演習問題1
lex順序で<LT(g1),LT(g2),LT(g3)>=<xy2,xy,x>=<x>なので、
xを含まないgがg1,g2,g3から生成できることを示せば良い。
例えばg=g1-yg2+zg3=-yz5+yz2+y∈Iとすれば、
LT(g)=-yz5∉<x>=<LT(g1),LT(g2),LT(g3)>。
演習問題2
f1=x2y-z, f2=xy-1∈k[x,y], I=<f1, f2>⊂k[x,y]とすれば、§3演習問題5cから、
grlex順序ではf1-xf2=x-z∈Iだからx∈<LT(I)>だが、
x∉<LT(f1),LT(f2)>=<x2y,xy>=<xy>。
f1=2xy2-x, f2=3x2y-y-1∈k[x,y], I=<f1, f2>⊂k[x,y]とすれば、
§3演習問題6からgrlex順序で、
3xf1-2yf2=-3x2+2y2+2y∈Iだから-3x2∈<LT(I)>だが、
-3x2∉<LT(f1),LT(f2)>=<2xy2,3x2y>。
f1=x4y2-z, f2=x3y3-1, f3=x2y4-2z∈k[x,y,z], I=<f1, f2, f3>⊂k[x,y,z]とすれば、
§3演習問題7からgrlex順序でyf1-xf2=-yz+x∈Iだから-yz∈<LT(I)>だが、
-yz∉<LT(f1),LT(f2),LT(f3)>=<x4y2,x3y3,x2y4>。
演習問題3
小問a
LT(f1)とLM(f1)等は定数倍異なるだけだから、
<LT(f1),...,LT(fs)>=<LM(f1),...,LM(fs)>で、
<LM(f1),...,LM(fs)>は単項式イデアルだから、<LT(f1),...,LT(fs)>もそうである。
<LT(f1),...,LT(fs)>⊊<LT(I)>だから、
あるf∈Iが存在してLT(f)∉<LT(f1),...,LT(fs)>。
したがって§4補題2によりLT(f)は、
<LT(f1),...,LT(fs)>のどの単項式でも割れないので、
LT(f1),...,LT(fs)のどれもLT(f)を割らないから、
fを(f1,...,fs)で割った余りは0にならない。
小問b
単にLT(f1),...,LT(fs)がLT(f)を割るかどうかだけでは、
イデアル所属問題の判定にならないということ
小問c
小問aのように、f∈Iであるにもかかわらず、
fを(f1,...,fs)で割った余りは0にならない例として、
§3演習問題8の様になる場合がある。
演習問題4
任意のf∈I-{0}について、LC(f)∈k-{0}⊂k[x1,...,xn]だから、
LC(f)-1∈k[x1,...,xn]が存在するので、
LM(f)=LC(f)-1LT(f)∈<LT(g): g∈I-{0}>より
<LM(g):
g∈I-{0}>⊂<LT(g): g∈I-{0}>、
かつLT(f)=LC(f)LM(f)∈<LM(g):
g∈I-{0}>より
<LT(g):
g∈I-{0}>⊂<LM(g): g∈I-{0}>となるから、
<LT(g):
g∈I-{0}>=<LM(g): g∈I-{0}>。
演習問題5
G={g1,...,gt}がイデアルIのGröbner基底なら、
<LT(I)>=<LT(g1),...,LT(gt)>=<LM(g1),...,LM(gt)>。
命題3により<LT(I)>は単項式イデアルだから、
§4補題2よりLT(I)の全ての元aに対し、
あるi (1≤i≤t)が存在してLM(gi)|a。
定義1と、LM(gi)とLT(gi)はkの0でない定数倍の違いしかないことから、
Iの任意の元の先頭項はどれかのLT(gi)で割れる。
逆にG={g1,...,gt}⊂Iについて、
Iの任意の元の先頭項がどれかのLT(gi)で割れるとすると、
LT(I)の全ての元aに対し、
あるi (1≤i≤t)が存在してLM(gi)|a。
<LT(g1),...,LT(gt)>=<LM(g1),...,LM(gt)>は単項式イデアルだから、
§4補題2によりa∈<LT(g1),...,LT(gt)>となりLT(I)⊂<LT(g1),...,LT(gt)>。
G⊂Iより<LT(g1),...,LT(gt)>⊂LT(I)は明らかだから、
<LT(I)>=<LT(g1),...,LT(gt)>。
演習問題6
スケッチがほとんどまんま。
任意のf∈Iについて、fを(g1,...,gt)で割る割り算アルゴリズムを考える。
割り算アルゴリズムに現れる中間被除数pがIの元になったと仮定すると、
LT(p)∈<LT(I)>=<LT(g1),...,LT(gt)>=<LM(g1),...,LM(gt)>で、
