2012-03-01

コックス「ガロワ理論」 14.2節の演習問題2


演習問題8
(a)
fの根のうちRiに属するn個の根をαi,j (1im, 1jn)と書くと、
fi=1jn (x-αi,j)である。
故にf=1im1jn (x-αi,j)= ∏1im fi
fは分離的なのでmn個のαi,jはすべて異なるから、
この分解は一意的である。

すべての1imについてσ(Ri)=RiなるσGal(L/F)の集合をHとして、
σHの作用によってfiの根はRiの中だけで置換されるから、
fiは不変。故にfiの係数はσで固定されるので、
fiの係数はLH=Kに入るから、fiK[x]

(b)
(問題文のGal(K/L)Gal(K/F)の誤植)

fは非原始的だから、Gal(L/F) は系14.2.10によりSmSnの部分群に同型。
fは規約だから命題6.3.7により、
Gal(L/F) に対応するSmSnの部分群は可移なので、
σGal(L/F)に対し、σ(Ri)=Rτ(i)となるτSmが存在して、
σ(τ;μ1,..., μn)SmSnが対応する。
自然な準同型(τ;μ1,..., μn)→τを用いて、
στによって写像φ: Gal(L/F)Smを定めると、明らかにφは群準同型。
Ker(φ)σ(Ri)=RiなるσGal(L/F)の集合だから(a)Hである。
したがってHGal(L/F)だから、
Galois対応によりFLH=KGalois拡大で、H=Gal(L/K)となり、
さらに定理A.1.3(群準同型の基本定理)により
Gal(K/F)=Gal(L/F)/H=Gal(L/F)/Ker(φ)Im(φ)Sm

演習問題9
(a)
Sn{1,...,n}への作用をτSn, i{1,...,n}についてτ·i=τ(i)で定義する。
Gにおけるi{1,...,n}の固定部分群をGiGとすると、
Gは可移なので|G·i|=nだから、定理A.4.9(群の作用の基本定理)により|G|=n|Gi|

τGiとすると、GAbel群なので、任意のσGについて、
(τσ)·i=(στ)·i=σ·iだから、τ=eまたはσ=eだが、
後者はG={e}を意味するので、Gの可移性と矛盾する。
よってτ=eだからGi={e}となるので|G|=n

(b)
部分群HGをとる。l=|H·i|とし、
Hにおけるi{1,...,n}の固定部分群をHiHとすると、
HAbel群だから(a)と同様にHi={e}となり|H|=l|Hi|=lなので、
定理A.1.1Lagrangeの定理)により|G|=[G:H]|H|=[G:H]lだから、
k=[G:H]としてn=kl である。

H·i={i1=i,...,il}とし、τ1, τ2Gとする。
Gにおけるτ1, τ2によるHの左剰余類τ1H,τ2Hについて、
あるτ1h1τ1H (h1H)に対し(τ1h1)·i=j(τ2H)·iなら、
j=(τ2h2)·iなるh2Hが存在するから、
(h2-1τ2-1τ1h1)·i =iとなるのでh2-1τ2-1τ1h1Hi={e}
すなわちτ2-1τ1=h2h1-1Hだから、τ1τ2Hとなり、故にτ1H=τ2H
したがって、τ1Hτ2Hなら(τ1H)·i(τ2H)·i=となる。

そこでHによるGk個の左剰余類への分解の代表系を{τ1=e,τ2,..., τk}とし、
Rm=(τmH)·i (1mk)とすれば、左剰余類分解に対応して、
{1,...,n}k個の共通部分のないブロックR1={i1=i,...,il}, R2,..., Rkに分割され
(大きさが等しいとは限らない)、(τmH)·i=Rmとなる。

以上により、|G|=nが素数ならk=1またはk=nだから、
定義14.2.5によりGは原始的。
逆にGが原始的なら、nの約数kk=1またはk=nの可能性しかないから、
n=|G|は素数。
したがって、Gは原始的であることと、|G|が素数であることとは同値。

演習問題10
(a)
Φp(x)上の分解体は(ζp)で、
(8.6)により(ζp)Galois拡大だから定理7.1.5により、
|Gal((ζp)/)|=[(ζp):]=deg(Φp)=p-1
また(8.6)によりGal((ζp)/)Abel群である。
命題6.3.1によりGal((ζp)/)と同型なSp-1の部分群Gが存在して、
|G|=p-1かつGAbel群となり、
さらにΦp(x)は命題4.2.5により上規約だから、
命題6.3.7によりGは可移。

p>3ならp-1は素数でないから、以上と演習問題9(b)により、
Gは非原始的。よってΦpは非原始的。

(b)
p=3ならp-1=2は素数、p=2ならGalois群は自明だからである。

演習問題11
演習問題6より|CpCp|=pp+1
一方、|Sp2|=(p2)!=pp+1n (gcd(p,n)=1)だから、
CpCpSp2p-Sylow部分群。

