/Gn-kは可解だから、定理8.1.4によりGn-k+1は可解である。
したがってG0=Gは可解。

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