2012-10-22

相似の導入のあれこれ7. 中学数学教科書の場合(H24新課程・東京書籍版)

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地図の縮尺の話とかの、計測に関連した例が述べられ、
相似はまず相似の位置から導入される。一応、変換派っぽくみえる。
といってもあまり厳密にやるわけではなく、
座標平面というかマス目の紙に、相似の位置に直線図形を何例か描いてみて、
「サイズが違う同じ形」概念が、
「相似の位置に置ける事」「辺が比例する事」と関連していることを、
実感する訓練を積む。それから三角形の相似3条件を公理として与える。

曖昧といえばまあ確かに曖昧だけど、
これはこれでかなりバランスが考えられた、
実用向けとしてはいいラインだろうと思う。
手を動かして図を書くことをふんだんに入れているのも、とてもいい。
脱ゆとり教科書になって、おっと思う記述が増えた印象だが、
この相似の導入もそのひとつ。

どの道相似変換は、高3の数Cの一次変換
(次の学習指導要領ではなくなるみたいだが)のところで、
線形代数という一般的で強力な手法とともに学べるのだから
(まあ高3は高3でまた時間がないのが問題なのだが)、
相似の位置の理論そのものを、
3段階で精密にやらなくても、それはそれでいいかもしれない。
相似の位置についてお話としては知っておいて、
3で数Cを取る必要が出た子はその時深く勉強すればいいという立場だろう。

ただ、こうして教科書でお話として導入された相似の位置は、
その後ほとんど使われず、相似3条件は、
相似の位置でやった実感の基盤があるとはいえ天下り的だ。
最初だけ変換派に見えるのだが、ギャップがあって、
実はかなり比例派寄りである。
時間のない中3の授業現場では、
あとで使われない相似の位置の部分が長いために、
相似3条件の運用訓練の時間も食われてしまって、
やりにくいだろうなあ。時間さえあればいいのだけど。

ちなみにそのあと相似3条件の運用は比較的短く流されて、
中点連結定理とかの、平行線と比の話に入る。
この部分がちょっと雑多というかチャンポン的。
相似3条件のアプリケーションの続きなのか、
ヒルベルト的な線分の代数理論を意識しているのか、
小林「初等幾何学」や芳沢「新体系」のような、
相似の位置と相似3条件の関係の精密化をイメージしたいのか、
不明瞭で浮いている部分だ。

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