2011-06-14

コックス「ガロワ理論」 6.4節の演習問題1


演習問題1
(a)
a,b,cFpに対しau+b=cの根uFpが一意に存在することは、
整数論でのauc-b (mod p)0u<pとなるuが一意に存在することと同値で、
これはさらにgcd(a,p)|(c-b)と同値。

a≠0ならば、pは素数なので1a<pに対しgcd(a,p)=1だから、
任意のcFpに対し根uが一意に存在し、
γa,b11で上への写像となる。

逆にγa,b11で上への写像ならKer(γa,b)=0だから、
au+b=0となるuFpu=0だけなので、b=0
このときa=0ならIm(γa,b)={0}だから、
γa,bが上への写像であることと矛盾するのでa≠0

(b)
au+b=c (a≠0)とするとu=a-1c-a-1bだから、
γa,b-1=γa-1,-a-1bが一意に存在する。

(c)
(b)によりγa,bAGL(1,Fp)の逆元は一意に存在し、単位元はγ1,0で一意。
γa,bγc,d(u)=acu+ad+b=γac,ad+b(u)より
γa,b(γc,dγf,g)(u)=( γa,bγc,d)γf,g (u)=acfu+acg+ad+bとなるから結合律を満たすので、
AGL(1,Fp)は合成に関して群。

演習問題2
(a)
φ: AGL(1,Fp)Fp* (γa,ba)とする。
γa,bγc,d=γac,ad+bよりφ(γa,bγc,d)=ac=φ(γa,b)φ(γc,d)で、
φFpの乗法群Fp*において積を保つから準同型。
任意のaFp*に対し、γa,bAGL(1,Fp)は常に存在するから、φは全射。
φ(γa,b)=1ならa=1だから、Ker(φ)=Tである。
したがってTAGL(1,Fp)の正規部分群。

(b)
Fpを加法群と見てψ: TFp (γ1,bb)とすれば、
ψ(γ1,bγ1,d)=b+d=ψ(γ1,b)ψ(γ1,d)だから、ψは準同型で、明らかに全射。
γ1,bKer(ψ)ならψ(γ1,b)=b=0だから、Ker(ψ)={γ1,0}={e}なので、
ψ11となり、したがって同型。よってTFpとなる。

演習問題3
(a)
F上の多項式環F[x1,...,xn]において、
写像T:F[x1,...,xn]F[x1,...,xn] (xixτ(i))は環上の求値写像だから、
定理2.1.2により環準同型。T(f)=τ·fとかけばよい。
したがって(6.7)の最初の2式が成り立つ。

ああそういえばそうだな、目からウロコ。

(b)
τ·(γ·f)=τ·f(xγ(1),...,xγ(n))=f(xτγ(1),...,xτγ(n))=(τγ)·f

演習問題4
準同型であることは演習問題3で示した。
p160や演習問題5の記述から見てたぶん、問題文の「環準同型」が、
「環同型」の誤植なんだろう。
まー変数のラベルを付け替えただけなのだから当然同型。

演習問題3の写像Tについて、T(f)=τ·f =0となったとする。
Ker(T)={0}であることをnについての数学的帰納法で示す。
n=1ならτは恒等置換しかなく、τ·f(x1)=f(x1)=0だから成り立つ。
nで成り立ったとし、n+1τ·f(x1,...,xn+1)=f(xτ(1),...,xτ(n+1))=0になったとする。
f(xτ(1),...,xτ(n+1))=1in pi(xτ(1),...,xτ(n))xτ(n+1)i (piF[x1,...,xn])と書けるので、
f(xτ(1),...,xτ(n+1))=0なら各pi(xτ(1),...,xτ(n))=0だから帰納法の仮定によりpi(x1,...,xn)=0
したがってf(x1,...,xn+1)=0となりn+1でも成り立つ。
故にKer(T)={0}だからT11

τSnなのでτ·fに対し演習問題3(b)により、
τ-1·(τ·f)が一意に存在するからTは全射。
したがってTは同型だから、fτ·fF[x1,...,xn]からそれ自身への同型。

演習問題5
任意のaRに対し、φ: RR (aφ(a))を任意の環同型とする。
a,bR (b0)に対し分数体(の、約分による同値関係の同値類)a/bKが定義される。
φ: KK (a/bφ(a)/φ(b))φを延長すると、φは整域の環同型なので
φ(b)0となるから意味を持ち、Ker(φ)=Ker(φ)=0だから11で、
φ(a/b)に対しφ-1(a)/φ-1(b)が一意に対応するから全射なのでφは環同型。
さらにa0に対しφ((a/b)-1)= φ(b/a)=φ(b)/φ(a)=(φ(a)/φ(b))-1だから、
体の自己同型となる。明らかにこの延長はφにより一意に決まる。

演習問題6
(a)
o(g)=5となるgS5について、p224の対称群の性質から、
互いに共通の文字を持たない巡回置換c1,...,crを用いて
g=c1...cr, o(g)=LCM(o(c1),...,o(cr))だが、5は素数なので、
g=c1, o(c1)=5しかありえない。

(b)
f'=5x4-6=0の根は±(6/5), ±(6/5)iで、f''=20x3よりx=-(6/5)<0,x=(6/5)>0だから、
実関数としての極値は2つで、x=-(6/5)で極大、x=(6/5)で極小。
またx→-∞f→-∞, x→∞f→∞
f(-(6/5))=(6/5)(6/5)+6(6/5)+3>0,
f((6/5))=(6/5)(6/5)-6(6/5)+3=3[1-(8/5)(6/5)]<0
-∞<x<-(6/5)f'>0, -(6/5)<x<(6/5)f'<0, (6/5)<x<∞f'>0
以上により、fの実数根は-∞<x<-(6/5), -(6/5)<x<(6/5), (6/5)<x<∞にそれぞれ唯一つ、
3個の実数根がある。

Maximaでのグラフは以下の通り。












演習問題7
HTMLの表現の都合で2行の置換表現が書きづらいので)γSnとして、
順序列(1,2,3,...,n)(γ(1),...,γ(n))へ移す置換を
[γ(1),...,γ(n)]と書くことにする。この記法のもとで
σ=(1 2 3...n)=[2,3,4,...,n,1]τ=(1 2)=[2,1,3...,n]である。

σi-1=[i,i+1,i+2,...,i-1]なので、τσi-1=[i+1,i,i+2,...,i-1]
そこで直接計算によりσn-i+1τσi-1=[1,2,...,i-1,i+1,i,i+2,...,...,n]=(i i+1)のように、
巡回置換の冪の互換への作用として、任意の基本互換を表現できる。
全ての互換は基本互換の積で表現でき、
全ての置換は互換の積で表現できるから、
σn-i+1τσi-1の組合せによって任意の置換を表現できるので、
Sn=<σ,τ>=<(1 2 3...n),(1 2)>

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