演習問題1
n>1なら、[i]が乗法に関する逆元[j]を持つことは、一次不定方程式ij+ny=1に
1≤j<nとなる整数解(j,y)が唯一つ存在することと同値であるから、gcd(i,n)=1と同値。
したがって(ℤ/nℤ)*は1≤i<nかつgcd(i,n)=1となる整数の、
nを法とした合同類からなるから、|(ℤ/nℤ)*|=φ(n)。
n=1のときはすべての整数は0に合同で、i=0として、
ij+y=1にjは任意でy=1という解がある。
したがって(ℤ/1ℤ)*は単位元のみからなる群{[0]}だから、
|(ℤ/1ℤ)*|=1=φ(1)。
演習問題2
α|(ℤ/nmℤ)*: (ℤ/nmℤ)*→(ℤ/nℤ)*×(ℤ/mℤ)*は乗法群としての群準同型となる。
すべての環準同型は乗法の単位元を保つから、
群準同型としてKer(α|(ℤ/nmℤ)*)={1nm}なので、α|(ℤ/nmℤ)*は群同型。
演習問題3
命題A.2.1の証明より、ζnは1の原始n乗根。
(ζni)n=(ζnn)i
=1と(ζnikζnil)n=[(ζni)n]k[(ζni)n]l=1から、
G={1, ζni,...,
ζni(n-1)}は乗法に関して群である。
ℤ/nℤの加法群への写像φ:G→ℤ/nℤ (ζnik→[ik])を考えれると、
φ(ζnikζnil)=φ(ζnik+il)=[ik+il]=[ik]+[il]=φ(ζnik)+φ(ζnil)
なのでφは準同型。
gcd(i,n)=1だから、任意の0≤j<nに対し、
ik≡j (mod n)には0≤k<nとなる整数解kが唯一つ存在するのでφは全射。
gcd(i,n)=1よりik≡0 (mod n)の0≤k<nとなる整数解はk=0のみだから、
Ker(φ)={1}なのでφは1対1。したがってG≃ℤ/nℤだから、
1, ζni,..., ζni(n-1)は全て異なるxn-1の|ℤ/nℤ|=n個の根である。
よってxn-1のℚ上の分解体はℚ(ζni,..., ζni(n-1))=ℚ(ζni)⊂ℂだから、
ζniはℂにおける1の原始n乗根である。
演習問題4
(a)
x2=(x/2-1/4)(2x+1)+1/4によりq=x/2-1/4∉ℤ[x], r=1/4∈ℤ⊂ℤ[x]。
(b)
(i) q,rの存在
fを固定し、deg(g)についての完全帰納法で証明する。
deg(g)<deg(f)なるgについてはq=0∈R[x], r=g∈R[x]とおけばよい。
deg(g)≥deg(f)とする。deg(g)<mとなる任意のgについて、
g=qf+r, deg(r)<deg(f)なるq,r∈R[x]が存在したとする。
deg(g)=mのとき、fは単多項式なのでf=xdeg(f)+f1, deg(f1)<deg(f)、
および
g=axm+g1, deg(g1)<m, a∈Rとする。
h=g-axm-deg(f)f=g1-axm-deg(f) f1はgの最高次の項が消えているから、
deg(h)<mである。したがって帰納法の仮定により
h=q1f+r1
, deg(r1)<deg(f)なるq1,r1∈R[x]が存在する。
するとg=(axm-deg(f)+q1)f+r1だから、q=axm-deg(f)+q1∈R[x], r=r1∈R[x]とおけば
g=qf+r, deg(r)<deg(f) (q,r∈R[x])。
fは任意のR[x]の単多項式だから、fが単多項式ならば以上により常に、
g=qf+r, deg(r)<deg(f)となる q,r∈R[x]が存在する。
(ii) q,rの一意性
g=qf+r, deg(r)<deg(f) (q,r∈R[x])が(i)の手続きにより得られたとする。
別のq',r'∈R[x]がg=q'f+r',
deg(r')<deg(f)を満たしたとすると、
辺々引いて-(q-q')f=r-r'。
q-q'≠0なら、Rは整域なのでR[x]も整域だから、
deg((q-q')f)=deg(q-q')+deg(f)≥deg(f)。一方deg(r-r')<deg(f)だから、
-(q-q')f=r-r'となりえず矛盾。故にq-q'=0さらにこれよりr-r'=0となり、
一意性が示された。
演習問題5
105=3·5·7なので、S={1,2,...,105}⋂(ℤ∖(3ℤ⋃5ℤ⋃7ℤ))として、
(9.3)式によりΦ105(x)= ∏i∈S (x-ζ105i)。
Maximaコマンド
cyclotomic(k, x) := trigrat(product
