2011-05-24

コックス「ガロワ理論」 4.2節の演習問題

演習問題1
(a)
和の中の各項は、d+1個のx-bj (j=0,1,...,d)のうちi番目を除いたものの積だから、
xの降冪順に並べた先頭項はcixdji (bi-bj)-1
i ciji (bi-bj)-1≠0ならdeg(g)=d,
i ciji (bi-bj)-1=0ならdeg(g)<dなのでdeg(g)≤d

d=2のとき例えばb0=1, b1=3, b2=2, c0=1, c1=-1, c2=0とすれば、
g(x)=-x+2deg(g)=1<2

(b)
g(bi)の和の各項において、i番目の項以外は、
分子にbi-bi=0の因子を含むから消える。
したがって、g(bi)= ciji (bi-bj)/(bi-bj)=ci

(c)
f=h-gを考えると、deg(f)dなので、系A.1.16により
f≠0ならfの異なる根の数は高々d個。
ところがf(bi)=0より、
fd+1個の異なるbi (i=0,1,...,d)を解に持つから、
f=0でなければならない。したがってh=g

演習問題2
(a)
(問題文に書いてないがp99というか命題4.2.5準拠で
pは素数、なんだろう。)

f(x)=0in aixi, F(x)=0j≤deg(F) Ajxj (Aj)とし、
j>deg(F)に対しAj=0とする。
deg(F)<nならan=1なのでdeg(f)=n,
deg(F)=nならan=1+pAn1 (mod p)なのでan ≠0よりdeg(f)=n
いずれにせよdeg(f)=nである。
F(a)0 (mod p)だから、F0ではない。

n=1のときは明らかに既約である。

n=2のときは、f上可約とすると上完全分解するから、
fに根を持つ。
f=(1+pA2)x2+(-2a+pA1)x+a2+pA0=0
を解いて根はx=(2a-pA1±Δ)/[2(1+pA2)]
ただしΔ=p2A12-4p2A0A2-4pF(a)である。
pF(a)により、p2A12-4p2A0A2-4pF(a)0(mod p)かつ
p2A12-4p2A0A2-4pF(a)0 (mod p2)だから、
Δは素因数p1つしか含まないので、Δは平方数ではない。
すなわちΔは無理数だから、根はの元ではない。
したがって任意のpF(a), deg(F) 2なるFについてf上既約。

数学的帰納法に持っていけない・・・もっと簡単な話なのかな。
命題A.3.1もあまり使えなさそうだし・・・。

演習問題3
...

演習問題4
(a)
Maximaで計算して上既約。

(b)
Maximaで計算して上既約。
Maximaで計算すると(2)上では可約で、
[3x2+(-22/3+21/3+2)x+22/3-21/3+1]
×[3x4+(22/3-21/3+4)x3+(21/3+4)x2+(-22/3-21/3)x+21/3+1]/3

演習問題5
(a)
(x-1)(x+1)(x2+1)(x2-x+1)(x2+x+1)(x4+1)(x4-x2+1)(x8-x4+1)

(b)
ζ2412=-1だから、ζ24x24-1の因子である(x4+1)(x8-x4+1)=x12+1の根である。
ζ244-1, ζ248-ζ244+1=0で、x8-x4+1(Maximaで計算すると) 上既約だから、
命題4.1.5によりx8-x4+1ζ24の、上の最小多項式。

演習問題6
f1次式なら既約。
補題A.1.19により、f2次式か3次式なら、
Fの有限個の各要素を直接fに代入して根が存在すれば可約、
根が存在しなければ既約である。このプロセスは有限回で終了する。

より高次のfについては、Fの各要素を係数に持つ、
次数がdeg(f)より小さい多項式は有限個だから、
それらの多項式で割って、fを整除する多項式が存在すれば可約、
存在しなければ既約である。なお割る多項式が1次式なら、
その1次式の根を代入して0になれば整徐でき、ならなければ整徐できない。
また2次か3次なら、
先に上の2次式または3次式の場合の判定を使って、
既約となった多項式だけで割ればよい。
このプロセスは有限回で終了する。