演習問題12
(「fを標数0の体上の・・・」は「fを標数0の体F上の・・・」の書き落としだろう)

fF[x]は既約で、Fの標数は0だから命題5.3.7によりfは分離的。
fは非原始的だから、deg(f)=6に対し系14.2.10により、
fGalois群はS2S3またはS3S2の部分群に同型。
S2S3は定理8.4.5により可解だから、
演習問題4よりS2S3およびS3S2は可解なので、
命題8.1.3によりfGalois群は可解。
Fの標数は0だから、定理8.5.3によりfF上冪根で解ける。

deg(f)=8についても同様に、
fGalois群はS2S4またはS4S2の部分群に同型だから可解。
deg(f)=9についても同様に、
fGalois群はS3S3の部分群に同型だから可解。

演習問題13
(a)
fF上規約なのでFの標数が0なら命題5.3.7により分離的。
Fの標数pが有限なら、p2でも3でもないので、
pdeg(f)=6だから、補題5.3.5により分離的。

(b)
x3-1=(x-1)Φ3F上の分解体をKとすると、
Fの標数が0なら1の原始3乗根ωKが存在する。
Fの標数pが有限なら、p2でも3でもないので、
gcd(p,3)=1だから補題5.3.5によりx3-1は分離的。
x3-1は根1,ω, ω2Kを持ち、ω1の原始3乗根。
よってFの標数によらず1の原始3乗根ωが存在する。

fF上の分解体をLとする。
αfの一つの根とするとαω, αω2fの根だから、
KLで、fの根全体は、Gal(L/F)によって置換される2つのブロック
R1={α, αω, αω2}, R2={β, βω, βω2}に分けることができる。よってfは非原始的。
fは規約で(a)により分離的だから、系14.2.10によりGal(L/F)GS2 S3
さらに演習問題6より|G||S2 S3|=|S2||S3|2=2·62=72

(c)
L=F(α,β,ω)である。

α3,β3x2+bx+c=0の根で、
α3Fまたはβ3Fならf=(x3-α3)(x3-β3)F上可約となり、
fの規約性に反するから、α3Fかつβ3F
故にα3,β3F(√(b2-4c))[F(√(b2-4c)):F]=2である。
これより[F(α):F(√(b2-4c))]≤3, [F(β):F(√(b2-4c))]≤3だから、
定理4.3.8(塔定理)を用いて[F(α,β):F(√(b2-4c))]≤9なので、[F(α,β):F]≤18
また[F(ω):F]=deg(Φ3)=2だから、[L:F]=[F(α,β,ω):F]≤36
よって定理7.1.5により|G|=|Gal(L/F)|=[L:F]≤36

演習問題14
(a)
14.2.11により、fは非原始的で根のブロックR1, R2,R3を持ち、
すべての1i≤3について|Ri|=2。故に演習問題8の構成により、
K=LHL, H={σGal(L/F)|すべての1i≤3についてσ(Ri)=Ri}なる中間体Kが存在して、
K=LHLGalois拡大となり、K上でf=f1f2f3
ただしf1,f2,f3K[x]かつdeg(fi)=|Ri|=2 (1i≤3)である。

(b)
演習問題13によりfは非原始的で根のブロックR1, R2を持ち、
すべての1i≤2について|Ri|=3。故に演習問題8の構成により、
K=LHL, H={σGal(L/F)|すべての1i≤2についてσ(Ri)=Ri}なる中間体Kが存在して、
K=LHLGalois拡大となり、K上でf=f1f2
ただしf1,f2K[x]かつdeg(fi)=|Ri|=3 (1i≤2)である。

演習問題15
演習問題9とほぼ同様である。

Sn{1,...,n}への作用をτSn, i{1,...,n}についてτ·i=τ(i)で定義する。
Gにおけるi{1,...,n}の固定部分群をGiGとすると、
Gは可移なので|G·i|=nだから、定理A.4.9(群の作用の基本定理)により|G|=n|Gi|
部分群GiHGをとる。l=|H·i|とすると、
|H|=l|Gi|なので、定理A.1.1Lagrangeの定理)により
|G|=[G:H]|H|=[G:H]l|Gi|=n|Gi|だから、k=[G:H]としてn=kl である。

H·i={i1=i,...,il}とし、τ1, τ2Gとする。
Gにおけるτ1, τ2によるHの左剰余類τ1H,τ2Hについて、
あるτ1h1τ1H (h1H)に対し(τ1h1)·i=j(τ2H)·iなら、
j=(τ2h2)·iなるh2Hが存在するから、
(h2-1τ2-1τ1h1)·i =iとなるのでh2-1τ2-1τ1h1Gi
すなわちτ2-1τ1h2Gih1-1Hだから、τ1τ2Hとなり、故にτ1H=τ2H
したがって、τ1Hτ2Hなら(τ1H)·i(τ2H)·i=となる。

そこでHによるGk個の左剰余類への分解の代表系を{τ1=e,τ2,..., τk}とし、
Rm=(τmH)·i (1mk)とすれば、左剰余類分解に対応して、
{1,...,n}k個の共通部分のないブロックR1={i1=i,...,il}, R2,..., Rkに分割され
(大きさが等しいとは限らない)、(τmH)·i=Rmとなる。

以上により、k=1またはk=nならば定義14.2.5によりGは原始的で、
H=GまたはH=Giなので、すべてのiに対しGiGの極大部分群。
逆にすべてのiに対しGiGの極大部分群なら、
H=GまたはH=Giだから、k=1またはk=nなのでGは原始的である。
したがって、Gは原始的であることと、
すべてのiに対しGiGの極大部分群であることとは同値。

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