演習問題8
(a)
fの根のうちRiに属するn個の根をαi,j
(1≤i≤m, 1≤j≤n)と書くと、
fi=∏1≤j≤n (x-αi,j)である。
故にf=∏1≤i≤m∏1≤j≤n (x-αi,j)= ∏1≤i≤m fi。
fは分離的なのでmn個のαi,jはすべて異なるから、
この分解は一意的である。
すべての1≤i≤mについてσ(Ri)=Riなるσ∈Gal(L/F)の集合をHとして、
σ∈Hの作用によってfiの根はRiの中だけで置換されるから、
fiは不変。故にfiの係数はσで固定されるので、
fiの係数はLH=Kに入るから、fi∈K[x]。
(b)
(問題文のGal(K/L)はGal(K/F)の誤植)
fは非原始的だから、Gal(L/F) は系14.2.10によりSm≀Snの部分群に同型。
fは規約だから命題6.3.7により、
Gal(L/F) に対応するSm≀Snの部分群は可移なので、
σ∈Gal(L/F)に対し、σ(Ri)=Rτ(i)となるτ∈Smが存在して、
σに(τ;μ1,..., μn)∈Sm≀Snが対応する。
自然な準同型(τ;μ1,..., μn)→τを用いて、
σ→τによって写像φ: Gal(L/F)→Smを定めると、明らかにφは群準同型。
Ker(φ)はσ(Ri)=Riなるσ∈Gal(L/F)の集合だから(a)のHである。
したがってH⊴Gal(L/F)だから、
Galois対応によりF⊂LH=KはGalois拡大で、H=Gal(L/K)となり、
さらに定理A.1.3(群準同型の基本定理)により
Gal(K/F)=Gal(L/F)/H=Gal(L/F)/Ker(φ)≃Im(φ)⊂Sm。
演習問題9
(a)
Snの{1,...,n}への作用をτ∈Sn, i∈{1,...,n}についてτ·i=τ(i)で定義する。
Gにおけるi∈{1,...,n}の固定部分群をGi⊂Gとすると、
Gは可移なので|G·i|=nだから、定理A.4.9(群の作用の基本定理)により|G|=n|Gi|。
τ∈Giとすると、GはAbel群なので、任意のσ∈Gについて、
(τσ)·i=(στ)·i=σ·iだから、τ=eまたはσ=eだが、
後者はG={e}を意味するので、Gの可移性と矛盾する。
よってτ=eだからGi={e}となるので|G|=n。
(b)
部分群H⊂Gをとる。l=|H·i|とし、
Hにおけるi∈{1,...,n}の固定部分群をHi⊂Hとすると、
HはAbel群だから(a)と同様にHi={e}となり|H|=l|Hi|=lなので、
定理A.1.1(Lagrangeの定理)により|G|=[G:H]|H|=[G:H]lだから、
k=[G:H]としてn=kl である。
H·i={i1=i,...,il}とし、τ1, τ2∈Gとする。
Gにおけるτ1, τ2によるHの左剰余類τ1H,τ2Hについて、
あるτ1h1∈τ1H (h1∈H)に対し(τ1h1)·i=j∈(τ2H)·iなら、
j=(τ2h2)·iなるh2∈Hが存在するから、
(h2-1τ2-1τ1h1)·i =iとなるのでh2-1τ2-1τ1h1∈Hi={e}、
すなわちτ2-1τ1=h2h1-1⊂Hだから、τ1∈τ2Hとなり、故にτ1H=τ2H。
したがって、τ1H≠τ2Hなら(τ1H)·i⋂(τ2H)·i=∅となる。
そこでHによるGのk個の左剰余類への分解の代表系を{τ1=e,τ2,..., τk}とし、
Rm=(τmH)·i (1≤m≤k)とすれば、左剰余類分解に対応して、
{1,...,n}はk個の共通部分のないブロックR1={i1=i,...,il}, R2,..., Rkに分割され
(大きさが等しいとは限らない)、(τmH)·i=Rmとなる。
以上により、|G|=nが素数ならk=1またはk=nだから、
定義14.2.5によりGは原始的。
逆にGが原始的なら、nの約数kはk=1またはk=nの可能性しかないから、
n=|G|は素数。
したがって、Gは原始的であることと、|G|が素数であることとは同値。
演習問題10
(a)
Φp(x)のℚ上の分解体はℚ(ζp)で、
(8.6)によりℚ⊂ℚ(ζp)はGalois拡大だから定理7.1.5により、
|Gal(ℚ(ζp)/ℚ)|=[ℚ(ζp):ℚ]=deg(Φp)=p-1。
また(8.6)によりGal(ℚ(ζp)/ℚ)はAbel群である。
命題6.3.1によりGal(ℚ(ζp)/ℚ)と同型なSp-1の部分群Gが存在して、
|G|=p-1かつGはAbel群となり、
さらにΦp(x)は命題4.2.5によりℚ上規約だから、
命題6.3.7によりGは可移。
p>3ならp-1は素数でないから、以上と演習問題9(b)により、
Gは非原始的。よってΦpは非原始的。
(b)
p=3ならp-1=2は素数、p=2ならGalois群は自明だからである。
演習問題11
演習問題6より|Cp≀Cp|=pp+1。
一方、|Sp2|=(p2)!=pp+1n (gcd(p,n)=1)だから、
Cp≀CpはSp2のp-Sylow部分群。
演習問題12
(「fを標数0の体上の・・・」は「fを標数0の体F上の・・・」の書き落としだろう)
f∈F[x]は既約で、Fの標数は0だから命題5.3.7によりfは分離的。
fは非原始的だから、deg(f)=6に対し系14.2.10により、
fのGalois群はS2≀S3またはS3≀S2の部分群に同型。
S2とS3は定理8.4.5により可解だから、
演習問題4よりS2≀S3およびS3≀S2は可解なので、