以上によりF上の多項式が既約かどうかを判定するアルゴリズムが得られる。
もちろんド下手クソな方法だろうがw

演習問題7
(a)
f=x3+x+1とする。
3次式なので演習問題6により、{0,1,2,3,4}の各要素を直接代入して、
根があるかどうかを探せばよい。
f(0)=1, f(1)=3, f(2)=1, f(3)=1, f(4)=4なので、
fF5に根を持たないからF5上既約。

(b)
g=x4+x+1とする。
4次式なので演習問題6により、
F2[x]の元である既約な3次以下の多項式で整徐できるかどうかを確かめる。
既約な3次以下の多項式は
x, x+1, x2+x+1, x3+x+1, x3+x2+1だけである。
これらはすべてgを割らないので、gF2上既約。

演習問題8
Schönemann-Eisenstein判定法を用いると、
aの素因数pについてpan=1, p|an-1=0, ..., p|a1=0, p|a0=a, p2a0だから、
上既約である。したがってnaの元でないから無理数。


演習問題9
f=0の根がFに存在したとすれば、互いに素なg,hk[t]が存在して
(g/h)p=tである。これよりgp=thpだからtgpを割る。
kは体なので系A.5.7によりk[t]UFD
tk[t]は一次式なのでk[t]において既約だから、tk[t]の素元である。
したがって、tgを割らなければならないので、g=tg1, g1k[t]とおける。
ここでg1hと素である。
これよりtpg1p=thpだからhp=tp-1g1pだから、thを割らなければならない。
これはg,hが互いに素であることに反する。
したがって、fFに根を持たないから、fは既約。

2011-05-23

コックス「ガロワ理論」 4.1節の演習問題

演習問題1
f(α)=0より、f=0i≤deg(f) fixi (fiF)とするとi fiαi=0
この両辺をαdeg(f)で割れば、0=∑i fi(1/α)deg(f)-i=j fdeg(f)-j(1/α)j
したがって、1/αg=j fdeg(f)-j xjF[x]の根だから、
1/αF上代数的である。

演習問題2
fgを割るのである0でないuF[x]が存在してg=uf
またgfを割るのである0でないu vF[x]が存在してf=vg
故にf= uvfとなるからuv=1となりu,vは単数。
f,gは共に単多項式だから、u=v=1でなければならないのでf=g

演習問題3
求値写像φ: F[x1,...,xn]→F[α1,...,αn]L (f(x1,...,xn)→f(α1,...,αn))
は環準同型なので単位元を保ち、任意のf,gF[x1,...,xn]に対し
φ(f)+φ(g)=φ(f+g)F[α1,...,αn], φ(f)φ(g)=φ(fg)F[α1,...,αn]だから、
F[α1,...,αn]Lの部分環となる。

有理関数体F(α1,...,αn)については求値写像
φ: F(x1,...,xn)→F(α1,...,αn)L (f(x1,...,xn)→f(α1,...,αn))
を考えれば和と積については同様で、
さらにf≠0について1=φ(1)=φ(ff-1)=φ(f)φ(f-1)だから、
φ(f)≠0に対し乗法の逆元φ(f-1)F(α1,...,αn)を常に取ることが出来る。
したがってF(α1,...,αn)Lの部分体。

演習問題4
補題4.1.9によりF(α1,...,αr)は、
Fα1,...,αrを含むLの最小の部分体である。
F(α1,...,αn)Fα1,...,αrを含む体だから、F(α1,...,αr) F(α1,...,αn)

補題4.1.9により、F(α1,...,αr)(αr+1,...,αn)は、
F(α1,...,αr)αr+1,...,αnを含むLの最小の部分体である。
F(α1,...,αr) F(α1,...,αn)よりF(α1,...,αn)
F(α1,...,αr)αr+1,...,αnを含む体だから、
F(α1,...,αr)(αr+1,...,αn)F(α1,...,αn)

演習問題5
任意のfF[α1,...,αn-1][αn]は、αnを用いた
F[α1,...,αn-1]係数多項式表示だから、fF[α1,...,αn]となり、
F[α1,...,αn-1][αn]F[α1,...,αn]

