2011-06-09

コックス「ガロワ理論」 5.4節の演習問題


演習問題1
(5.18)式は異なるjγj同士の入れ替えに対し対称である。
そこで補助多項式S(x)=j f(x-λxj) F[x1,..., xm]を考えると、
S(x)も異なるjxj同士の入れ替えに対し対称なので、F[x1,..., xm]の対称多項式。
したがって、積を展開してS(x)=k pk(x1,..., xm)xk(pkF[x1,..., xm])と書くことができ、
pkは対称多項式となる。
求値写像F[x1,..., xm]F[γ1,...,γm] (xjγj)は定理2.1.2により環準同型で、
この写像によりS(x)s(x)に写像されるので、s(x)=k pk(γ1,...,γm)xk
γ1,...,γmFを拡大したfgの分解体でのg(x)=F[x]の根だから、
2.2.5により全てのkに対してpk(γ1,...,γm)Fとなり、s(x)F[x]となる。

演習問題2
(a)
FLは有限次拡大だから、[L:F]=mとしてL上の基底α1=1,α2,...,αmが存在して
任意のαLについてα=i aiαi (aiF)Fは有限体だから、
可能なa1,...,amの組合わせは有限通りしかないので、
異なるαは有限個しかないから、Lは有限体。

(b)
αL*は有限巡回群としてのL*の生成元だから、
任意のβL*についてn{0}, n<|L*|=|L|-1が存在してβ=αnF(α)
したがってL*F(α)
{0}F(α)だからL=L*{0}F(α)F(α)Lは明らかだから、L=F(α)

(c)
L*は巡回群で|L*|=|L|-1=m だから、L*/mで、
L*m個の異なる元1,α,...,αm-1を持ち、任意のβL*について、βm=1
したがって、m個のβL*Lm次多項式xm-1F[x]の根なので、
xm-1L上完全分解してxm-1=(x-1)(x-α)...(x-αm-1)となる。

(d)
(c)によりLは分離多項式xm-1の分解体だから、
定理5.3.15(b)によりαF上分離的。
したがって定理5.4.1が従う。

演習問題3
定理5.4.1の証明においてλが満たさなければならないのは、
(5.16)式だけなので、これがF(α1,...,αn)において、
全てのt1,...,tnについて成り立てばよい。

t1=1とおく。F(α1,α2)においてα1,α2F上の最小多項式をそれぞれf,gとし、
fgの分解体における根を定理5.4.1と同様にα1=β1,β2,..., βdeg(f)および
α2=γ1,γ2,...,γmとする。Fは標数0なので命題4.1.5・定理5.3.7により、
fgは分離的だから、β1,..., βdeg(f)は相異なり、γ1,...,γmも相異なる。
Δβ=max(|βr-βi|)≠0 (1i<r≤def(f)), Δγ=min(|γs-γj|)≠0 (1j<s≤def(g))とし、
|Δβ|/|Δγ|<t2なるt2をとると、全ての(r,s)(i,j)の組に対し
|(βi-t2γj)-(βr-t2γs)|=|t2(γs-γj)-(βr-βi)|t2|γs-γj|-|βr-βi|t2Δγ-Δβ>0
したがってλ=t2として(5.16)が満たされ、
したがってα12=α1+t2α2F(α1,α2)の原始元だからF(α1,α2)=F(α12)

F(α1,α2,α3)=F(α1,α2)(α3)=F(α12)(α3)=F(α12,α3)において、
上の操作を繰り返してt3を定め、F(α1,α2,α3)= F(α13), α13=α1+t2α2+t3α3を得る。
以下同様に繰り返してα=α1n=α1+t2α2+...+tnαn (t1=1, t2,..., tn)の形の原始元が得られ、
F(α1,...,αn)=F(α)

演習問題4
(a)
g=xp-sFに根を持たず、またpは素数だから命題4.2.6によりgF上既約。
5.3.11によりF(α)においてg(x-α)pと完全分解するので、
F(α)gF上の分解体で、[F(α): F]=p
h=xp-uF(α)に根を持たないから、同様にすればL=F(α,β)F(α)上のhの分解体だから、
F上のghの分解体でもある。L上でh(x-β)pと完全分解して[L:F(α)]=p
定理4.3.8(塔定理)から[L:F]=p2

(b)
5.4.4においてs(t,u)=i,j aijtiujFとすると、、
γF上の最小多項式f=xp-s(t,u)の根なので、[F(γ):F]=p

(c)
(b)により、任意のγLFの最小多項式はL上で(x-γ)pと完全分解するから、
γF上分離的でない。したがってFLは純非分離拡大。

演習問題5
(a)
F(α+λβ)=F(α+μβ)となるμλが存在したと仮定すると、
演習問題4(b)により、1,α+λβ,(α+λβ)2,...,(α+λβ)p-1 F(α+λβ)の基底だから、
α+μβ=a0+a1(α+λβ)+...+ap-1(α+λβ)p-1となるa0,a1,...,ap-1Fが存在する。
α+μβ-(α+λβ)=(μ-λ)β=a0+(a1-1)(α+λβ)+...+ap-1(α+λβ)p-1
より、β=(μ-λ)-1[a0+(a1-1)(α+λβ)+...+ap-1(α+λβ)p-1]F(α+λβ)
さらにα=(α+λβ)-λβF(α+λβ)

(b)
(a)よりF(α,β)F(α+λβ)F(α+λβ)F(α,β)だからF(α+λβ)=F(α,β)
演習問題4(b)により[F(α+λβ):F]=pだが、
演習問題4(a)により[F(α,β):F]=[F(α+λβ):F]=p2となり矛盾。
したがってF(α+λβ)=F(α+μβ)となるμλは存在しない。

演習問題6
定理5.4.1の証明のn=2についての部分で、gの分離性は使っていいるが、
fの分離性は使っていない。
fが分離的でなくても(5.16)は満たされ、n=2について定理は正しい。
要求されているのは[L:F]が有限次拡大であることだが、
βが代数的なら命題4.3.4により満たされる。

演習問題7
F(α1,...,αn)=F(α1,...,αn-1)(αn)において、
FF(α1,...,αn-1)は有限次拡大で各α1,...,αn-1は分離的だから、
定理5.4.1によりあるF上分離的なαが存在してF(α1,...,αn-1)=F(α)
F(α1,...,αn)=F(α)(αn)=F(α,αn)において、FF(α,αn)は有限次拡大なので、
命題4.3.4によりαnF上代数的。αF上分離的だから、
演習問題6によりFF(α,αn)=F(α1,...,αn)は原始元をもつ。

演習問題8
Lにおけるx2-tx3-uの根をそれぞれα, βとする。
5.3節演習問題8によりαは分離的でβは非分離的。
Lにおいてx2-t(x-α)(x-2α)と完全分解する。
またβF上代数的で、例5.3.11と演習問題4(a)により、
Lにおいてx3-u(x-β)3と完全分解する。

(5.17)式のλFはこの場合α+λβ≠2α+λβであればよい。
α≠0だから、すべてのλFについて(5.17)は満たされる。

したがってα+λβが原始元で、(α+λβ)3=tα+λ3uより、
α=[(α+λβ)3-λ3u]/tなのでαF(α+λβ)。これよりβF(α+λβ)だから、
F(α,β)F(α+λβ)となりF(α,β)=F(α+λβ)

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