本来、三平方の定理は中3の終盤にやることになっている。
けれども、中学数学最重要の定理と言ってよい三平方の定理は、
高校数学で使いまくるわけで、したがって高校入試でも、
三平方の定理を使う複雑な問題は必ず出るのだから、
中3の終盤から三平方の定理の運用の練習を始めたのでは、
あまりに遅い。三平方の定理自体は、
中2の幾何で等積変形をやった段階で証明できるのだから、
証明しても構わないはずだ。まあ確かに証明はできても、
その完全な運用は、中3で平方根と二次方程式をやらないとできないが、
ピタゴラス数を使う範囲内に問題を工夫すれば中2でも十分やれるし、
それなら素因数分解が出来れば、平方数の平方根は計算できる。
ユークリッド 原論 |
因数分解のおまけのように混ぜてあるだけだが、
整数論の根幹があんな扱いになっているのは納得行かない。
それに実用上も、素因数分解を知っていれば、
掛け算の計算(いわゆるインド式?)が楽にできる局面が多いし、
小6ではなんとなくやっていた約分の計算のところで、
素因数を意識することで整数の構造を明確にする事もできる。
自分が中学の頃は素因数分解は中1の最初だったわけで、
決して不可能なことではない。実際中2の夏にやらせたが、
特に大した困難もなく生徒はついてきた。
その後の計算問題でも、いつも上手にできるわけでもないが、
普通に使えている。
というわけで、素因数分解をすでに知っている中2に、
まず中2幾何の等積変形から三平方の定理を教えた。
ユークリッド流(原論の定理1-47)の証明よりは、
平行四辺形だけの等積変形で押した方が
(例えばウィキペにあった右の図)、
必要な概念が少なくて多少楽なので、とりあえずそちらで。
まあそれでも、証明としては長くなるので面食らったようだが、
三平方の定理自体を証明せよという問題は
入試ではまず出ないので、1回きりのものとしておけばよいだろう。
逆定理はユークリッド流(原論の定理1-48)とほぼ同様の証明。
まだ中2の子は平方根の概念が明確でないので、
教わったはいいが使えない様子だけれど、
「これで座標平面で斜めの長さを測れるようになったんだよ」と説明すると、
まんざらでもない様子ではある。
次に教えるべきなのは、素因数分解を使った平方数の平方根だな。これから中3で二次式の扱いを練習することになるが、
事あるごとに三平方の定理の運用との関連性を、
練習問題と共にやっていけば、入試までに多くの練習を積ませられるし、
中3数学を勉強する上での目標にもなる。
例えば多項式の二乗の展開公式から三平方の定理の別証明につなげるとか、
が考えられるか。
その次にやるのは円なので、やることを復習していたのだがちょっと詰まった。
円の接線の定理「円の半径は、半径の端点で円に接する直線に垂直。
逆に円の接線に接点で直交する直線は円の中心を通る」
の証明が浮かばない。いや背理法を使った証明は浮かぶし、
ユークリッドも原論3-16, 3-18で背理法で証明しているのだが、
中学では背理法は論理としてはまだやっていないので、
ユークリッド的証明はできない。中2の教科書でもこれは公理扱いのようで、
証明していない。う~む、直角三角形の合同条件の斜辺他一辺相等みたく、
この時点では公理にするしかないのか?
しかし証明できるものを公理にするのは座りが悪い・・・。
詰まってしまったので、
Google先生に泣きついたが、背理法を使ったり、極限を怪しく使ったり、
微分を使ったり、接弦定理を使ったり
(これはトートロジーになってしまっている可能性が高い)、
という解説が多く、なかなかいいのが見当たらないなあ・・・。
・・・と思っていたら、OKWaveでいい証明(No.11の回答者)を見つけた。
定理:「円の半径の端点を通る直線の中で、半径に垂直な直線は円に接する。
また半径に垂直でない直線は円と他のもう1点の計2点を共有する。」
証明(コピペ編集):
円Oの周上の一点をTとし、OTに垂直な直線をlとする。
l上のTと異なる点をT 'とすると、
OT'は直角三角形OTT 'の斜辺であるから
OT '>OTである。よってT'は円Oの周上にはない。
すなわち円Oと直線lはただ一つの点Tを共有するから、
直線lは円Oの接線である。
次に円Oの周上の点をAとし、
Aを通りOAに垂直でない直線mにOより垂線OMを引く。
OAは直角三角形OAMの斜辺だから
OM<OAとなるのでMは円Oの内部にある。
AMの延長上にBをとりAM=BMになるようにすると
AM=BM、OM共通、∠AMO=∠BMO=∠Rより
△OAM≡△OBM(二辺夾角相等)∴OA=OB=半径
よりBは円Oの周上にある。
したがって、円Oと直線mは2点A、Bを共有する。(証明終)
定理の後半の主張の対偶を取って定理の前半と併せ、
「円の半径は、半径の端点で円に接する直線に垂直。
逆に円の接線に接点で直交する直線は円の中心を通る」が導かれる。
たぶんいいとこの私立なのだろうが、
当時高1の人が中1の幾何で教わったとのこと。
中1でも分かる子はわかるわなあ。
極限とか怪しく使った説明(図でMを円周に近づけるとか)や、
微分を使った証明よりも、
円としての性質が効いていることが明確に分かる、いい証明だと思う。
この証明の前半では三平方の定理が使われている。
てことは三平方の定理を知っていれば、
円の接線の定理を公理にする必要はなく、簡単に証明できるということ。
うん、これをもっと易しく解説することを考えよう。
直角三角形の合同の斜辺他一辺相等も、
三平方の定理があれば証明できるから、
直角三角形の合同より先にやればよかったか・・・
でもそれはそれで教育的順序としてどうか悩む。
まあともかく、三平方の定理を先に証明しておいたおかげで、
思わぬ副産物も使用可能になった。ありがとうNo.11。
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