また、任意のgF[α1,...,αn]の多項式表示を、
αnについての冪の和として表示すれば、
gαnを用いたF[α1,...,αn-1]係数多項式表示となるから、
gF[α1,...,αn-1][αn]よりF[α1,...,αn]F[α1,...,αn-1][αn]

したがってF[α1,...,αn-1][αn]=F[α1,...,αn]

演習問題6
求値写像φF[x1,...,xn]→F[α1,...,αn]L (f(x1,...,xn)→f(α1,...,αn))
を考える。φは環準同型で明らかに全射。
fF[x1,...,xn]に対し、f(α1,...,αn)=0が成り立ったとすると、
fKer(φ)である。ところが、α1,...,αnは代数的独立だから、
α1,...,αnについて成り立つ自明でない多項式関係は存在しないので、
f=0でなければならない。すなわちKer(φ)={0}だから、
φは単射となりしたがって同型写像である。
故にF[α1,...,αn]F[x1,...,xn]

F(α1,...,αn)={r=α/β|α,βF[α1,...,αn]}だから、

求値写像ψF(x1,...,xn)→F(α1,...,αn)L (r(x1,...,xn)→r(α1,...,αn))
は環準同型で明らかに全射。
r(α1,...,αn)=0ならα(α1,...,αn)=0である。
このときαF[α1,...,αn]だから、前段落の記述によりα=0となるので、
r(α1,...,αn)=0となるから、Ker(ψ)={0}
ψは単射となりしたがって同型写像である。
故にF(α1,...,αn)F(x1,...,xn)


例えばα1が代数的数なら、α2,...,αnは超越数ってことか。

演習問題7
(a)
gpに単数でない最大公約数が存在すると、
pは最小多項式だから命題4.1.5によりF上既約なので、
最大公約数はpである。したがってあるdF[x]が存在してg=pd
命題4.1.5によりp(α)=0だから、0=p(α)d(α)=g(α)=βとなり、
β≠0と矛盾。

したがってgpの最大公約数は単数しかありえないから、
gpは互いに素である。

(b)
Ap+Bg=1よりBg=1-App(α)=0だから、B(α)g(α)=1
したがって、B(α) F[α]g(α)の乗法に関する逆元。


ユークリッドのアルゴリズム(Euclidean algorithm=互除法)を使っているので、

3.1節の演習問題5の証明で互除法から剰余環を使ったのと同じことだが、
こちらはもっと泥臭い証明。

演習問題8
(a)
g=x2-3とし、g(√2)上可約と仮定する。
deg(g)=2だから、g(√2)上可約なら(√2)上完全分解するので、
g(√2)に根を持つ。

√2f=x2-2=0の根で、f[x]だから、√2上代数的である。
したがって命題4.1.15により(√2)=[√2]
また、例4.1.16と同様に、(√2)2n=2n, (√2)2n+1=2n√2だから、
α[√2]α=a+b√2, a,bの形に書ける。

g=x2-3とするとg(α)=a2+2b2-3+2√2ab=0
√2は無理数なので、a2+2b2-3=0かつab=0
は整域だから第2式よりa=0またはb=0
これより第1式はそれぞれ、2b2-3=0またはa2-3=0
故にb=√6/2またはa=√3となるが、これらは√3, √6の無理性に反する。

したがってx2-3=0[√2]=(√2)に根を持たないから、
(√2)上既約である。


(b)
f=x4-10x2+1とする。α=√2+√3(√2,√3)とすればf(α)=0で、
4.1.7によりf上既約である。

(α-√3)2=2よりα2-2√3α+1=0なので、
αg=x2-2√3x+1, g(√3)[x]の根でもある。
deg(g)=2<deg(f)=4だから、fα(√3)上での最小多項式ではない。
deg(g)=2かつg[√3]=(√3)に根を持たないから、
g[√3]=(√3)上既約である。しかもg(α)=0なので、
命題4.1.5によりgα(√3)上での最小多項式である。
α(√3)上代数的でf(α)=0だから、
補題4.1.3により(√3)[x]においてfgの倍式である。
したがってf(√3)上既約でない。

実際x4-10x2+1=(x2-2√3x+1)(x2+2√3x+1)

ちょっとびっくり。