演習問題5
(a)
p67の具体的な表現で剰余類を表すことにより、
deg(g)<deg(f)としてよい。
fはF[x]において既約だから、
fとgに共通因数d∈F[x]があれば、
単数をuとしてd=uまたはd=uf。
d=fならg=dg1=fg1∈<f> (g1∈F[x], deg(g1)>0)と書けるから、
Lにおいてg+<f>=0+<f>となり、
gがLにおいて0でないことに反する。
したがってd=uだからfとgは素。
f=r0, g=r1, deg(r1)<deg(r0)とおくと定理A.1.14により、
あるq1, r2∈F[x]が一意に存在して
r0=r1q1+r2, deg(r2)<deg(r1)である。
r0とr1は素だからr2≠0。
以下定理A.1.14に基づき互除法の手続きを行う。
あるq2, r3∈F[x]が一意に存在してr1=r2q2+r3, deg(r3)<deg(r2)。
同様にr4, r5...をdeg(rn)=0またはrn=0(n≥2)となるまで
繰り返すことができる(deg(0)は定義されていない)。
deg(rn)=0になる場合は
rn-3=rn-2qn-2+rn-1, deg(rn-1)<deg(rn-2)
rn-2=rn-1qn-1+rn, 0=deg(rn)<deg(rn-1)。
deg(rn)=0だからrnはF[x]の0でない単数なので、
rn-1=rnqnなるqnが存在する。
rn=0となる場合は、rn-2=rn-1qn-1だからn-1→nの読み替えを行えば、
deg(rn)=0の場合と同様rn-1=rnqn (n≥3)なる0でないrn,qnが存在する。
deg(r1)>deg(r2)>...>deg(rn-1)は非負整数の降下列だから、
上の互除法の手続は有限回でrn-1=rnqnとなり必ず終了する。
rn-1=rnqnよりrnはrn-1を割るので、rn-2=rn-1qn-1+rnより
rnはrn-2も割る。以下繰り返して、rnはf=r0, g=r1を割るから、
rnはf, gの公約数である。ところがfとgは素だから、rnは単数である。
rn-2=rn-1qn-1+rnよりrn=rn-2-rn-1qn-1。さらにrn-3=rn-2qn-2+rn-1より
rn=-rn-3qn-1+(1-qn-2qn-1)rn-2。
同様に互除法の手続きで得られた式を逆順に繰り返せば、
ある多項式a,b∈F[x]が存在してrn=ar0+br1=af+bgとなる。
rnは単数だから乗法の逆元rn-1が存在するので、
af+bg=rnの両辺にrn-1を乗じ、rn-1a=A, rn-1b=Bとおけば
Af+Bg=1, A,B∈F[x]。
以上、互除法によりA,Bを得るための具体的なアルゴリズムが得られるが、
f,gが互いに素であることを証明したあと、
A,Bの存在だけを証明するなら以下の証明になる。
f,g∈F[x]は最大公約数が単数とする。
deg(g)=0すなわちg≠0が任意の単数なら、
乗法の逆元g-1が存在するので、A=g, B=-f+g-1とおけば、
Af+Bg=1が成り立つ。
deg(g)=1なら、適当に単数をかけて
g=x-α (α∈F)としても一般性を失わない。
fは既約だからf(α)≠0で、定理A.1.14により
f=q(x-α)+r (deg(r)<deg(g))なるq,rが一意に定まるが、
deg(g)=1だからr=f(α)∈F。fは既約だからf(α)≠0となり
deg(r)=0。すなわちrは単数だから乗法の逆元r-1が存在するので、
f=q(x-α)+rにr-1を乗じることでr-1f-r-1q(x-α)=r-1f-r-1qg=1を得るから、
A=r-1, B=-r-1qとおけばAf+Bg=1が成り立つ。
ここでdeg(g)についての数学的帰納法を適用する。
deg(g)≤n<deg(f)なる任意のgについてA,B∈F[x]が存在してAf+Bg=1とする。
deg(g)=n+1<deg(f)のgに対しては定理A.1.14により、
f=gq+r, deg(r)<deg(g)なるq,r∈F[x]が一意に存在する。
deg(r)≤nだから、帰納法の仮定によりAf+Br=1となるA,B∈F[x]が存在する。
f=gq+rの両辺にBをかければBf=Bgq+Br=Bqg+1-Af
故に(A+B)f-Bqg=1となるので、deg(g)=n+1でも成り立つ。
(b)
Af+Bg=1よりLにおいてBg=1+<f>だから、
BはLにおける乗法の逆元。
演習問題6
f=x2+x+1, g=x+1とするとf=xg+1よりf-xg=1。
したがって-xはℚ[x]/<x2+x+1>におけるx+1の乗法の逆元。
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