演習問題1
(fは既約とは限らないので、命題3.1.1によりfは最小多項式とは限らず、
命題4.3.4のαの累乗は基底を張るとは限らない)
g1,g2∈F[x]がF[x]/<f>の同じ剰余類に属するとすると、
deg(f)=nと定理A.1.14によりq1,r1,q2,r2∈F[x]が一意に存在して
g1=fq1+r1, deg(r1)<n, g2=fq2+r2, deg(r2)<nで、g1-g2∈<f>である。
g1-g2=f(q1-q2)+r1-r2において、deg(r1-r2)<nだから、
r1-r2=fhとなるh∈F[x]は零多項式だけである。したがってr1=r2。
逆にr1=r2なら、g1-g2∈<f>だから、g1,g2∈F[x]はF[x]/<f>の同じ剰余類に属する。
そこで、r1をr=a0+a1x+...+an-1xn-1と書いて、
F[x]/<f>のg1,g2の属する剰余類の代表元とできる。
異なる剰余類の代表元r=a0+a1x+...+an-1xn-1, s=b0+b1x+...+bn-1xn-1に対し、
t=r-sは零多項式でないから、
a0-b0, a1-b1,..., an-1-bn-1の少なくとも一つは0でない。
したがって、a0,a1,...,an-1の組は剰余類ごとに一意に定まる。
演習問題2・演習問題3
(a)
Schönemann-Eisenstein判定法(定理4.2.3)においてp=2とおくことにより、
ℚ上でx4-2は既約なので、命題4.1.5によりx4-2は∜2のℚ上の最小多項式となるから、
命題4.3.4により[ℚ(∜2):ℚ]=4。
ℚ(∜2)⊂ℝ だから、x2+1はℚ(∜2)上で根を持たないので、
補題A.1.19・命題4.1.5によりx2+1はiのℚ(∜2)上の最小多項式となり、
[ℚ(i,∜2):ℚ(∜2)]=2。
したがって塔定理(定理4.3.8)により[ℚ(i,∜2):ℚ]=[ℚ(i,∜2):ℚ(∜2)][ℚ(∜2):ℚ]=8。
基底は1, ∜2, √2, 23/4, i, i∜2, i√2, 23/4i。
(例4.1.10で例えばiを、x4-2の4根∜2, -∜2, i∜2, -i∜2の
ℚ係数線形和として表すことはできない。
ℚ(∜2, -∜2, i∜2, -i∜2)=ℚ(i,∜2)であることと、
ℚ(i,∜2)のベクトル空間としての性質とは話が別。)
(b)
x2-3はℚ上で根を持たないので、補題A.1.19によりx2-3は√3のℚ上の最小多項式だから、
命題4.3.4により[ℚ(√3):ℚ]=2。
√3は代数的数だから、命題4.3.4によりℚ(√3)の元はa+b√3 (a,b∊ℚ)と一意に表される。
もしx3-2がℚ(√3)に根を持てば、(a+b√3)3-2=0よりa3+9ab2-2=0 かつ3b(a2+b2)=0。
第二式よりb=0だからa3-2=0の根a∊ℚが存在することになるがこれは不可能。
したがってx3-2はℚ(√3) 上で解を持たないから、補題A.1.19によりx3-2はℚ(√3) 上既約。
命題4.3.4により[ℚ(√3, ∛2):ℚ(√3)]=3。
よって塔定理(定理4.3.8)により[ℚ(√3, ∛2):ℚ]= [ℚ(√3, ∛2):ℚ(√3)][ℚ(√3):ℚ]=6。
基底は1, √3, ∛2, 22/3, √3∛2, 22/3√3。
(c)
Schönemann-Eisenstein判定法(定理4.2.3)においてp=2とおくことにより、
√(2+√2)の満たす式x4-4x2+2はℚ上で既約なので、
命題4.1.5によりx4-4x2+2は√(2+√2)のℚ上の最小多項式となるから、
命題4.3.4により[ℚ(√(2+√2)):ℚ]=4。
基底は1, √(2+√2), √2, √2√(2+√2)。
(d)
ℚ(√(2+√2))⊂ℝ だから、x2+1はℚ(√(2+√2))上で根を持たないので、
補題A.1.19・命題4.1.5によりx2+1はiのℚ(√(2+√2))上の最小多項式となり、
[ℚ(i,√(2+√2)):ℚ(√(2+√2))]=2。
したがって(c)と塔定理(定理4.3.8)により、
[ℚ(i,√(2+√2)):ℚ]=[ℚ(i,√(2+√2)):ℚ(√(2+√2))][ℚ(√(2+√2)):ℚ]=8。
(c)の結果から基底は1, √(2+√2), √2, √2√(2+√2), i, i√(2+√2), i√2, i√2√(2+√2)。
演習問題4
[L:F]は有限だから、拡大F⊂K⊂Lなる体Kが存在したとすると、
定理4.3.8により[K:F]<∞, [L:K]<∞、[L:F]=[L:K][K:F]。