補題3により<LT(I)>は単項式イデアルだから、
§4補題2によりLT(p)はあるLM(gi)で割れるのでLT(gi)で割れる。
すると次のステップの中間被除数はp-(LT(p)/LT(gi))gi∈Iとなる。
最初のステップの中間被除数はf∈Iなので、
上で示したことから割り算アルゴリズムに現れる中間被除数は、
全てIの元となるから、余りは現れない。
§3定理3の証明から、割り算アルゴリズムは有限回で終了するから、
最終的な余りは0でなければならない。
したがってf=∑1≤i≤t aigi。
演習問題7
演習問題2の3番目の例と同様に、grlex順序で
f1=x4y2-z5, f2=x3y3-1,
f3=x2y4-2z∈k[x,y,z], I=<f1, f2, f3>⊂k[x,y,z]とすれば、
§3演習問題7からyf1-xf2=-yz5+x∈Iだから-yz5∈<LT(I)>だが、
-yz5∉<LT(f1),LT(f2),LT(f3)>=<x4y2,x3y3,x2y4>なので、
<LT(I)>⊋<LT(f1),LT(f2),LT(f3)>となるので、
{f1, f2, f3}は<f1, f2, f3>のGröbner基底でない。
演習問題8
系6の次の項で、<x+z,y-z>について示した証明と全く同様にして、
{x-z2, y-z3}がI=< x-z2, y-z3>のGröbner基底であることが示される。
演習問題9
変数順序x1>x2>...>xnについてlex順序を適用する。
gi=∑1≤j≤n aijxj (1≤i≤m)とする。
各g1,..., gmの先頭単項式はすべて、単にxiという形をしていて、
Aは行階段形だからLM(g1)>lexLM(g2)>lex...>lex LM(gm)である。
これよりm≤nでなければならない。
m<nまたはAに全ての成分が0になる行がある場合、
LM(gm)=xsとすれば、線型部分空間L=V(g1,..., gm) ⊂ℝnにおいて、
xs+1,..., xnまたはLM(g1),...,LM(gm)に現れないxi (1≤i≤s-1)が存在して、
全て自由パラメターとなる。これらの自由パラメターをt1,..., trとする。
Aが行階段形であることから、線形代数の通常の手続きにより、
LM(g1),...,LM(gm)をt1,..., trで表すことが容易にできる。
J=<g1,..., gm>について、0でないf∈Jが存在して、
LT(f)∉<LM(g1),...,LM(gm)>となったと仮定すると、
fはt1,..., trのみを変数に持つ多項式で、かつL上で消える。
すなわち任意のt1,..., tr∈ℝに対しf(t1,..., tr)=0だから、
f=0でなければならないので、f≠0と矛盾。
したがってLT(f)∈<LM(g1),...,LM(gm)>だから、
LT(J)⊂<LM(g1),...,LM(gn)>=<LT(g1),...,LT(gn)>。
逆の包含関係は明らかなのでLT(J)=<LT(g1),...,LT(gn)>となるから、
{g1,..., gm}はJのGröbner基底。
m=nかつAが全ての成分が0になる行を持たない場合は、
Aは正方行列で全ての非対角成分が0でない上三角行列だから、
<LM(g1),...,LM(gn)>=<x1,..., xn>となる。J=<g1,..., gm>の元の先頭項は、
g1,..., gmの定義により全て定数でないから、
LT(J)⊂<x1,..., xn>=<LM(g1),...,LM(gn)>=<LT(g1),...,LT(gn)>
逆の包含関係は明らかなのでLT(J)=<LT(g1),...,LT(gn)>となるから、
{g1,..., gm}はJのGröbner基底。
演習問題10
I=<f>である。
0でないg∈Iなら、あるa∈k[x1,...,xn]が存在してg=af。
§2演習問題11bによりLT(g)=LT(a)LT(f)なので、
LT(g)∈<LT(f)>となるから<LT(I)>⊂<LT(f)>。
逆の包含関係は明らかなので<LT(I)>=<LT(f)>。
したがって{f}はIのGröbner基底。
Iの有限部分集合{f1,...,fs}をとれば上で任意のgについて示したことから、
LT(f1),..., LT(fs)∈<LT(f)>。これより{f1,...,fs}にfが含まれれば、
<LT(f1),..., LT(fs)>=<LT(f)>=LT(I)だから、{f1,...,fs}はIのGröbner基底。
演習問題11