(if gcd(j, k) = 1 then x - exp(2*%pi *%i*j/k)
else 1, j, 1, k))$
j:105$
print("C",
j, " = ",cyclotomic(j, x))$
で例9.1.7の表式が確かめられる。
演習問題6
(a)
定理2.2.2は体係数の対称式についての定理だが、証明のアルゴリズムの中では、
係数が体であること、すなわち任意の0でない係数に逆元が存在することは使っておらず、
可換環であれば成り立つ。ℤは可換環だから、fは基本対称式のℤ係数多項式。
(b)
h=∑i
cix1ai1... xnain(ci∈Fp)とすると、補題5.3.10を繰り返し用い、
また補題9.1.2(Fermatの小定理)からcip=ciなので
hp=∑i
cipx1pai1... xnpain=∑i ci(x1p)ai1... (xnp)ain=h(x1p,..., xnp)。
演習問題7
(a)
演習問題3でζが1の原始n乗根のとき、
gcd(i,n)=1ならζiも1の原始n乗根であることを示した。
逆にζが1の原始n乗根で、ζiも1の原始n乗根なら、
任意の0≤j<nに対し(ζi)k=ζik=ζjとなる冪kが存在する。
これはik≡j (mod n)に0≤k<nとなる整数解kが唯一つ存在することと同値だから、
gcd(i,n)=1と同値。
したがって1の原始n乗根はζi (gcd(i,n)=1)のφ(n)個で尽くされる。
(b)
ある1≤k≤rおよびある1≤l≤rに対しγki=γliとなったとする。
γk, γlは1の原始n乗根だから、
1の原始n乗根ζおよび、ある0≤x<nとある0≤y<nが存在して、
γk=ζx,
γl=ζyだから、ζix=ζiy。
これはix≣iy (mod n)を意味するのでi(x-y)≣0 (mod n)。
gcd(i,n)=1だからx=yとなり、故にγk=γlとなる。
したがって任意のk,lについて、γk≠γlならγki≠γli。
演習問題8
(a)
ζは1の原始n乗根だから、ζpは1のn乗根。
gcd(p,n)=1だから、ζpはΦnの根である。
Φn=fgかつf(ζp)≠0なので、g(ζp)=0でなければならない。
gcd(p,n)=1だから、ζpはΦnの根である。
Φn=fgかつf(ζp)≠0なので、g(ζp)=0でなければならない。
したがってζはg(xp)の根でもあるが、
fの既約性より命題4.1.5からζの最小多項式はfだから、
補題4.1.3によりf|g(xp)。
(b)
g(x)∈ℤ[x]なのでg(xp) ∈ℤ[x]である。
(a)よりg(xp)=fg',
g'∈ℚ[x]だが、f∈ℤ[x]は単多項式なので、
演習問題4(b)により実はg'∈ℤ[x]だから、fはg(xp)をℤ[x]において割り切る。
写像φ: ℤ[x]→Fp[x] (∑i aixi→∑i αixi, ai∈[αi]p)を考えると、bi∈[βi]pとして
φ(∑i aixi+∑j bjxj)=∑i αixi+∑j βjxj=φ(∑i aixi)+φ(∑j bjxj)
φ((∑i aixi)(∑j bjxj))=φ(∑i∑j aibjxixj)=∑i∑jαiβjxixj=(∑i αixi)(∑j βjxj)=φ(∑i aixi)φ(∑j bjxj)
によりφは環準同型だから、
g(xp)=φ(g(xp))=φ(fg')=f g'となるので、Fp[x]においてf|g(xp)。
ただしHTMLの制約により上付き線が出ないのでφ(f)=fと書くことにする。
(c)
(「演習問題7」は「演習問題6」の誤植だろう)
演習問題6(b)によりg(xp)=g(x)pだから、(b)によりf|g(x)p。
(d)
h|fだから(c)によりh|g(x)p。
Fpは体なので命題A.1.18によりFp[x]はPIDだから、h|g(x)。
これよりhp|g(x)p。pは素数なのでp≥2だからh2|g(x)p。
(e)
Φn=fgでφは環準同型だからφ(Φn)=f g。
(d)によりh|fかつh|g(x)だからh2|φ(Φn)となる。
Φn|xn-1∈ℤ[x]で、Φn∈ℤ[x]は単多項式だから(b)と同様に、
φ(Φn)はFp[x]においてxn-1を割る。これよりh2|xn-1∈Fp[x]。
(f)
(e)によりxn-1は分離的でないが、
gcd(p,n)=1だから、例5.3.6によりxn-1は分離的なので矛盾。
したがってf(ζp)=0。
0 件のコメント :
コメントを投稿