命題8.1.3によりfのGalois群は可解。
Fの標数は0だから、定理8.5.3によりfはF上冪根で解ける。
deg(f)=8についても同様に、
fのGalois群はS2≀S4またはS4≀S2の部分群に同型だから可解。
deg(f)=9についても同様に、
fのGalois群はS3≀S3の部分群に同型だから可解。
演習問題13
(a)
fはF上規約なのでFの標数が0なら命題5.3.7により分離的。
Fの標数pが有限なら、pは2でも3でもないので、
p∤deg(f)=6だから、補題5.3.5により分離的。
(b)
x3-1=(x-1)Φ3のF上の分解体をKとすると、
Fの標数が0なら1の原始3乗根ω∈Kが存在する。
Fの標数pが有限なら、pは2でも3でもないので、
gcd(p,3)=1だから補題5.3.5によりx3-1は分離的。
x3-1は根1,ω, ω2∈Kを持ち、ωは1の原始3乗根。
よってFの標数によらず1の原始3乗根ωが存在する。
fのF上の分解体をLとする。
αをfの一つの根とするとαω, αω2もfの根だから、
K⊂Lで、fの根全体は、Gal(L/F)によって置換される2つのブロック
R1={α, αω, αω2}, R2={β, βω,
βω2}に分けることができる。よってfは非原始的。
fは規約で(a)により分離的だから、系14.2.10によりGal(L/F)≃G⊂S2≀ S3。
さらに演習問題6より|G|≤|S2≀
S3|=|S2||S3|2=2·62=72。
(c)
L=F(α,β,ω)である。
α3,β3はx2+bx+c=0の根で、
α3∈Fまたはβ3∈Fならf=(x3-α3)(x3-β3)とF上可約となり、
fの規約性に反するから、α3∉Fかつβ3∉F。
故にα3,β3∈F(√(b2-4c))、[F(√(b2-4c)):F]=2である。
これより[F(α):F(√(b2-4c))]≤3, [F(β):F(√(b2-4c))]≤3だから、
定理4.3.8(塔定理)を用いて[F(α,β):F(√(b2-4c))]≤9なので、[F(α,β):F]≤18。
また[F(ω):F]=deg(Φ3)=2だから、[L:F]=[F(α,β,ω):F]≤36。
よって定理7.1.5により|G|=|Gal(L/F)|=[L:F]≤36。
演習問題14
(a)
例14.2.11により、fは非原始的で根のブロックR1, R2,R3を持ち、
すべての1≤i≤3について|Ri|=2。故に演習問題8の構成により、
K=LH⊂L, H={σ∈Gal(L/F)|すべての1≤i≤3についてσ(Ri)=Ri}なる中間体Kが存在して、
K=LH⊂LはGalois拡大となり、K上でf=f1f2f3、
ただしf1,f2,f3∈K[x]かつdeg(fi)=|Ri|=2 (1≤i≤3)である。
(b)
演習問題13によりfは非原始的で根のブロックR1, R2を持ち、
すべての1≤i≤2について|Ri|=3。故に演習問題8の構成により、
K=LH⊂L, H={σ∈Gal(L/F)|すべての1≤i≤2についてσ(Ri)=Ri}なる中間体Kが存在して、
K=LH⊂LはGalois拡大となり、K上でf=f1f2、
ただしf1,f2∈K[x]かつdeg(fi)=|Ri|=3 (1≤i≤2)である。
演習問題15
演習問題9とほぼ同様である。
Snの{1,...,n}への作用をτ∈Sn, i∈{1,...,n}についてτ·i=τ(i)で定義する。
Gにおけるi∈{1,...,n}の固定部分群をGi⊂Gとすると、
Gは可移なので|G·i|=nだから、定理A.4.9(群の作用の基本定理)により|G|=n|Gi|。
部分群Gi⊂H⊂Gをとる。l=|H·i|とすると、
|H|=l|Gi|なので、定理A.1.1(Lagrangeの定理)により
|G|=[G:H]|H|=[G:H]l|Gi|=n|Gi|だから、k=[G:H]としてn=kl である。
H·i={i1=i,...,il}とし、τ1, τ2∈Gとする。
Gにおけるτ1, τ2によるHの左剰余類τ1H,τ2Hについて、
あるτ1h1∈τ1H (h1∈H)に対し(τ1h1)·i=j∈(τ2H)·iなら、
j=(τ2h2)·iなるh2∈Hが存在するから、
(h2-1τ2-1τ1h1)·i =iとなるのでh2-1τ2-1τ1h1∈Gi。
すなわちτ2-1τ1∈h2Gih1-1⊂Hだから、τ1∈τ2Hとなり、故にτ1H=τ2H。
したがって、τ1H≠τ2Hなら(τ1H)·i⋂(τ2H)·i=∅となる。
そこでHによるGのk個の左剰余類への分解の代表系を{τ1=e,τ2,..., τk}とし、
Rm=(τmH)·i (1≤m≤k)とすれば、左剰余類分解に対応して、
{1,...,n}はk個の共通部分のないブロックR1={i1=i,...,il}, R2,..., Rkに分割され
(大きさが等しいとは限らない)、(τmH)·i=Rmとなる。
以上により、k=1またはk=nならば定義14.2.5によりGは原始的で、
H=GまたはH=Giなので、すべてのiに対しGiはGの極大部分群。
逆にすべてのiに対しGiがGの極大部分群なら、
H=GまたはH=Giだから、k=1またはk=nなのでGは原始的である。
したがって、Gは原始的であることと、
すべてのiに対しGiがGの極大部分群であることとは同値。
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