f∉<x1,...,xn>ならfはkの0でない定数だから、
<x1,...,xn,f>はk[x1,...,xn]の単数を含むので、<x1,...,xn,f>は自明。
故に<x1,...,xn,f>=k[x1,...,xn]。
演習問題12
Iが有限生成集合を持たなかったとすれば、
生成元の集合を{fn}n∈A (Aは無限集合)として、
安定的でない昇鎖<f1>⊂<f1,f2>⊂<f1,f2,f3>⊂... が存在するから、
イデアルの任意の昇鎖が安定的である仮定と矛盾。
したがってk[x1,...,xn]のイデアルはすべて有限生成集合を持つから、
Hilbertの基底定理を得る。
演習問題13
例えばV1=V2なら、降鎖からV2を除き、
新たにV3をV2をと番号を振り直すなどすることで、
V1⊋V2⊋...としてよい。
この降鎖が無限に続くと仮定すると、
第1章§4演習問題14bより、
I(V1)⊊I(V2)⊊I(V3)⊊...なるk[x1,...,xn]のイデアルの無限昇鎖を得るが、
これはHilbertの基底定理と矛盾するから、
V1⊋V2⊋...の降鎖は有限でなければならない。
これは番号を振り直す前の元の降鎖において、
あるN≥1が存在してVN=VN+1=VN+2=...と安定的になることを意味する。
演習問題14
f1, f2,...からイデアルの昇鎖I1=< f1>, I2=< f1, f2>, I3=< f1, f2, f3>,...を作れば、
定理7(昇鎖条件)によりあるN∈ℕが存在して、j>NならIj=IN。
任意のf∈Iに対しfは、{f1, f2,...}の有限個の元の線形結合だから、
添字が最大の元をfkとすれば、f∈Ik。
k≤Nなら明らかにf∈IN。k>Nならf∈Ik=IN。よってI⊂IN。
IN⊂Iは明らかなのでIN=I。
演習問題15
I=< f1, f2,...>とすれば定義8よりV(f1, f2,...)=V(I)。
演習問題14によりあるN∈ℕが存在して、
I=< f1, f2,..., fN >だから、命題9によりV(I)=V(f1, f2,..., fN)
演習問題16
V⊂knだからV=V(h1,...,hr) (h1,...,hr∈k[x1,..., xn])、J=<h1,...,hr>とすると、
命題9によりV(J)=V(h1,...,hr)=V。
I(V)は第1章§4補題6によりk[x1,...,xn]のイデアルで、
第1章§4補題7によりJ⊂I(V)なので、第1章§4補題8によりV(I(V))⊂V(J)=V。
え~と、逆が言えそうな気がしない・・・。
演習問題17
小問a
(x2-y)/2+(y+x2-4)/2=x2-2だからx2-2∈Iなので、
第1章§4演習問題2により<x2-y,x2-2>⊂I。
-(x2-y)+2(x2-2)=y+x2-4だから同様にI⊂<x2-y,x2-2>。
したがってI=<x2-y,x2-2>。
小問b
x2-2=0よりx=±√2。
いずれにせよx2-y=0よりy=2だから、V={(±√2,2)}。
演習問題18
小問a
第1章§2補題2の証明からV(f,g1)⋃V(f,g2)=V(f2,fg1,fg2,g1g2)=V(f2,fg1,fg2,g)。
f,gが共に消えるknの点ではf2,fg1,fg2,gも消えるから、
V(f,g)⊂V(f2,fg1,fg2,g) =V(f,g1)⋃V(f,g2)。
fと、g1またはg2が消えるknの点では、gも消えるからV(f,g1)⋃V(f,g2) ⊂V(f,g)。
したがってV(f,g) =V(f,g1)⋃V(f,g2)。
この話、イデアル側で何が起きているかが問題で、今はまだ要素は出てはいても、
はっきり繋がっていないのだが、この全貌は多分§4なのだろう。
小問b
(y+x2)(y-x2)+xz-y2=xz-x4だから<y-x2,xz-x4>⊂<y-x2,xz-y2>。
-(y+x2)(y-x2)+(xz-x4)=xz-y2だから<y-x2,xz-y2>⊂<y-x2,xz-x4>。
故に<y-x2,xz-y2>=<y-x2,xz-x4>だから、
命題9(というか第1章§4命題4)によりV(y-x2,xz-y2)=V(y-x2,xz-x4)。
小問c
小問aによりV(y-x2,xz-x4)= V(y-x2,x) ⋃ V(y-x2,z-x3)。
V(y-x2,x)は直線x=y=0 (z軸)で、V(y-x2,z-x3)は第1章§2の捩れ3次曲線だから、
V(y-x2,xz-x4)はこれらの和集合。
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