[L:F]は素数だから、以下の2つの場合しかない。
(i) [L:K]=1, [K:F]=[L:F]
(ii) [K:F]=1, [L:K]=[L:F]
(i)の場合補題4.3.3によりK=L、(ii)の場合補題4.3.3によりK=Fだから、
Fを含むLの部分体はFとLのみである。
演習問題5
(a)
Schönemann-Eisenstein判定法(定理4.2.3)においてp=2とおくことにより、
x4-2は既約。またp=3とおくことにより、x3-3は既約。
(b)
∜2はℚ上代数的で、(a)と命題4.1.5によりx4-2がℚ上の最小多項式だから、
[ℚ(∜2):ℚ]=4。
∛3はx3-3∈ℚ(∜2)[x]の根なので、∛3はℚ(∜2)上代数的。
命題4.3.4により[L:ℚ(∜2)]<∞なので、定理4.3.8(塔定理)により
[L:ℚ]=[L:ℚ(∜2)][ℚ(∜2):ℚ]=4[L:ℚ(∜2)]。したがって4|[L:ℚ]。
∛3はℚ(∜2)上代数的だから補題4.1.3により最小多項式p∈ℚ(∜2)[x]と、
q∈ℚ(∜2)[x]が存在してpq=x3-3, p(∛3)=0となる。
したがって命題4.3.4により[L:ℚ(∜2)]=deg(p)≤3となるから[L:ℚ]=4[L:ℚ(∜2)]≤12。
まあx3-3がℚ(∜2)上に解を持たないことは容易に確かめられるから、
補題A.1.19によりx3-3がℚ(∜2)上の∛3の最小多項式なので、
[L:ℚ(∜2)]=3ではあるが、それは使わず一般的にやれという問題だな。
(c)
(b)と同様にして、[L:ℚ]=3[L:ℚ(∛3)]だから3|[L:ℚ]。
(d)
4|[L:ℚ]かつ3|[L:ℚ]だから、[L:ℚ]≥LCM(3,4)=12。
(b)により[L:ℚ]≤12だから、[L:ℚ]=12。
3と4が互いに素だから、最小公倍数は互いの積になるので、
塔定理と同じ形になる。
演習問題6
αのF上の最小多項式がf∈F[x]なので、命題4.3.4により[F(α):F]=deg(f)<∞。
同様に [F(β):F]=deg(g)<∞。また明らかにdeg(f)>0, deg(g)>0。
さらに、f,gはF上の最小多項式だから定義4.1.4により単多項式である。
拡大F⊂F(α)⊂F(α,β)においてg∈F[x]⊂F(α)[x], g(β)=0だから、
βはF(α)上代数的なので、定理4.3.4により[F(α,β):F(α)]<∞。
さらに定理4.3.8(塔定理)により[F(α β):F]=[F(α,β):F(α)][F(α):F]=deg(f)[F(α,β):F(α)]。
同様に、αがF(β)上代数的なので[F(α,β):F]=deg(g)[F(α,β):F(β)]。
したがってdeg(f)[F(α,β):F(α)]=deg(g)[F(α,β):F(β)] (1)である。
fがF(β)上既約なら、命題4.1.5によりfはF(β)上のαの最小多項式だから、
命題4.3.4により[F(α,β):F(β)]=deg(f)。(1)に代入して[F(α,β):F(α)]=deg(g)となる。
いまh∈F(α)[x]をβのF(α)上の最小多項式とすると、
g(β)=0だから補題4.1.3によりu∈F(α)[x]が存在してg=uh。
ところがh はβのF(α)上の最小多項式だからF(α)上既約で、
命題4.3.4によりdeg(h)=[F(α,β):F(α)]。故にdeg(h)=deg(g)。
F(α)は体なので整域だから、
deg(g)=deg(h)=deg(g)+deg(u)よりdeg(u)=0でなければならない。
したがってuは単数で、gもhも単多項式だからu=1。
したがってg=hなのでgはF(α)上既約。
逆も同様にして示される。
演習問題7
(a)
あるi≥1に対し[Li-1:L0]<∞, [Li:Li-1]=∞とすると、
定理4.3.8(塔定理)(a)により[Li:L0]=∞。
このとき[Li+1:L0]については、
拡大L0⊂Li⊂Li+1を考えれば[Li:L0]=∞と定理4.3.8(塔定理)(a)から、
[Li+1:L0]=∞である。したがって[Lm:L0]=∞。
(b)
すべてのi≥1に対し[Li:Li-1]<∞とする。
i=1については補題4.3.3により[Li-1:L0]=[L0:L0]=1<∞。
[Li:L0]<∞とすると、仮定により[Li+1:Li]<∞だから、
定理4.3.8(塔定理)(b)から[Li+1:L0]=[Li+1:Li][Li:L0]<∞。
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